(残されたわずかな時間。
 深い海の底にある研究所は
 刻々と、しかし確実に時は進んでいく。)


心の扉(前編)
                              武村 渉


「私・・本当は・・・倉成の事・・・。」
LeMUが次第に沈んでいく。
心臓がありえない位に鼓動を打つ今、
俺の胸に身を委ねている優は、俺にとっては衝撃となる言葉を言った。
「・・・好きだったの。」

「!?」
とても明るい性格で、皆のムードメーカーだった少女
どんな時でも、皆に明るさを与えてくれた。
そんな少女が、俺の事を好きだった・・・?
そう思うと、心音が更に激しさを増す。
「はは・・・こんなに苦しいのに、倉成と一緒だと・・・何故か心が落ち着くんだよね。」
「・・・・。」

       何で・・・こんなにも気持ちが高鳴っているんだ?
       俺は・・つぐみの事が・・・・。
       ・・・・いや
       俺が、俺が本当に大切にしたかったのは
       ・・・・優じゃ無いのか?

どんな時でも、優しさと明るさを与えてくれた優。
時には、口喧嘩をする時もあったけど
本当は、誰よりもお互いの事を思っていたのかもしれない。

       そうだ。俺にとって最も大切な人は・・・優だったんだ。
       つぐみに対しては、好意という感情があった。
       だけど、それは見せかけの好意だった。
       決して、他の人に本当の思いを悟られないようにするための、作り物だったんだ。

(そう、想っている人が自分にとって真に大切なのではない。
 本当に大切なのは、自分を想っている人なのだ。)

俺はゆっくりと、大切な物を護るかのように優を抱きしめた。
「え・・・?ちょ、ちょっと倉成・・・?」
抱きしめられて、少し慌てる優。
俺は、優の耳元で言った。
「すまない・・・・。」
「え?」
「俺は・・・優の気持ちを知らないで、いろいろな事を言ってしまった。
 つぐみの事ばかり気にしていて、優にきつい事を言ってしまって・・・。」
 しかし、その言葉を遮るかのように優は言った。
「・・・・何言ってるの?」
優は、目に涙を浮かべている。
「倉成は、つぐみの事が好きだから、つぐみの事が大切だから今までそうしてきたんじゃないの?」
優の言う言葉が、俺に重くのしかかる。
見せかけとはいえ、つぐみを大切にしてきたのは事実だ。
「・・・確かに、今までつぐみを大切にしてきた。」
「・・・・・。」
沈黙が、部屋全体をつつむ。
しかし、俺は自分の思いを伝えるために口を開いた。
「だけど、気づいたんだ。」

何気ない優しさ

「俺の・・・」

太陽のような明るさ

「俺の、大事な・・・」

心の強さは

「大切な人は・・・・」

俺が、一緒にいたから有るのだと

「優だって事が。」
「・・・嘘。」
「嘘じゃない。」
「嘘よっ!」
叫び、俺の元から離れる優。
その目は、少し赤くなっていた。
「私は・・・つぐみみたいに強くない。」
「優・・・。」
「私は・・・つぐみにはなれないよ!」
「・・・・。」

(運命は、何故このようないたずらをするのか・・・。)





                        後書き
作者「えー、皆さんの言いたい事はわかっています。」
時瀬「武や優のキャラクターが全然違うって事だろ。」
作者「できる限り似せようと思っているのですが、なかなか上手くいかないものですね。」
時瀬「なら練習しろよ。・・・・ところで篠月は?」
作者「毎回うるさい事を言っているので、少し異次元に飛ばしました。」
時瀬「異次元って・・・・。」
作者「では、後書きはこの位にして・・・。」
時瀬「そういえば、このSSがどこの続きか書いてないだろ、わからない人もいるかも知れないじゃないか。」
作者「あ。」
時瀬「おいおい・・・・つぐみ&空のバットエンドの続きだろ。」
作者「どうも、ご親切に。」
時瀬「それでは、後編もお楽しみに!」




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