We ever cross, hello never world 作者:霜月 律 |
――ホクト視点 25:07 僕は一人の人間と対峙していた。 「貴方の話はもういいよ、聞き飽きた。」 もう一人の人間が叫ぶ。 「何だと!この『飯田億彦』の話を聞き飽きただと!?」 全く、これだから御曹司は困る。 「だって30分ぐらい自己紹介してるじゃん。」 「なっ!」 億彦さんは時計を見た。 「君のおかげで貴重な時間が失われてしまったじゃあないか!」 自覚していないのかな、この人は・・・。 「ええ〜い、出て来い!オックマンロボG!!」 無茶苦茶な展開だ。頭が痛い。 ――が、そんな余裕も消えてしまった。 ガシャンガシャン・・・ サソリを思わせるフォルム。億彦さんはそれに乗り込んだ。 「というか、甲○機○隊?」 「黙れ〜!」 ドガガガガガガガガガ! その機械の手の中心に付けられた機関銃が炸裂する。 「うわっ!」 避けながら、グロックを構えて撃つ。 カンカンカンカン! 「まじ?」 「大マジだ!」 銃弾が全て弾かれていた。どうやって対処しようか迷っていた時・・・。 ドゴォン! 何かが振ってきた。 「今度は『ト○ンにコ○ン』?」 人型のロボットから声が聞こえてきた。 「そんなことは突っ込まないの、お兄ちゃん!」 お兄ちゃん? 「沙羅?」 「あったりー!」 目には目を、ロボにはロボを、と言った所かな。 「そこの操縦者!勝負よ!」 「臨む所だ!」 沙羅のロボが、バズーカを構える。 対する億彦さんのロボは後部に付いている対戦車砲を構えた。 ドガンドガンドガン!! 砲弾が交差して、二重奏を奏でた。周りの建造物の窓ガラスが割れていく。 爆煙が終わると、そこには沙羅の姿がなかった。 「何処だ!?」 上部についたカメラが忙しなく動いている。 沙羅は・・・上空にいた。 ガコォン! そして、サソリの上に着地。 「ぐおっ!」 沙羅のロボは、パイロットハッチを見つめた。まさか・・・ ドゴォン! 沙羅は躊躇う事を感じさせず、バズーカを撃ち込む。 何度も、何度も。 とうとう爆風に耐えられず、ハッチが吹き飛んだ。 「これで終わりでござる。」 「や、やめろ!」 銃口は無慈悲だった。 ―― 「つーかさあ。」 沙羅に話しかける。 「出番少なすぎじゃない?あの人。」 「いいでござる。30分話をしていたんだから。」 「聞いてたの?」 「うん。」 全然気が付かなかった・・・。 「じゃ、悪いけどこの後、人と待ち合わせているから。じゃね〜♪」 「ちょっ・・・待ってよ!」 沙羅は人の話を聞く事なく、去って行ってしまった。 ――それが、この世界で、最後の沙羅との会話だった。 ――空視点 25:08 私は一人の人間と対峙していた。 「こんばんは。朝倉さん。」 私と対峙していた人―朝倉沙紀さんも挨拶を返してくれた。 「こんばんは。空さん。」 「それじゃ・・・」 私の言葉の続きは朝倉さんが続けた。 「始めましょう!」 私は普段から身に纏っている、シルクを微振動を加えながら、沙紀さんに向けて伸ばした。 「遅い!」 沙紀さんはそう言うと、体を横っ飛びに動かした。 「行きなさい!」 沙紀さんの影から何かが、質量を持って姿を現した。 「犬!?」 私に向かって猛ダッシュしてくる犬さん。 「御免なさい。」 それを迎撃するために、シルクを伸ばして突き刺す。 「まだまだ!」 ぞわりぞわりと、周りの闇から、犬さんが生まれる。 「くっ。」 全ての攻撃を受け流し、冷静に迎撃。 しかし、私の『目』から流れ込んでくる情報は『生体反応:∞』を表示していた。 「この子達を攻撃しても無駄だという事がわかるでしょ?」 「それでも・・・」 目の前の敵に限りが無かったとしても・・・ 「それでも私はまだ負けられない!」 凍結していたプログラムを呼び出し、私の『脳』で実行する。 「システムリリース・・・OK。」 これでまだいける。 「勝負はこれからです。」 周りを見渡す。ビル街の中心。 これなら、なんとか・・・。 「行きますよ。」 手の中に納まっている小型のレーザー照射装置を使って、右前方に向ける。 『光』の反射角度を高速で計算。目の前で動いているモノに焦点を定める。 ビルの窓ガラスに光が当たる。 ドシュドシュドシュドシュ! 犬さんを集められたレーザーが突き刺す。そして、犬さんは霧になる。 「恨むなら飼い主を恨んで下さい。」 振り返り、沙紀さんを見つめる。 ――が、 「ふふふ。」 沙紀さんは笑っている。まだ余裕だという表情だ。 「貴方の言葉を借りて言わせて貰うなら・・・」 『闇』が動き出す。 「私の『猟犬』は遍在する。」 「まだ・・・なのですね。」 「誰も私に勝つ事は出来ない。」 なぜなら、と付け加える。 「『猟犬』は死んでも、また蘇る。そして、私の剣となり、盾となる。」 「くっ!」 光を本体に当てようとした直後・・・。 「私の『猟犬』は霧代わりにもなるの。」 光は、水蒸気を通すと、その強さが、半減する。 私の攻撃は無効化された。 犬さんが私に飛び掛る。 私の『目』が真っ黒く染まり、意識が遠のいていった。 私では・・・この人に勝てないというのでしょうか? ――教えて下さい、倉成先生―― |
あとがき 空、億彦ファンの皆さん、すみません。つーか、億彦も空も出番少なすぎ!(汗 これは次の沙紀戦に繋げるための話だと思って下さい。 そう思ってもらわなきゃ困ります。 空は誰のでも『さん』付けなので、犬にも『さん』を付けてみたのですが・・・駄目ですか?(笑 ちなみレーザーの話。詳しくは自分も知らないのですが、確かあれであっているはず。 ではでは。 |
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