・・・・何で俺は毎度毎度こんな目にあうんだ・・・
俺、倉成武は今、妻であるつぐみから逃げながらそう思った。
別にたいしたことはした覚えはない。
しかし向こうはそう思っていないようだ・・・
「待ちなさい!武!!」
怒気に満ちた顔で、俺のことを追いかけてくる。
つかまれば確実に公開処刑だ・・
「つ、つぐみ!俺が一体何をした!?」
俺は、精一杯追いつかれないように走りながらつぐみに問いかけた。しかし・・
「うるさい!いっぺん死になさい!!」
と、包丁を投げながらつぐみは言った
聞く耳を持っていないようだ。というかその包丁どこから出した?
と思いながらも、飛んできた包丁を紙一重で交わす。
・・・なぜこんなことに・・
俺は原因を探るために、記憶の糸を手繰り寄せ始めた。



『悪いことって・・・・』
                              チョコシュー




12月25日    8時34分

「つぐみー、起きろー」
と、いつものようにつぐみを起こしに来た俺だが・・
「・・・・Zzzz・・・」
つぐみは、一度寝るとなかなか起きない。
ぶっちゃけ、一緒に住み始めた最初のほうは挫折しかけたが
もうなれたし、今日は秘密兵器(?)を用意しておいた。
「つぐみー、せっかくの休日を寝て過ごすつもりかー?
せっかく、今日は夫婦水入らずでデートにでも行こうと計画したのになぁ・・」
といった瞬間
「おはよう武!ご飯は下にあるの?!」
と、ガバっと起き上がり、答えるまもなく下に下りていってしまった。
・・・現金なやつ・・・
まぁ、よしとしましょう。
下に下りる前に娘である沙羅と息子であるホクトを起こして、家族で朝ごはんを食べた。


・・・ここまでで何も問題は見当たらない・・・
もう少し後か?


   13時11分

今、俺はつぐみと二人っきりで街中を歩いている。
さすがにつぐみのほうは美人なので、街中の男たちがみな振り返る。
のはわかるのだが・・・
男たちだけではなく女たちのほうもつぐみを見て振り返るのだ・・
俺じゃなくつぐみのほうを見て振り返るのが悲しい・・・
「た、武?何で皆こっちを見てるの・・?」
つぐみが妙におどおどしながら聞いてくる。
「お前がきれいだからじゃないのか?」
と、俺がしれっと答えてやったら
「・・・・・」
つぐみは顔を赤くしながら黙ってしまった。
さすがに恥ずかしいらしい。
「あ、そ、そうだ武。こ、これからどうするの?」
まだ顔を赤くしているつぐみが、舌をかみそうにしながらも聞いてくる。
「これからは・・あー、映画を見に行って、
ウインドウショッピングでも楽しんだ後、
予約したホテルのレストランで食事だな」
「・・・・・・」
つぐみはぽかんとしながら俺の話しを聞いている。
「・・?どうした?」
「う、うん。何かいつもの武らしくない気が・・」
つぐみよ・・一体俺をどういう風に見ている?
「そうか?」
と、つぐみに俺の考えていることを悟られないように言ったが
「うん、いつもの武だったら計画なんて立てないもん」
「・・つぐみ、今度からデートとかの計画はもう立てねぇ」
「あ!ごめん!うそ!うそだからー!ってちょっと、武ー?」
俺は、つぐみを置いてすたすたと歩いていった。


・・・ここでもないような・・つぐみを置いていったけど。
結局その後仲直りしたし・・もっと後か・・


   19時17分

「おいしいね、武・・もぐもぐ・・」
「もぐもぐ・・・ああ、そうだな」
と、俺とつぐみはホテルの最上階にあるかなり高いレストランの食事を楽しんでいる。
「夜景もきれいで・・」
つぐみが外の夜景を見ながら言う。
どうやらつぐみはこのデートに満足してくれたようだ。
そう、今までは・・・
「あれ?倉成じゃない、何してるのここで」
・・・今、一番会いたくないやつである優の声が聞こえた気がする・・
「田中先生どうなさ・・あ、倉成さん奇遇ですね」
嬉しそうな空の声まで聞こえる・・幻聴であることを祈りたいのだが、どうやらそういうわけにもいかないらしい。
「よ、よお・・優・・空・・お前たちこそなんでここに・・」
最悪のパターンを想像しながら、俺は脅え気味に質問した。
隣のつぐみは怪訝そうな顔をしている・・まあ当たり前だが・・
「このホテル、私がオーナーよ?」
「知らなかったんですか、倉成さん?」
・・しまったーー!!!!!!!倉成武一生の不覚!!
ていうか、お前いつからそんなお金持ちにー!!
「どういうこと?武・・・」
つぐみの顔が怒り始めていることを示している。
「い、いや、つぐみ・・お、俺はこんなつもりじゃ・・」
ダン!! つぐみがテーブルに手を叩きつけて立ち上がった。
「帰りましょ?武・・」
言動そのものは穏やかなのだが、目が完全に怒っている。
「あ、ああ・・」
俺は、同意の言葉を発したはずだったのだが・・
「倉成はこのまま食事を続けるのよね?」
優が笑いながら、俺の腕をがっちりとつかむ。
完全にロックされているため、外すことが出来ない。
「ゆ、優・・頼むから放してくれ・・俺はつぐみと一緒に帰るんだ・・」
俺は懇願するような顔で優に言った。しかし
「そんな冷たいこと言わなくてもいいじゃない?」
優にはまったく通用しなかった。しかも
「そうですよ倉成さん。私たちと一緒に食事を楽しみましょ?」
空まで俺を逃がさない気だ・・俺の空いている腕をがっちりとロックする。
「武・・・・」
つぐみから俺に対して殺気が放たれ始めた。
完全に怒っている。
俺がはっきりとしないことへの怒りだろう。
「嫉妬深い女は嫌われるわよー」
と優がつぐみに対し挑発するような笑みを浮かべながら言った。
しかも・・
「倉成さんは、そういう人はお嫌いですよね?」
空までもがつぐみに対し微笑みながら挑発している。
「あなたたちそんなにここで死にたいのね・・」
つぐみが指の関節を鳴らしながら怒りを優たちへ向ける。
「上等よつぐみ・・ここで決着をつけてあげるわ・・」
優が戦闘態勢をとり始める。どこからともなく武器まで出している。
「小町さん・・今日こそ倉成さんをいただきます!!」
と空がつぐみに向かって攻撃を仕掛けると思いきや・・
「・・んー・・」
急に顔を近づけて・・・
「!? もがー!!!」
キスしてきた。
しかも舌まで入れてくる・・
「!!もがー!!もががーもがー!!(やめろー空ー!!)」
「んー・・・・ふう・・ふふ、倉成さんの唇はいただきました」
空が満足そうに、そしてつぐみへの宣戦布告を挑発するように微笑みながらした。
「死になさい!!!!」
そこにあっけなくつぐみ必殺のボディーブローが入り、空は吹っ飛ばされてしまった。
しかし、空の顔は、念願が叶い嬉しそうだったとその光景を目撃したものは後に語る・・
「それじゃ、倉成・・私にも・・んー・・」
優が空の行動を見てか、キスをしようとしてくる。
「させるかー!!!」
優のわき腹に見事につぐみのボディーブローが入る。
優は空同様に吹き飛ばされる。そしてそのまま動かなくなった・・
「次はあなたよ・・武・・」
つぐみの顔が鬼のような形相になっている・・
ちらりと横目で空と優を見た、そして自分もああなるのだと確信した。
「う、うわぁぁぁ!!!」
俺はその恐怖に耐え切れなくなってついに逃げ出した。



そして現在に至る・・
俺は今、つぐみにつかまりボディーブローの連打を受けた後
家に引きずられ、家族全員からの白い目線を受けながら
倉成家緊急家族法廷に立たされている。
「・・と、これが被告人倉成武の罪状よ・・」
つぐみが沙羅とホクトにさっき起こったことを話し終えたらしい。
「お父さん、サイテー」
グサ!! 沙羅から非難の声が上がる。
娘の一言が胸に大きな穴を開ける。
「お父さん!!ぼくたちを捨てるの?!!」
グサ!グサ!! ホクトの悲痛な叫びがさらに穴を深くする。
「さて、沙羅、ホクト、判決は?」
つぐみが当然・・という目をしながら沙羅とホクトに答えを求めた。
「有罪!!」
「有罪!!」
ホクトと沙羅が声を合わせていった。
うう、返す言葉がない・・
「沙羅、ホクト、武に好きなものでも買ってもらいなさい」
「つ、つぐみさん・・そ、それだけはか・・」
ギロ!! つぐみが有無を言わせないといわんばかりの視線を俺に向ける。
「ほんと!?お母さん!」
沙羅が目を輝かせながら言う。
「ええ、いいわよ。どんな高いものでも、その分、武が死ぬ気で働いてくるだろうから」
つぐみさん・・あれだけのボディーブローを叩き込んでおいてそれですか・・
「それじゃあ、新型のノートパソコンがいい!!」
「ええ、いいわよ。ホクトは?」
「僕はほしいものはないから・・」
ホクトが遠慮そうに言う。えらいぞホクト! しかし
「だめよ。それじゃ武が私たちに償えないから」
つぐみが横槍を入れた。必ず何かにしなさいといわんばかりに・・
「う・・わ、わかった・・そ、それじゃあ家族全員水入らずで海外旅行にでも・・」
「いいわね、じゃそれにしましょう。武、よろしくね」
「わーい!!お兄ちゃんナイスアイディア!!」
「へへ、沙羅はどこに行きたい?」
「ハワイとかがいいかな?」
沙羅とホクトが海外旅行の行き先を話し合い始めた。
そこにつぐみも加わり、俺は一人リビングの隅っこに縛り付けられたまま。
・・悪いことはこうも続くものだろうか・・
そしてこれから待つ重労働に耐えられるだろうか・・
そう思いながら俺の意識は朦朧とし、その想像の恐怖に気絶してしまった。




あとがきのようでそうでないもの
どうも、チョコシューです。
ギャグ第四弾を書いたわけですが・・何故か空の性格が黒くなってしまいました。
これもブラック空さんを読んだ影響でしょうかねぇ・・・(個人的にはすきなのですが・・(オイ )
後、田中先生ですが・・私の中では何故かやられ役として強くイメージに残っているので
今回もつぐみのボディーブローの前に沈んでもらいました。
それでは、いつもの通り感想、意見等は大歓迎です。びしびし評価しちゃってください
チョコシューでした!


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