いつまでも二人一緒に 作者:霜月 律 |
「桑古木さ~ん。」 ダークなオーラを発しながら、俺に迫る空。 「な、何だ?」 空に酒を飲ませたのは俺の失策だった。 「何で私は恋人がいないんでしょ~かぁ?」 「研究所に空ファンクラブがあるんだけど?」 「私は倉成さん一筋なんですぅ。」 ・・・何故ここまで高性能な体を手に入れてしまったのだろうか、空は? 向かいのソファで睨みあっている俺達を見て、ココはクスクスと笑っていた。 「でぇ、どうしてだと思います?」 「・・・運が悪かっただけだ。気にするな。」 「ピピちゃん、GO!」 とても鈍い音が後頭部から鳴り響く。 「・・・常人なら死んでいたな。」 「そもそも!」 俺は無視か? 「なんでLeMUの中にいた時は全く活躍所がなく!『倉成さん』(強調)が折角作られたタッタサンドを叩き落して!皆に迷惑を掛けていた桑古木さんが今現在これ以上なく幸せ者なんでしょうかぁ!!?」 「空さん・・・落ち着いて・・・?」 「ココちゃん、私はこれでも落ち着いているつもりですよ?」 ココはソファの上で放心状態になっていた俺の隣に座って耳打ちをしてきた。 (お兄ちゃん・・・何だか空さん怖いんだけど!?) (御免なココ。俺が酒を飲ましたばっかりに。) (とりあえず現状をどうにかしないと。) (じゃあ、優を呼んで止めるってのはどうだ?) (それグッドアイディア!) 「で、桑古木ったら大学じゃ恥ずかしがって私と仲良くしてくれないのよ~。」 「全く、桑古木さんったら駄目ですね~。」 「それは、優があんな所で――ってちょっと待て。」 俺はぷるぷると震える指で空の隣で酒を飲んでいる人物を指差した。 「何で優がここにいるんだよ?」 「あら、私だけじゃないわよ。」 優は、五人席の食卓の方を見やった。 「・・・・・・・・・。」 思わず俺とココは絶句してしまった。 「邪魔してるぞ。」 いつの間に・・・。 何故か武が爽やかな笑顔で言って見せた。 「オールメンバー勢揃いってやつか。」 「そ~いう事でござる。」 武、つぐみ、ホクト、沙羅、秋香菜がぴったりと五人席に収まっている。 ・・・大量の酒を持って。 「なあ、涼権。『あんな所で――』の続きは?」 「あ・・・。」 「私が桑古木と腕組んだら桑古木恥ずかしがってそっぽ向いちゃうのよ。」 「そりゃ駄目だな。俺とつぐみはいつもやっているぞ?」 「僕も。」 つぐみと秋香菜は顔を赤面させて、空は一層、闇のオーラを発していた。 「いいでござるな~。お兄ちゃん、私としよ~。」 「え?いや、ちょっと待って――。」 「ホークートー?」 「ゆ、ユウ。これは違うんだっ!」 「倉成さんが良ければその・・・私と・・・。」 「・・・待ちなさい。」 一瞬にして俺の家は修羅場と化した。 陸奥九○九もびっくりするぐらいの修羅場、である。 残念ながら俺はまだ、修羅の門をくぐっていない。 「無空波は避けられないんだよなぁ。」 「お兄ちゃん、気を確かに。」 「はぁ。意識が遠くなる・・・。」 ふと、視線を感じて前を向くと・・・ 「?・・・優?」 「え・・・あ・・・何でもない。」 「本当に?」 「本当に。」 「本当の本当に?」 「本当の本当に。」 「その割には顔が真っ赤になっているぞ?」 優は『ほ』の口にしたまま固まった。 「ほんと、優は可愛いな~。」 「ば、馬鹿っ!」 本格的に優の顔が真っ赤になった。 「おー。おー。見事なバカップルぶりだな。」 「武、それ以上言ったら優が・・・。」 武がいる方向に振り向いた所に、後頭部にカッという音と衝撃が響いた。 「メスを投げるからって言おうとしたんだけど・・・。」 後頭部に刺さった異物を引き抜く。 「あ~、いって~。」 普通なら痛いで済まないのだが。 「・・・武、ちょっと外に出ない?」 武はにっこりと笑顔を見せて、頷いた。 「ほんっとに幸せそうだなぁ?」 「同じ事を空にも言われたよ。」 はは、と笑う武。二人はアパートの下の公園のベンチに座っていた。 「・・・相談事か?」 「よく分かるね。」 はぁ、と溜息をついて呟いた。 「本当に、俺は幸せであっていいのかなぁ?」 「何を言いやがる。」 「俺は・・・武の真似をして皆を騙していた訳だし、『自分』を一度失って。・・・そんな俺がいいのかなってな。」 「ばーか。」 「武に言われたくはないけど?」 「俺よりもお前の方が超がつく馬鹿だよ。」 少しの間。 「俺の真似をして、皆を騙したから俺とココは助かったんだろう?」 それに、と続ける。 「今、お前は『自分』らしくいるじゃないか。」 「・・・でもっ。」 「確かにお前がした事は、愚かを通り越して罪かもしれない。でも、でもな――」 『あの時』の俺とフラッシュバック。 「――誰であろうと、今ある幸せを否定する事は出来ない。・・・だろ?」 全く・・・武は・・・。 「『あの時』、武は聞いていたんだっけ?」 「ああ。全く、俺が昔の彼女に言った言葉とそっくりだ。」 「え?武って彼女いたんだ。」 「・・・2017年の時にはもう別れていたけど。おかげで、つぐみと見事に結ばれたわけだが。」 「ふぅん。って武も彼女にこの言葉を言ったの?」 「そうだよ。お前が言った時、心からびっくりしたぞ。」 「そっか。」 二人で夜空を見上げた。 「さて、俺はお邪魔っぽいからそろそろ中に戻るな。」 「・・・え?」 武とすれ違いに優が来た。 「優・・・。」 優は無言で俺の隣に座った。 しばしの静寂。 「私たちにはまだ、余りある時間があるから・・・。」 先に静寂を破ったのは優。 優と顔を見合わせる。 「少しずつ、歩いていこうよ。二人で。ずっと一緒に。」 「ああ、そうだな・・・。それはプロポーズととっていいのかな?」 「女の子にそういう事言わせない。」 「はいはい。」 風が吹いた。 「私たちも、倉成夫婦みたいにいいカップルになれるよね。」 「勿論だ。絶対に、誰にも否定させない。」 俺は、優の背中に腕を回し、顔を近づけ―― 「――――――・・・。」 この瞬間が永遠に続く事を俺は心から願った。 これが届かぬ想いと叶える願いだったとしても。 『罪』という名の『恋』だったとしても。 俺はハッピーエンドをもう一度願おう。 また会ったな、ブリックヴィンケル。 約束だから。約束は必ず守るものなんだよ。 そうだな。どうだよ、その後の俺らは。 皆元気そうだね。桑古木がココの兄かぁ。 何だよ、不満か? はは、そんな事ないよ。ココを宜しくね。 当たり前だ。やっぱお前は弟になるのかな? そうだね、宜しく兄さん。 おう。いつでも家に来い。歓迎するぞ。 ありがと。さてと・・・ そろそろ時間か? うん。次に会えるのはいつか分からないけど。 また会えるといいな。 なんならまた約束しよっか? ああ、そうだな。 ――再び夜風が二人を包み込んだ。 「苦しいよ、桑古木。」 「悪い悪い。」 「皆が待っているから、いこ?」 「ああ、そうだな。」 俺は願おう。もう一度。 ――いつまでも二人一緒にいられますように―― Fin |
あとがき はい、自分にお疲れ様。 今回は桑古木救済、というよりもナチュラルに二人の恋愛を描いた(ちゃんと書けたかな?)SSにしました。 って同じ事かな。まぁそれは置いといて、いかがでしたか? 最後に今までのシリーズのタイトルと、最初のSSにもあったBWとのシンクロを持ってきて、今までのストーリーのまとめになるようにしてみました。 BWがいたのは、いつからかなんとなくわかりますよね。 御感想、御指摘頂ければ幸いです。 また機会があれば別のお話で書かせていただきます。 ではでは・・・。 |
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