We ever cross, hello never world 作者:霜月 律 |
――武視点 24:00 カチッ―― アナログの腕時計の短針が24時を指した。 「おっし。」 向こうから、つぐみが走って来るのが見えた。 「今日は気を付けて。『訪問者』が揃った今では、平気で皆、殺し合うから。」 コクリ、と頷いてみせる。 とにかく、こんな世界に来てしまったからには、やるしかない。 『今日』を繰り返すという事がどんな事なのかは『今日』実際に体験した。 明日を奪わなければ昨日が来る。そんなのは御免だ。 この世界で死んだらどうなるのか。 その質問につぐみはこう答えた。 「ここにいた記憶は消えて、時間に翻弄され続けるだけ。」 らしい。 「じゃ、行くか。」 ちなみに、俺はまだ武器が出せない。 「そのうち、あっさり出せるわよ。」 と、つぐみは言っていたが。 「ええ。」 二人で、歩き始めた。 ――が、 「くるくるくるみマジぃぃぃぃぃぃぃック!!!」 間抜けな掛け声と一緒に―― ドゴォォォォォォォン!!! ジャンボ機級の大きさをした紙飛行機が、俺達の後ろに聳え立っていたビルに突っ込んだ。 そんなに大きい建造物ではなかったので、巻き込まれる事はなかった。 「・・・・・・・・・」 思わず、二人で顔を見合す。 「つーか、反則だろあれは。」 「くるくるくるみマジック!!」 声がする方に振り向く。 中学生ぐらいの女の子――と、一緒に視界に入ったのは、凶悪なまでに大量生産された、禍々しい光を放つ、紙飛行機だった。 「このぉ!」 つぐみは刀を二刀流に構えて、飛んで来た紙飛行機を叩き落す。 その際に、嫌〜な金属音が聞こえたが、気のせいだろう。いや、気のせいだと信じたい。 一応、言っておくが、あくまでも『紙』飛行機である。『鉄』飛行機ではない。 「くっ・・・」 そんな他愛も無い事を考えていると、つぐみの腕から、血が出ているのに気付いた。 「つぐみ!!」 そう、叫んだ直後、つぐみの日本刀が弾かれた。目の前に紙飛行機が迫る。 「――!!」 つぐみの目の前に飛び出す。 キィン! そこで紙飛行機攻撃は終わった。 「武・・・。」 紙飛行機を弾いた物は日本刀ではなく・・・ 「出せた・・・。」 俺の両手に握られた、超巨大な剣だった。・・・というか、包丁。 本当にあっさりと出してしまった気がする。 「なかなかやるねっ♪」 「中学生が危険な物を投げ飛ばすなぁぁぁぁぁぁ!!」 ビシィ!とその少女を指差す。 「失礼な人だな〜。」 その少女は頬を膨らませた。 「くるみは花の高校3年生だよっ!」 「へ・・・?」 「だーかーらー!」 その少女は大声を張り上げた。 「『守野くるみ』は高校3年生なのーーーー!!!」 ヤバイ。少女――くるみのテンションについていけない。ココと同等か、それ以上だろう。 「お姉ちゃんにもよく言われるんだよねー。『くるみは高校生に見えない』って。」 「それ、いづみさんの事?」 体勢を立て直したつぐみが聞いた。 「よく知っているね。」 「一度、会ったことがあるから。」 そうだったのか。 「ま、いいや。悪いけど、貴方達はここが死に場所になるのでーす☆」 もう駄目だ。頭が痛くなってきた・・・。 「遥さん!優夏さん!!」 「くるみしゃん、およびれすか〜?」 「・・・心が無いから・・・。」 もっと頭が痛くなった。・・・というか・・・ 「酔ってるじゃねーか、その女!!」 「しつれいれしゅね〜」 お前の態度が失礼だ!! 心の中だけでそう叫ぶ。少し扱いが悪くて可愛そうだったからだ。 「武、気をつけて・・・。」」 「とおりゃ〜〜〜〜!!!」 いつの間にか握られていたテニスラケットを振りかぶり・・・ 音速を超えた凶悪的残酷な速さでボールが飛んで来た! 「うおっ!」 カコンッ!! そのボールの先にあった、不幸な郵便ポストに綺麗な穴が開いた。 「・・・・・・」 開いた口が塞がらない、とは、まさにこの事だと無意識に思った。 「お魚さん・・・。」 もう一人の女(遥とか言ったか)が呟くと夜空の向こうから何かが飛んで来た。 ヒュ〜〜〜〜〜〜 「って、あれピラニアじゃあねえか!!」 やっぱり、超巨大な。 「どう考えても反則だろ!!」 俺は包丁を構えて、ピラニアを一刀両断にした。 「どうして、殺すの・・・?」 「そりゃ、当然――」 「生き物を殺す事は当然な事なの?」 ちょっと待った。なんだか悪役が俺みたいじゃないか! 「うっせー!黙れ〜〜!!」 「武、落ち着いて。」 暴走寸前の所を、つぐみが止めてくれた。 「はぁ。どうする?」 その質問につぐみはナイスな答えを返してくれた。 「実力で押し潰す。」 「左様ですか。」 たん!と、二人同時に地面を蹴った。 ボールと紙飛行機の十字砲火。足を止めれば、ピラニアが襲い掛かる。 しかし、キュレイ種である俺達のスピードはそれを凌駕していた。 「オラァ!!」 振り下ろした包丁から瓦礫が飛んだ。 「きゃあ!!」 狙いはくるみ。とりあえず、あの紙飛行機をどうにかしなくてはいけない。 吹っ飛んだ所を、逃がさず、追いかける。 ザスッ・・・ 「恨むなよ。」 俺の包丁が、くるみの体を貫いた。 「は・・・ふ・・・お・・・ねえ・・・ちゃ・・・ん・・・」 思いっきり包丁を引き抜く。 「くるみ!」 遥が叫ぶ・・・が。 「遅いわ。」 遥の背後には、つぐみがいた。 つぐみの日本刀が一閃した。 二人の体が霧になって消えた・・・。 「さて、残りはお前だけだ。」 殺人を犯した罪悪感を感じながら、ゆっくりと優夏へと振り向いた。 「こうなったら・・・」 優夏が何かを取り出した。 「これをにょんでぎゃくてんよ〜。」 取り出した物は一升瓶。それを顔に近づけていったと思ったら・・・ 「まさか・・・」 中身を一気飲みし始めた! 「ぷはー。」 「そのまま眠りなさい。」 「そのまま眠っていろ。」 二人の声が見事にハモって、文字通り、武器で叩き潰した。 「すいけんはまだ・・・。」 優夏の体が霧になった。 「おしっ。終わりだな。」 「そうみたいね。」 「後、何人いるんだ?」 「後・・・多分4人。」 4人。皆は無事だろうか。 「そうか・・・。」 俺達は夜の空を見上げた。 |
あとがき 第2章『遊戯開始』はいかがでしたか? 今回は武、大暴れです。包丁かよ!みたいな。 それでは、また。 |
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