We ever cross, hello never world
                              作者:霜月 律

 ―Alive start―

――武視点

 ふと夜空を見上げれば、満天の星空だった。
「ふぃー。」
 思わず息を吐き出した。あまりにも――空が綺麗だったから。
 明日は日曜日だ。つぐみや、ホクト、沙羅と出掛ける約束をしている。この空なら晴れるだろう。
――俺は、明日、起こる事をまだ知らない。
 道を見渡す。
「人が・・・いない?」
 珍しい事もあったものだ。いつもなら、賑わっている筈だ。
 しかし、仕事疲れのせいか、特に不思議には思わなかった。
――この後、それが何を意味するのか、俺は知る。
「優には感謝しないとな。」
 優―田中優美清春香菜。大学で教授として籍を置き、また、今は潰れてしまった、ドイツとの合併製薬会社『ライブリヒ』で働いていたという特殊な経歴を持つ女性。
 俺の命の恩人でもある。
 駅前に着く。そこで以外な人物と会う事になる。
「つぐみ?なんでここに?」
 そう、つぐみがそこにいた。つぐみはこちらを振り向くと口をパクパクし始めた。
「酸欠の魚?」
 つぐみはふるふると首を横に振る。
「武こそ・・・なんでここに?」
「え、なんでって・・・」
 つぐみの視線を辿って行く。駅前の大きなデジタル時計。そこに表示されていたのは・・・
「『24時3分』?」
 『24時』。PDAの時計表示を見る。
「『24時3分』。」
 それはもはや自分でも驚くほど冷静で確認のような声だった――が
「24時ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
 それはいともあっさりと崩れた。
 混乱した回路は止まることなく、正常な回路を飲み込んでいく。
 助けを求める様につぐみを見た。
「武も『27』に来てしまったのね・・・。」
 『27』という言葉に聞き覚えはなかった。
「27って事は・・・」
 27−24=3。そんな簡単な計算をしてみる。
「これから3時間この状態が続くのか?」
 できるだけ冷静に聞いた。
「ええ、そうよ。私もなんでそんな世界があるのかなんて知らないけどね。」
 ただ、と続ける。
「ここは、『明日』を求める人間と『昨日』を求める人間が殺しあう世界みたい。」
 『殺しあう』。つぐみは今そういったか・・・?
 俺は呆然としてしまった。


――ホクト視点

 気付けば、そこにいた。人のいない、夜の世界。
 ふと夜空を見上げれば、満天の星空だった。
「・・・」
 思わず魅入ってしまった。あまりにも――空が綺麗だったから。
 確信する。僕は『27』に来ているのだと。
 空をじっと見つめながら呟く。
「明日は、必然的に来るものなんじゃないかな。そうは思わない?」
 前を見る。何時の間にかそこに人がいた。
「ねぇ、いづみさん。」
「それはそうだけど、昨日は人を強くするものよ、ホクト君。」
 どこか雰囲気が『あの人』に似ている。
「そうかなぁ。僕は明日の方がいいと思うんだけど。」
「そうなのかもね。」
 いづみさんは優しい微笑みを湛えながら、言葉を吐き出していく。
「やっぱり、」
 しかし、その言葉は・・・
「貴方達とは分かり合えないわね。」
 確かな殺気を持っていた。
「当然。いづみさんとは経験した事が違うから。」
 僕はそれに負けじと言い張る。
「『実験』なんてしていなければ、貴方はこの世界から出られていたのにね。」
「――ッ!」
 その一言でいづみさんの表情が変わった。
「無限ループで何回目だったか、数回の間、記憶を持っていた誠さんはこんな世界があるのを望んだ。」
 一息吸って、続ける。
「明日を願う人間が昨日を願う人間を全員殺せば、明日が来る。」
 いづみさんの視線が痛い。
「でも、無限ループの過程で、大切な人を亡くしたため、誠さんは、昨日を望むようになった。」
 僕もいづみさんを見る。
「それについては、いづみさんも同じだよね。しかも、現実世界の時間なんてものは無視して、あの孤島にいる人間と、『時』を『視』る事の可能なブリックヴィンケルに関わった人間を全員、召還して――」
「黙りなさい。」
 とても冷たくて淡白な声が僕を襲う。
「今夜は何回目だったっけ?」
「18回目。いづみさんと13回目に会ったのを覚えてる。」
「じゃ、いい加減、決着つけないとね。」
「全く。3時間以内に全員殺せだなんて勘弁してほしいよね。」
 僕の声も自分でも驚く程、冷静だった。
「じゃ、始めようか。」
 それはどっちの声だったか――
 それをきっかけに僕達は『殺し合い』を始めた。



 あとがき
 どうも、霜月です。いかがでしたか?今回は半実験的に、アクション物を書いた訳ですが。ってまだアクション的要素出してないケド。
 すこし冷酷なホクト君と、すこし怖いいづみさんを演出させてみました。
 ・・・ああっ!武の出番が少ない!(笑
 ちなみに『We ever cross, hello never world』とは、訳すと、「私たちはいつか会う。 こんにちは、今までになかった世界。」となります。
 んでもって、『Alive start』は、「生きて、始まる」という意味で使っています。
 もしかしたら、多少英文がおかしいかもしれませんが、あまり気にしないで下さい。
――最後に。次を期待して下さったら、感謝です。また、それに値する物はないという方は、例の如く、御指摘待っています。
 それでは。


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