※鮪のオリキャラが出てるので作品を一通り読んでいただければ小ネタも理解できます。
見なくても大筋には影響しませんのでそれも可です。


前回までのあらすじ!



 倉成一家が町内会の福引で当てた家族旅行!
 それは『ラディック』の八神亨達が仕組んだ『田中優美清春香菜・茜ヶ崎空軟禁計画』によるものだった。
 暴風雨も相まって結局バカンスを楽しめなかった倉成一家は、何事も無かったかのように日常へと戻っていった。
 ―― ホクトの原因不明の不調と春香菜・空の不在を除いて ――
 そして旅行から一週間後のその日……時は動き出した。
リレーSSコミカルパート
                              終焉の鮪



『殺伐とした乾いた世界に水羊羹を放り込め!』





 「うげっ!?!?!」
 ホクトの部屋の戸を開けた俺が見たものは……


 「あう〜?」
 赤ん坊に逆行したホクト(多分)の姿であった!……ってこの展開、前にどっかで見たような……既視感?
 「……ホクト、か?」
 「あい♪」
 俺の問いににぱっと無邪気な笑みで応えるホクト(多分)。俺の言葉に反応するって事は言葉は理解できるし、記憶もあるって事だが……
 「何でこんな事に?」
 記憶を思い返す……までもなく思い当たる節はすぐにわかった。ここ最近の不調に原因があるのだろう。
 「でもその不調の原因が不明なんだよな……」
 ああもう、こんな時に限って優はあの孤島に置き去りだし……って! すっかり忘れてたよ俺!!
 あれから優と空はどうなったんだ!?


 ―― その頃の2人は ――

 「空、そんじゃ【アレ】を起動するわよ!」
 「ついに起動させるんでね……【ME-DEATHメ・デス】を……」


 さてさて、ここらでちっと話の骨をブチ折る余計な説明のコ〜ナ〜だじぇい!
 【ME-DEATH】とは田中研究所がその有り余る財力(ラディック等からの横領含む)を消費して作り出した人型機動兵器の事さね!
 周囲の元素を取り込み動力源とする事により半永久的に稼動を続けられる!
 しかも装備は180mmバルカン【イーゲル○ュテルン】を四門・20km射程の長距離レンジ砲【デルタストライク】・強磁力の反発を利用して鉄球を射出する【オルタナティヴ】・近接近用の日本刀型武具【ガー○ラ・ストレート】を二本所持……etcetc。
 とにかく全身是武器庫である【動く破壊兵器】である!!
 ちなみにトールの言っていた【小町つぐみ破壊兵器】とはまた別の代物である。


 「しかしアレは高機能AIでも制御し切れなかった代物ですよ!? もし迂闊に地下から開放したら私達にも危害が……」
 「その心配なら無用よ、空。今回の計画に貴女と私しか動かなかった訳は分かる?」
 「……? それは私と田中先生が倉成さんを小町さんから奪還する為に……」
 「確かにそう。でもここにアイツ……桑古木涼権がいないのにはそれだけではないのよ」
 「……! 田中先生、まさか!」
 「そう、ご察しの通りよ……アイツには万が一の事を想定して予め【ME-DEATH】の手動稼動訓練をさせていたのよ、17日前からね」
 「道理で暫く桑古木さんの姿を見なかった訳ですね……」
 空の脳裏に馬車馬の様にこき使われる桑古木のイメージが彷彿と浮かぶ。
 「そゆ事。でもアイツの事だから、この機に私に報復をしかねないから……それが少し不安なんだけどね。最終手段としてこのリモコンで自爆させる事も出来るのだけど……」
 「今のこの状態では私達ごと吹き飛びますね……」
 「だからなるべく穏便に……最悪アイツを煽ててでもまずはここから脱出するわ。そしてその後クーデターを起こして……」
 「私たちの手で小町さんを……という訳ですね」
 「ふふふふ」
 「うふふふ」
 薄暗い小屋の中、あまり良いとは言えない食生活を過ごしてきた二人の笑みは正直恐ろしい。
 「それでは、私達の生還と小町さんへの復讐の成功を願って……」
 「スイッチ・オンッ!!!」
 優がリモコンのスイッチを押す。数十秒後、空を裂く轟音が嵐の合間を縫って二人の耳に響いてきた。
 「来たっ! この到着の速さ、桑古木の奴立派に使いこなせるようになったようね!」
 「あわよくば上手く丸め込んで桑古木さんに小町さんを討ち取らせるという手も!」
 2人が嬉々とした表情で扉を開けると、そこには5Mを超える鋼鉄巨人がぬっと立ちはだかっていた。
 そしてそのコックピットから……




 俺の指先が音高らかなチャイムを鳴らす。その横の立て看板には【阿師津研究所】の文字が。
 『優がいないなら阿師津さんに診てもらえば良いじゃない? 前に私が小さくなった時もあの人に頼ったでしょ?』という、正にこの作者だから使える裏技を利用した一言で、俺達は車を飛ばしてやってきた、という訳だ。
 「はい……あ、武さん、こんにちは。今日は一体どうしたんですか?」
 「おぅ、理宇佳じゃないか? 鳩鳴軒の方はどうしたんだ?」
 「リレーSSであまり職業ネタを振らないほうが良いと思いまして」
 「リレーSS?」
 「いえ、何でもありません。隆文さんに御用事ですね、どうぞお上がり下さい」
 あからさまに視線を逸らしながら理宇佳が俺達を案内する。
 「なぁつぐみ、リレーSSって」
 「駄目よ武、それ以上言ったら作者に消されるわよ」
 ……既視感?


 「やぁ、タケにツグ、それにサラタンじゃないか。今日は一体どうしたんだ?」
 相変わらずタカさんのネーミングセンスは奇抜で、時折俺もついていけなくなるな……つぐみと沙羅なんて苦笑するので精一杯な感じだ。
 「おや、そういえばホクタンはどうしたんだい? 今日はアキとデートかな?」
 「あ、その……阿師津さん……」
 つぐみが胸に抱いたホクト(多分)を前方に軽く突き出す。タカさんは少し驚いた様に眉を上げると、
 「……三人目かい?」
 とお約束のボケをかましてくれた。


 「成程……今朝になってみたらホクタンが幼児化していた、と」
 「はい。数日前から様子は変だったんですよ、ボ〜っとしてて」
 「ちなみに、その前後に何か変わった事はあったかい?」
 「変わった事……とある孤島に旅行に出かけた事ですかね」
 結局旅行ではなく軟禁計画に加担させられただけだったんだが……苦い記憶が蘇ってくる。
 「そこは何ていう島だい?」
 「あ、はい……」
 俺が島の名前を告げると、タカさんの表情が急に真剣になる。そして愛用のWinを起動させるや否や、何やらせわしなくキーを叩き始めた。
 ちなみにホクト(多分)は理宇佳と楽しそうに遊んでいる。人の苦労も知らんでよくもまぁ……
 「……【PHANTOMファントム】」
 「はい?」
 ホクト(多分)に気をとられていたので聞き逃してしまった。タカさんは重々しそうな表情のまま、再度言葉を紡ぎ出した。
 「【PHANTOM】……その地域周辺で2032年4月に発見された特異な病原体だ。生物の遺伝子を書き換え異常を引き起こす。その発症は人それぞれであり、それゆえその島への立ち入りは2032年8月の日本軍による検査以降禁止されていたはずなんだが……」
 「じゃあ、ホクトはその【PHANTOM】で……? でも何で俺達は何とも無いんですか?」
 「恐らく……あくまで推測だが。ツグは雌型の後天的パーフェクト、タケは雄型の後天的ハーフ、サラタンは雌型の先天的ハーフ、ホクタンは雄型の先天的ハーフ……この差が関係しているのかも知れない」
 「雄型の先天的ハーフは感染するとこんな症状になるって事ですか?」
 「あくまで予想。【PHANTOM】それ自体の発症が個々人の遺伝子に反映されるみたいだからね」
 「……治せるんですか?」
 ちらと横目でホクト(幼児)を見る。あのままでも異質なファンはつきそうだが、幾ら何でも現彼女の秋優が可哀想だ。
 それに……これから生命に関わるような状態に陥らないとは限らない。元気な状態である今のうちに…治してやらないと。
 「先天的ハーフは一般の人間とさして変わらない……【PHANTOM】を治す特効薬も開発されている」
 「じゃあ……!」
 「早まるなよタケ。このまま終わったら次の夜魔さんに繋がらんだろうが」
 「夜魔さんって誰ですか……」
 緊迫した空気が一気に萎んだ気がする……ってコミカルパートで今までのシリアスがいけなかったんだ、って俺も何言ってるんだ!?
 「私達が何かすれば良いんですか?」
 目玉焼きにかけるのは醤油かソースかくらい真剣に悩んでいる俺を尻目につぐみがタカさんに次を煽る。
 「【PHANTOM】の特効薬の材料として必要なものでこの研究所にないもの……【無限草】という薬草を取ってきて欲しい」
 「【無限草】……」
 「これがその写真だ。生えている山は理宇佳が以前熊を狩った所だから、理宇佳にナビゲートを頼むと良い」
 「善は急げ。早速行きましょうか」
 かくして俺達は【無限草】を採取すべく、山へと向けて出発したのであった。


 

 「……何で君が【ME-DEATH】に搭乗しているわけ?」
 「愚問だな……そこに太陽があるからだ!」
 相変わらず理解不能な発言をする彼 ――終焉の鮪君―― の存在に頭を抱える私と空。
 「大体桑古木はどうしたわけ?」
 「ああ、あいつなら俺が昨日コレとの取引で提示した【核を搭載した理想を実現する機体】に乗って飛び去っていったぞ」
 「…………」
 今頃アイツは宇宙で覚醒してるのかしら……などと意味不明な事を私の頭の片隅は考えていた。そうでもしなきゃこの非現実的なシチュエーションに耐え切れそうに無かったから。
 「まぁ、そんな事は今は気にしません……私達を連れてこの島から脱出してくれませんか?」
 私より先に立ち直った空が100万ドルのエセ笑顔で鮪君を落としにかかる。鮪君は【ME-DEATH】から降りると、荒れ狂う暴風雨の中で私達に叫ぶ。
 「んー! そうだな〜、キミらが俺っち言う事何でも聞いてくれんなら良いよ〜♪ぐぇっへへへへ……」
 分かりやすい。ライプリヒの連中より腐った笑い声を響かせながら、鮪君がニタニタ哂う。
 「その取引には乗れないわね……」
 「んんっ? ではチミ等がこの機体を駆って出て行くかっ!? 運転に不慣れなチミ等ではこの暴風雨で墜落してパッタリって感じがビリビリ伝わってきますがねぇ!!?」
 「ぐっ……!」
 確かに、風も弱い晴れた時ならまだしも、この暴風雨では上手く操れる自身は無い。空もまた然りであろう。【ME-DEATH】の搭載AIを下手に高くした私のミスだった。
 この悪魔、否、残虐超人の言う事を聞くしかないのか……私達が希望を諦めかけた正にその時。
 一筋の閃光が荒れ狂う空に見えた。
 その光は驚くような速さでこちらに向かい、そして。
 「あぐぉぎゃばすばぁぁっ!!!??!?!?!?!?」
 鮪君を的確に、巨大な足で踏みつけた。
 『大丈夫か優、空!』
 スピーカーを通して聞こえたのは、出会ってから初めて頼れると感じられる声。
 「桑古木!?」
 「桑古木さん!!」
 コックピットから飛び降りてきたのは、わが田中研究所が誇る至高の人畜・桑古木涼権であった。
 「念の為【ME-DEATH】に取り付けておいた発信機が役に立ったな。さぁ2人とも、早くここから脱出するんだ!」
 「? 何よ桑古木、随分素直で親切じゃない」
 こんな所で救助を待っていた事を笑われるのを想定していた為、肩透かしを食らった気分になる。
 「優知らないのか!? ここは【PHANTOM】の発生地だぞっ!」
 「ええっ!?」
 「2人とも感染はしてないみたいだが、安心は出来ない!さっきあの機体の自爆装置を入れてきたから、後少しでこの島は吹き飛ぶ! 急げ!!」
 「鮪さんはどうするのですか?」
 「あいつが死ねば世界平和に百歩近づく。いいから急げ!」
 いそいそと私達は【ME-DEATH】に乗り込む。桑古木が手際良く基盤を操作し、空へと羽ばたいていく。
 私達が島を離れた数秒後、見事なキノコ雲が上がるのを横目で見た。




 「ここです」
 理宇佳の言葉にブレーキを踏むと、眼前には山道が広がっている。山道といっても自然に出来た野道で、とても車では入っていけそうにない。
 「ここから先は徒歩になりますから、私は戻りますね」
 「一緒に来てくれないのか?」
 「リレーSSでは他の方のオリキャラは使えないんですよ」
 「だからリレーSSって」
 「ああ、秋香菜さんに事情を説明して春香菜さんの研究所でホクトさんを預かってもらいますから」
 理宇佳は有無を言わさぬ口調で俺達を車から追いやると、あの車では出し得ない速度で光のように去っていった。
 「何だかよく分からんが……行くぞ」
 かくして俺・つぐみ・沙羅はホクトを救う為【無限草】を採取するべく山へと入っていった。




 「倉成さん達は今、あの山の中へ入ったようですね……」
 倉成の車につけた発信機を衛星から【ME-DEATH】で受信・映像を中継してみれば、倉成一家はさも楽しそうに山の中へとピクニックをしに行く最中であった。
 「私達を放置して呑気にピクニックだなんで……つぐみ、許すまじき!」
 全ての怒りの矛先をつぐみに向け、私と空の殺意は轟々と渦巻いていく。
 「倉成達を襲撃するわよ! 頑張りなさい下僕一号!!」
 「誰が下僕だよっ!?」
 ぎゃあぎゃあわめく犬を一蹴りで宥めすかすと、私達は『人誅』を下すべく急降下した。



多分あとがき

 好き放題やってしまい申し訳無いです(汗)
 コミカルパートなのにあまり笑えないし。
 壊しすぎるとストーリー破綻しちゃうんで抑えたとは言え……要修行、要修行。
 さて、かなりどうでも良いのですが、今回のこのSSの中には自分のオリキャラに関係する物事もちらほら散りばめさせて頂きました。
 さらにどうでも良いのですが、鮪は多分、いや絶対死んでません。『憎まれっ子世にはばかる』のですから、アイツは19XX年の世紀末が来ても普通に生きてるでしょう(てか過ぎてるし)
 さて、オチはお任せしましたよ、やまちゃん♪(これを俗に振り逃げと言う)
 ではでは!


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