自分とは、何なのだろう?
それを証明するものは、何であろうか?
記憶?
名前?
性格?
そんなものでは自分であるという事は言えない。
自分であるという事を証明するもの
それは…。


冬の女神(後編)
                              武村 渉


「そういえば、就職先は見つかった?」
一通りの話をした後、僕は武に聞いてみた。
武はキュレイ種であるために就職先が限られるからだ。
「ああ、優のおかげで研究所に勤める事になったよ。」
「ふーん…。」
優がねぇ…。
ふと、僕はつぐみをからかってみようと思った。
何故そんな風に思ったかは、自分でも分からないが。
「もしかしたら、優は武の事が好きなのかもしれないね。
 つぐみ、武が優に浮気しない様に気をつけた方が良いと思うよ。」
しかし、
何故か武がその言葉に驚いていた。
(といっても普通なら気づかない程の驚きだけど)
まさか…。
「武、優と何があったの?」
僕と同じように気づいていたつぐみが、般若のような気迫で武に詰め寄っていく。
傍から見れば、蛇に睨まれた蛙だ。
「べ、別に何にも無いって!」
武が言い訳をしているが、気迫が治まる気配は無い。
このままでは武があの世に行ってしまう。
「つぐみ、武がこう言っているんだから何も無いよ。きっと!」
僕がフォロー(?)をするが
「そう、決して優と一日デートなんか…。」
…武は地獄を見なければならなくなった。
「武…一日デートって……?」
「あ…。」
時既に遅し。
「武!!(怒)」
「うわっ!やめろつぐみ!」
つぐみは何故か部屋にあった木刀を持って武に襲い掛かっていった。
僕は部屋から出て
「なーむー。」
武に哀れみを送った。
あんな状況では止める事などできない。
バリン!
ガシャン!
部屋の中からは物が壊れる音が聞こえる。
と、
「パパとママ、またけんかしてるの?」
僕の隣で沙羅が聞いてきた。
先程まで着替えていたらしく、今は着物を着ている。
「また、って…いつも喧嘩しているの?」
「うん、しょっちゅう喧嘩しているよ。」
修理にいくらかかっているのだか…。
僕は思わず苦笑してしまった。
それにつられたのか、沙羅も笑う。
ふと、僕は思ったことを口にする。
「なんだか、懐かしい感じだね。」
「え?」
僕の言葉に、沙羅は首を傾げる。
無理も無いか。
僕は、呟くようにして歌を歌った。

君と 僕が かつて見た景色は
二度とない
君が僕の元から
去っていったあの日は
僕の心の中にあるんだ
寂しさと一緒に
君はいつも笑ってた
僕は君の笑顔が
何よりの支えになっていた
今はもう…
君と 共に行こう
空の 彼方へと

「それ…何ていう歌なの?」
歌を歌い終えると、沙羅が尋ねてきた。
「ああ…これは自分で作った歌だよ。
 僕の彼女が亡くなった時に作ったんだ。」
「…ごめんなさい。」
僕が答えると、沙羅は謝った。
沙羅はうかつな事を聞いてしまったと思ってたらしい。
僕は、笑いながら言った。
「あはは、別にいいよ。
 でも、昔に同じ事があったからつい…ね。」
懐かしいなぁ…。

あれは、親友の恋人の家に行った時だったな。
「ちょっと待て!コンパスや鋏(はさみ)を投げるな!」
「何よ!他の女の子にデレデレしていたじゃない!」
「それは仕方が無い事じゃないか!男の定だよ!」
「何が男の定よ!キーッ!!」
親友と親友の彼女が喧嘩をしていたから、僕は部屋から出たんだ。
「ケンカするほど仲が良いとは言うけれどなぁ…。」
僕が呟いていると、彼女は僕の横にやって来た。
「あれ?準備終わったんだ。」
「うん、時間かけてごめんね。」
「別にいいよ、でも春樹達はどうする?」
「あの二人、またケンカしているの?」
「定番だとはいえ、よく死なないよなぁ…。」
そんな他愛の無い話をしながら、時は過ぎていった。

「……という事があったんだ。」
「ふーん、そんな事があったの。」
「でも、俺たちは違うよな。」
「そうかしら?武は仕出かしそうだけど?」
「ははっ、違いない…って、いつの間に!?」
僕の前には武とつぐみと優春がいた。
何時の間に…?
「貴方が話し始めた直後に私が来て」
「その後に優がケンカを収めて」
「それで、廊下に出たら話していたので」
「それを聞いていたのね……。」
全く…何と言っていいのやら……。
とりあえず、メンバーは揃った。
「それじゃ、神社に行こう。秋香菜も居るんでしょ?」
「ええ、外で待っているわ。」
そして、皆が外に出た。
僕も外に出ようとした時
「……冬歌?」
僕は、彼女の名前を呼んだ。
僕の世界にも、この世界にも居ないはずの名前を。
「翼……。」
まさか
そんな筈が無い。
僕は後ろを振り向いた。
しかし、誰もいない。
「気のせいか。」
僕は、苦笑しながら外へと出た。

(翼が外に出た後、一人の天使が現れた。
 その天使は、涙を浮かべながら愛する人の名を言った。
 「翼……。」
 しかし、少女は消えてしまった。
 まるで、誰かに連れ去られたかの様に…。)




                     後書き
作者「……。」
篠月「失敗ですね。」
作者「………。」
篠月「季節外れの上に」
作者「…。」
篠月「最初からおかしいわね。」
作者「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
時瀬「あ、壊れた。」
作者「どうせ俺が悪いんだよ!」
篠月「そうね、駄作を作った貴方が。」
作者「・・・もういい。」
篠月「それじゃ、今回はこのへんで。」
時瀬「さよならー。」




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