※俺のSSを読んでないと解らないところがありますので、ご注意を。


リレーSSコミカルパート
                              HELLCHILD



償い ―Tsugunai―





突如、外でヘリの着陸音が聞こえた。
「な、何だ!?」
「ヘリ・・・・・・? いったい何故?」
俺達は、全員視線を窓の方へ向けた。
ヘリはバンガローの近くに着陸したようだ。機体には『LUDWIG』と書かれている。
やがて、ヘリから一人の男が降りて来た。豪雨で視界が曇っているため、顔はよくわからない。
その男は、駆け足でバンガローに近付いてくる。傘も差していないようだ。
やがて、ノブが回り、ドアが開かれた。入ってきた人間は・・・・・
「・・・・・・・誰だ、お前?」
見たことのない男だった。黒い長髪に白い肌。全身を黒いコートで覆っているが、頭からびしょ濡れだ。
まあ結構美形な奴なので、先程の優と空ほどではない。むしろ水に濡れた黒髪はかなりイカしている。
「あ、アツシくん?」
「・・・・・アツシ?」
「おっす、優。つぐみちゃん。」
どうやら優とつぐみは知り合いのようだ。どうやら“アツシ”という名前らしい。
「あ、優。オレから一つ言いたいことが。」
「え?」
「二人が乗ってきたボート、しっかりとオレが壊しておいたから。」
「え!!?」
「ついでに、非常用の通信装置も・・・・・・・」
アツシが胸ポケットから、有るものを取り出す。拳銃だ。
それを、冷蔵庫から1mほど離れた通信装置に向けた。

ガゥン、ガゥン、ガゥン!!

「ぎょええええ!?!?」
得体の知れない奇声を上げる二人。一体何がどうなってると言うのだ?
俺はこの不可解な状況に、何故か目眩を覚えた。
「ハジメマシテの奴も混じってるよな。オレは桜井 敦。早速だが、ちょいと皆さんにメッセージが入っている。」
そう言って、彼は大型のノートパソコンを開いた。
「画面に表示するから、近くに寄った方が良いぞ。」
指示通り、俺達はその周りに群がった。
「んじゃ、ポチッとな。」
人の名ゼリフの一つをパクるな! と言いたかったが、俺のオリジナルではないので我慢した。

『ねぇねぇ、ヒヨコゴッコ、ヒヨコゴッコ〜』
突如、画面にココが現れた。隣にいるパンクヘッドの男と戯れている。
『ダメだっつーの! 今時間おしてんだよ、わからない?』
パンクヘッドの男は、ココを画面の隅に追いやった。
『ヒデに遊んでもらえ。』
『ぷぅ〜』
ココは膨れながら画面の外に出ていった。
『あ〜ったく。んじゃ、始めますかな。初対面の奴もいるだろうから、まずは自己紹介だ。はじめまして、俺は八神亨という。何を隠そう、ココの兄だ。』
「こ、ココの兄ぃ!?」
俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。
こんな常識人ぽい男が、あの毒電波系少女の親族ということに、俺は驚いた。
「ココにお兄さんが居たなんて・・・・・知らなかったよ、僕。」
ホクトが呟く。確かに俺も、そんな話は全くと言っていいほど聞いていない。
「似てない兄妹でござるな。」
そりゃあ失礼だろう、沙羅。確かに外見も中身も全くココとは違っていそうだが。
まあそんなことを考えるより、今はこの男の話に耳を傾けた方が有益なはずだ。そう思った俺は、ノートパソコンに目を凝らし、耳に神経を傾けた。
『肩書きは製薬会社「LUDWIG(ラディック)」の会長ということになっている。田中研究所も、現在はラディック傘下の研究所となっている。そして、そこの桜井敦もラディックの人間だ。』
つまりコイツは、さしずめ優の上司って所か。
確か優はライプリヒの人間だったはずだが・・・・・・どうやら今は彼等の元に付いているようだ。
『これはリアルタイムでこっちに繋がってるわけじゃない。この映像はあらかじめ録画された物だ。』
それは何となく解った。さっきのココはハプニングだろう。
『早速だが、倉成武には詫びておきたい。あんたには優と空をおびき寄せるための囮になってもらった。』
「お、俺が囮?」
この仕組まれた家族旅行の裏の目的は、優と空を捕まえるためのものだったというのだろうか。
『まあ簡単に手出しできないように、小町つぐみ含む家族を同行させる。そのために家族旅行という形を取らせてもらった。』
「・・・・・私はボディガードって訳ね。」
「うん。頼むから俺を護ってくれ。」
こういった人事に於いて、つぐみほど頼りになる人間を見たことがない。というか、つぐみしか頼れる人間が居ないと言うことも事実だが。
『さて、と・・・・・・・本当の目的は、優と空の軟禁にあることはよくわかっただろう。』
「わ、私たちの軟禁!?」
「どどどど、どういうことですか、八神さん!?」
そんな、録画映像に文句を言ったって無駄だろうと思ったが、敢えて口に出さないでおいた。
『単刀直入に言おう。優・・・・・・・・・お前、ラディックの帳簿から、3千万ほどピンハネしやがったな。』
「げっ!?!?」
「え゛!??」
優&空が目を見開く。その言動は、身に覚えがあることを証明していた。
『ったく、何が「私に従わないとB−T−Bが動くわよ」だっつーの。責任者は俺だろうが。』
「そ、そげな・・・・・・バレていらっしゃっちゃったの・・・・・・!?」
「いらっしゃっちゃったんだよ。支社長がアニイに直訴したんだとさ。」
優の言葉を、アツシと呼ばれる男が肯定した。
しかし3千万ピンハネとは・・・・・・確かに優ならやりかねないような気もするが、空まで加担していたとは。
『支社長の奴、「お願いです、B−T−Bだけは動かさないで下さい〜」って泣きついてきたぜ。そこで俺が何のことだって聞いたら、全部吐きやがったよ。』
「・・・・・・あ、あのヤロぉ〜!!」
悔しさと恨みが混じったような、何とも形容しがたい表情を浮かべる優。はっきり言って、めっちゃ醜い。
『それだけじゃない。お前、その金で「小町つぐみ破壊兵器」なんてものを造ってやがるな。田中研究所にちょいとガサ入れてみたら、地下で研究員総出で何か造ってるそうじゃねえか。俺にもバッチリ報告が来た。』
「うげっ!?」
「・・・・・優・・・・・・・あなた、そこまでして武を奪いたいの?」
何かとても哀れっぽい目で、つぐみは優を見やる。
しかし、標的になっている俺はかなり迷惑というか、心臓に悪い。
『空・・・・・・お前もお前で、優の計画に加担してやがったろ。どうせ、倉成武を餌にされたんだよな?』
「ば・・・・・・ばれてるんですか?」
「その位は想像が付くわよ。」
確かにそうだ。まあ、俺自身が言うのも微妙だが。
『テメーら二人は、救助隊が来るまで、そこに居な!』
「「え゛、え゛え゛〜〜〜〜!?!?」」
『お前達には、これでもタップリと恩情をかけてきたつもりだが・・・・・・今度ばかりはオシオキだぜ。』
ボートは壊され、通信装置もこの男の手によって破壊された。
優は確か、2週間はこのままの天候が続くと行った。ということは、14日間はここに缶詰ということだ。
しかも(俺達が使った分を差し引いても)食糧は1週間分しかない。これはかなり酷である。
『囮になった倉成家一行は、俺が用意したヘリで送り返してやろう。迷惑かけて済まなかったな。』
「どうやら私たちは無事に帰れて、あなた達はここに二人っきり・・・・・・という訳ね。」
つぐみが勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、優と空を見やる。二人は口の端を噛み締めている。噛んだ所から血が出ている。
『これに懲りたら、少しはイタズラを控えるんだな! じゃーよ。』
そこで映像が消えた。
ノートパソコンの横からディスクが出てきた。どうやらディスクに保存されたデータだったらしい。
「というわけで、倉成家の4人はオレについて来な。ヘリで家まで送り返してやるよ。」
アツシという男が、外のヘリを指差した。
「ええ〜? 帰っちゃうの?」
「沙羅、こんな所に未練はないでしょう?」
「ん〜・・・・・・まあね。でもせっかく来たんだし。」
「こんな所にいても、気分が悪くなるだけだろ・・・・・・・・・・・ホクト?」
さっきからホクトの様子がおかしい。意味不明なことを呟いたり、部屋に閉じこもったり。今度は目を虚ろにし、虚空を見つめている。
「おい、ホクト? 大丈夫かよ。」
「え? あ、ああ。うん・・・・・・・なんでもない。」
俺が声を掛けると、すぐに元に戻った。本当に大丈夫だろうか。
「んじゃ、早く行くぜ。このままじゃ、さらに天気が淀んじまう。」
アツシが俺達を促した。俺達4人はそれに大人しく従った。

「んじゃ、倉成武以外の4人は後ろに乗って。あんたは助手席に座ってくれ。」
俺達は全員席に付き、アツシは操縦桿を握っていた。
ゆっくりと離陸を始める。しかし、いきなりヘリに重みが加わり始めた。
驚いて窓から下を見やると・・・・・・
「ぐぬぅ・・・・・行かせるもんですかあぁ〜〜!!」
「く、く、く、倉成さんは私のものですぅ〜!!」
・・・・・・恐ろしや、女の執念。いや、もうこの場合『おぞましい』と行った方が適切かもしれない。
「・・・・・・・アツシ、しっかり操縦してなさいよ。」
いきなりつぐみが席を立った。
「つ、つぐみちゃん?」
「あのクソ女共に、今日こそ解らせてやるわ・・・・・・・」
突然、ドアを開け放った。そんなに高度は高くないので、外に出されるようなことはないのは一安心だった。
「・・・・・・・人の幸せを邪魔するとどうなるか、その身体にキッチリ勉強させてあげるわよ!!!」
阿修羅の如き形相のつぐみは、拳を握り締め、振り下ろした。
「天ばああぁぁつ!!!」

グシャッ!!

ドゴォ!!

嫌な音を立てて、つぐみのパンチが炸裂した。
「・・・・・・・お逝きなさい。」
急にヘリの重量が軽くなった。二人が落ちたのだろう。敢えて俺は見ないでおいた。



一週間後・・・・・・・

「あ〜あ、海外旅行・・・・・行きたいよねぇ。」
「ホントよね。武がもっと稼いでくれれば・・・・・」
「ふざけんなっ!! 俺の収入がどれくらいだと思ってんだ!?」
当たり前の日常が流れていた。ただ一つのことを除いて・・・・・
「おっと、そういや、ホクトにメシ持ってってやらないとな・・・・」

あの一件以来、ホクトの様子が変なのだ。
何も喋らないし、目は焦点が合っていない。体育座りでボーっとしているだけだ。
飯を食う、トイレに行く、などの本能的な行動は可能なようだが、俺達とは眼を合わせようともしない。魂が抜けきった肉体の抜け殻のようになってしまった。
「ホクト〜、開けるぞ〜?」
ドアをノックし、部屋に入ると・・・・・・・

「うげっ!?!?!」

そこで俺が見たものは・・・・・・・








「田中先生・・・・・・・これが最後の食糧です・・・・・・・・」
「・・・・・・・ふふふ・・・・・・・♪」
「ああ・・・・・・壊れちゃいました。」
「壊れてないわよっ!! こうなったら、“アレ”を動かすわよ!!」
「アレ? アレって・・・・・・まさか・・・・・・」
「研究所の地下深くに眠る最強の兵器、あいつを解放するのよ!! この腹いせに、つぐみを肉片に変えてやるわ!!」
「り、リモコンは?」
「何とか胸ポケットに隠してあるわ。これを壊されなかったのは不幸中の幸いね。」
「遂に・・・・・・解放するときが来たのですか。」
「そうよ。ついでに“アレ”に救助してもらいましょ。ここまで来たら、もうブチ切れたわよ。」
「制御の問題は大丈夫なのでしょうか?」
「少し不安ではあるけど・・・・・・・こうなったら最後の手段よ。あいつなら、こんな暴風雨なんて屁でもないはずよ。」
「・・・・・・少し怖いです。」
「ビビッてんじゃないわよ、空。今度こそつぐみをぶっ殺してやるぅ〜!!」










あとがき

田中先生・・・・・・ヤバすぎ(マテ
俺自身にもどうなるかが解らないですね、これは。
終焉の鮪さん、腕の見せ所ですよ。是非とも壊れまくったストーリーを展開しちゃって下さい。
凄い壊れまくってて、爆笑な物を期待してますので、是非。


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