黒づくめの女。どこの誰かもわからない。 そいつが何をしたというわけでもないが…… きっと何かをするに違いないと、誰もが期待している。 誰かが彼女の事を、そう呼んだんだとさ―― |
魔女の国 豆腐 |
1、 「魔女?」 伊勢崎誠二がオウム返しに問うと、野球部所属のクラスメートが気の無い声で返事を返してきた。どうやら彼自身は、この話にさほどの興味があるわけではないらしい。ただ、会話が途絶えるのを恐れただけ、か。彼がそういう沈黙に耐えられない人間である事を、誠二は心得ていた。 「おぉ。うちの妹が言ってたんよ。『知らないのォ? 馬鹿な兄貴ねえ。兄貴の学校の近所にねぇ――』とかなんとか」 「そんな中途半端に切り上げられても。なんなんだよ、その魔女ってやつは」 「いやいや、そんな期待されても大した話じゃあないぜ? よくある都市伝説とか、まあそんな話だよ。怪談みてえなものかな」 「だから、なんなんだよ」 「面白くないんだがなあ……。まあ、話せと言われれば話すがね」 最初に目撃したのが誰か。それは分からない。 だが目撃者は何人かいる。 何かから逃げるようにして、およそ女性とは思えない走力で暗闇の中を駆け抜ける女の事を。彼女は人も襲うという。 まばたきの隙間に彼女は存在し。 使い魔を従え。 日光を嫌うと。 噂が噂を呼び……おそらくどこかから嘘が混じり、話の純度はまったく信用ならないほどに汚れてしまった。もしかすると始まり自体が嘘っぱちであったかもしれない。 ――ただ、この話がこの高校を中心とした町内の学生の一部において囁かれている事。それだけは紛れもない事実だった。 話し終え、彼はどこか気まずそうに視線を窓の外にやった。 「ほらみろ、つまらん話だろう? なんか女々しいしなあ」 こういった噂は、当然女子の間でしか広まらないというのが摂理である。だから――女々しいかどうかはよく分からないが――自分は硬派であるというイメージ作りに日々努力している彼にとって、『女の子みたい』な会話は御法度なのだろう。もしかすると恥ずかしいのかもしれない。 「まだこの話が聞きたきゃ、そこいらに群がってる女どもにでも聞いてくれ」 これでこの話は終わり、とばかりに彼は両手をあげた。 2、 『今日は遅くなります。 冷蔵庫の真ん中にピザがあるので、温めてたべてください』 という置手紙を一瞥して、誠二は冷蔵庫の中をあさり始めた。適当に食べられそうなものを見繕って、学生鞄の中に詰め込む。食パンにジャム、チーズ、ソーセージやら朝の残りの目玉焼きやら。 ひと通り詰め込むと、今度は客間に向かう。もうずいぶん長いこと使われていないであろう毛布を一枚、押し入れから引っ張り出す。そこまでやってから、寝袋はなかったかな?などと思ったが、あいにくとそんなサバイバル寝具が我が家にあるはずもない。誠二は思いついた事をすぐさま打ち消すと、タオルを数枚タンスの奥から引っ張り出した。まとめて鞄に突っ込む。もう食べられません――鞄の悲鳴には耳をふさぐ。人の業というやつか。 馬鹿な事を考えながら、誠二は用意したものを次々と自転車にくくりつけていった。鞄は無理矢理、前かごの中へ。痛い、痛いよ誠二さん――黙るんだ鞄よ。 「あはははは!」 誠二は笑い転げた。他人が見たらまるっきり基地の外で暮らしている人である。 ひとしきり笑うと、毛布を自転車後部にゴム紐でぐるぐる巻きにした。何度か押したり引いたりして、間違っても走行中に落ちたりしないだろうな、と確かめる。 満足な結果を得ると、スタンドを蹴り、サドルにまたがり、ペダルを思いっきり踏み込む。数メートル進んだ所で、自転車は横倒しに倒れた。 時刻は夕方五時。冬に入りかけたこの時期、すでに暗闇が辺りを支配しようとしている。 あれからは大した問題もなく(他人の視線など気にしてはいけない)、誠二は目的の場所へとたどりついた。 その廃ビルを見上げる。窓ガラスは全て割れ、壁のいたるところに亀裂が走り、まともな部分などその長方形という形以外に見つけられそうになかった。 かつて大勢の人が利用したであろう入り口から中に入る。 受付カウンターの陰に自転車を止め、そこで荷物を全て外す。毛布を右腕で。鞄を左手に。誠二は階段を登り始めた。 三階。 捨てられた業務用デスクがいくつか転がったその部屋に。 満身創痍の魔女はいた。 窓から見ていたのだろうか。誠二が来る事はすでに知っていた御様子。親の仇とばかりに、こちらを睨んでいる。 「よっ」 とりあえず馴れ馴れしく挨拶などしてみる。 もちろん、常時機嫌の悪い魔女が『こんばんは〜♪』などと返してくるはずがない。期待していないし、本当にそんな事を言われても困る。いや、それはそれで楽しいかもしれない。 「……目障りと言ったはずよ」 魔女は毒舌家なのだ。 「そう、恐い事言うなよ。困ってる奴を放っておけるはずないだろ?」 「困ってなんて、いない。勝手に決めないで」 「どう見たって困ってるじゃないか」 そう言って彼女の様子を今一度確認する。満身創痍。やはりそれに尽きた。痩せこけ、頬骨は浮かび上がり、眼窩は落ち窪み、唇は荒れ、栄養が足りていない事は容易に見て取れる。露出した肌のいたるところに切り傷。黒服の下も同じような状況ならば、それは相当な重傷だ。左手には包帯が巻かれている。自分で巻いたのであろう。今にもほどけそうだった。 もしかすると彼女は、すでに死人であるのかもしれない。 壁にもたれかかったままで、そこから動いた所を見たことがなかった。 (まあ、そんな長い付き合いじゃないけどな) 彼女と会った――というか、『遭遇』したのは三日前。誠二が近道として裏路地を歩いていたところに、彼女が落下してきたのだ。傷だらけの、女が。どこから落ちてきたのかというと、それは高いところからなのだろうが、深くは考えずに『空からだ』などと誠二はまとめていた。 もちろん彼女に直接尋ねたが、 『……私は、意味のない質問には答えない事にしているの。それはあなたが知る必要のない事。だから私は答えない』 気絶していた彼女をこの場所に運んできたのは、もちろん誠二だった。彼女は移動しようとはしないが、もしかするとできないのかもしれない。足に重傷を負っているのか。まあ、空から落ちてきて無傷であるはずがないのだが。 魔女は黙っている。彼女が自分から口を開いたという事は、やはり、ない。 ……はずだった。 「――死にたくはないでしょう」 「は?」 素っ頓狂な声。自分で聞いた事もない、気の抜けた声。 そのあんまりにもな内容に、誠二は二の句を告げられなかった。 「私に関わるべきではないと言っているのよ。私が与えられる、それが最大限の慈悲の言葉。分かったら消えなさい」 なぜだろう。 言葉の刺々しさとは別に……彼女の声に、優しさが見えた気がするのは。 もしかすると、彼女は、 やさしいひとなのかもしれない。 なんだか嬉しくなった。 「……なに、にやけているのよ」 今日の魔女はよく話す。ますます嬉しくなる。 「だからにやけないでよ! 気持ち悪い」 「あんたの名前はなんて言うんだ?」 「は?」 「まだ聞いてなかっただろ。名前。俺は言ったよな? 伊勢崎誠二、って」 突然の質問に、しばし魔女は顔をしかめた。 それからゆっくり、何かを考えるように天井を見つめ……ぽつりと、 「くらげ」 「くらげ?」 「それが名前。もういいでしょう。私は暇じゃないのよ。……もう、関わらないで」 「…………」 どうやら彼女は、本当に人との接触を嫌っている――というか、避けているらしい。それはもしかすると関わる側の他人を心配しての事なのかもしれない。 自分が真相を知る事はないのだろうか。それはひどく寂しい。彼女が何と戦い、逃げているのか。その孤独な戦いは、いつ終わるのか。終わりは、あるのか。 『くらげ』と名乗る魔女の、その冷たい瞳を見つめながら――疲れきった身体の中、唯一常人以上の気迫を持ったその瞳を見つめながら――誠二はようやく思い出した。 「――そうだ。これ」 そう言って、鞄を彼女の横に置く。 不思議そうな瞳で鞄を見る魔女。震える右手で鞄の中をまさぐり、彼女はソーセージを引っ張り出した。 「……食べ物?」 「あんた……」 ソーセージも見たことがないのだろうか。不憫な人なのかもしれない。 「何? その目は」 上目使いに睨んでくる。誠二は気づかれないように目元を拭った。 「なんでもないさ」 「爽やかな笑顔でごまかさないでよ。あなた、今物凄く失礼な事考えてなかった?」 「考えてない」 「嘘」 「考えてないって」 「嘘!」 「考えてないぽ〜ん」 「だ――」 何か叫ぼうとして。 動きを止めたかと思うと。 目を見開いたまま。 彼女は突然、大粒の涙をこぼし始めた。 ぼろぼろ ぼろぼろ それは見る者の心を殺す涙。 殺害された青年は、 何もできず、涙を流すだけの魔女の事を見つめていた。 3、 「まともな食事は久しぶり、って感じだな」 何事もなかったかのように食パンやソーセージを手当たり次第に口に運ぶ彼女に、誠二は言ってみた。彼女は何も答えず、ただうなずくだけだった。口に食べ物が詰まっているからか。それとも、ふたたび口を閉ざしたのか。 幸運にも前者だったらしい。 ごくり、と喉を鳴らし、魔女は口を開いた。 「日本銀行券がなければ生活なんてできない。ここがそういう国だということは、あなたも知っているでしょう。まあ、どこでも同じだけれど」 「それは知ってるけど。実感としてないんだよ。俺たちみたいな学生は特に」 「羨ましい事ね」 「……あんたは、」 彼女の生い立ちについて聞こうとして、誠二は思いとどまった。それはタブーなのではないか、と。彼女の心が少しでも開いている今、それを言うのは……ひどく、なんというか、恐い事のような、気がした。 そう考えると、自分が矮小な存在なのではないかと思えてくる。 硬派であろうとするクラスメート。彼は滑稽だが、それは誰だって同じことなのではなかろうか。誰もが誰かに嘘をつき、誰もが誰かに嘘をつかれている。彼は彼自身に嘘をついている。そして今、自分は目の前の彼女に嘘をつこうとしている。自分の気持ちを隠そうという、それは『嘘』なのだ。しかしそれが罪かというと、そうではない、という。嘘つき達の悲しい遊戯。この狭い世界の真ん中で、人々は嘘をつかねばならない。優しい嘘、必要悪。誰かを大切に思うなら、嘘をつきたまえ。誰かが耳元で囁く。 ――ああ、なんと我らは悲しい生き物なのか。 理性という奴は、生物として不必要な装置に違いない。 「――ねえ」 「ん、あ?」 自分の口から漏れた呆けた声。 魔女は顔をしかめる。言いづらそうに、 「飲み物は、ないのかしら?」 「……いきなり贅沢になったなあ」 「仕方ないじゃない……。喉が乾いて仕方がないの。ジャムじゃ喉は潤わないわ」 見ると、持って来る前はほとんど手つかずであったはずのジャムが半分ほどに減っている。 「ちょ、直接食ったのか? ジャム」 「液状だったし……。少しはマシかな、って」 「ゲル状というんだ、これは。ちょっと待ってろ。買ってくるから」 告げて、回れ右。 魔女の使い魔となった彼は、できるだけ早く戻ってこようと、駆け出した。 4、 廃ビルから少し離れた場所。 自動販売機に硬貨を入れ、ふと誠二は指を止めた。 ――そういえば、彼女の好みなど知らないぞ……。 炭酸は、何か違う気がする。ミネラルウォーターあたりは無難な気もするが、なんだか味気ない。果汁一〇〇パーセントは論外。 (おしるこ) 視界の端に止まったそれ。殴られるかもしれない。 (う〜ん……) とりあえず、ペットボトルのスポーツ飲料を買う事にした。それと、おしるこも。 最初に後者を見せて、 『ほれー』 『うわん、なによこれはー。んもう、誠二の馬鹿ぁ!』 『はっはっは。冗談だよ冗談。ほらこれ』 『わーいありがとー』 という具合に魔女の怒った所も見れ、なおかつ笑いもゲット。今日は少しばかり寒いから、食後のデザート(?)としてもおしるこは有効なはずだ。 自分のあまりにも完璧すぎる計画に、誠二は思わずにやけた。 そしてその顔のままふりかえり、誠二は物凄く恥ずかしい思いをした。 そこには明らかに『私はサラリーマン』という感じの男性が無表情に立っていたのだ。どうも誠二がどかないので待っていたらしい。 「あ、う、すいま、せん」 しどろもどろに謝罪する。もちろん心なんぞここにあらず。愛想笑いを浮かべ、その場を立ち去ろうと男に背中を見せたその時。 後頭部を、鈍痛が襲った。 ――――――――――っ………… 5、 ……薄く目を開く。 最初に見えたのはコンクリートの地面。そして縛られた足首。五感を完全に取り戻し、誠二はただならぬ事態に血の気が引いた。 誘拐、身代金、殺人、レイプ……それらしき単語が脳のしわの隙間を闊歩する。 両手首は当然のように後ろ手に縛られ、そう簡単に解けるということはないだろう。というか、そのための束縛なのだろうが。 首を可能な範囲で動かす。目に入るものを脳が次々に分析していく。転がったデスク、散らばった窓ガラスの破片、見覚えのある物ばかり。見覚えのある風景。感じた事のある空気。 ――魔女の住処だった。 (な、なんだ? 俺はいつの間にタクシーになんぞ乗ったんだ?) 阿呆な考え。浮かんでは消えていく。 そしてそこがあまりにも見覚えのある場所であるのに、見覚えのある人物がいないことに気づき、そこから発展するようにして思い出した。 (ここは、彼女のいた場所、そのままだ) 周りには散乱した食べ物。いかにも慌てて逃げましたと言わんばかりの痕跡。そんな重要な手がかりに気づかなかったのは、それがあまりにも手近な場所にあったからか。人の心理の裏側。灯台もと暗し、とかいう…… (くそっ、落ち着け……。俺はどうなった? 彼女は?) 彼女は逃げたのだろう。きっと。 そして冷静に考えればすぐにでも分かることがひとつ。 それは、これが間違いなく彼女が呼び込んだ事件だという事…… 静かなその部屋。なんとなく声を出すのがためらわれる。それでも、 「、誰か! 誰かいないのか?」 叫ぶ。返事は、あった。 靴音。一人のものではない。 姿を見せたのは、三人の男だった。階段を降りてきた所らしい。その中に見覚えのある顔を見つける。自販機の前で会った会社員…… 彼が自分をここまで連れてきた。それは間違いないだろう。 誠二はうめくように声をあげた。 「おい、彼女は――」 彼の声を聞いた途端、先頭を歩いていた長身の男が顔色を変えた。蒼白では、ない。それは憤怒のもの。 こちらに駆け寄ってくる。他の二人は止めようともしない。男が転がっていた鉄パイプを拾い、それを力任せに―― 「うあぁあっ!」 狂ったような声を上げ、投げつけてきた。 それは反射と言えるほど、自分でも信じられないような動き。誠二は全身で横に倒れた。視界の隅を銀色の軌跡が通り過ぎる。がちんっ、と硬い音を立て、鉄パイプは壁に激突した。 それで終わるはずが、なかったのだ。 長身の男。焦点の合わないその瞳が誠二のそれと交差し、男の口がいびつに歪む。そいつの悲鳴。声帯をぶち破り、魂の底から響いてくる叫び。 「っぁああぁぁぁぁっ!」 叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。世界の発狂。彼が発狂した時、彼の世界は全てが敵となるに違いない。それは残酷な光景だ。差し伸べられた手の全てに呪いの言葉が彫られている。それは残酷な光景だ。 靴の先が腹に突き刺さるのを、誠二はスロー再生で見た。それは冗談ではないほどの痛みを伴っていたが、さらにその背後から走り込んできた小太りの男の姿を認めた時、感情が死ぬほどの恐怖を覚えた時、ああそれは―― 骨が折れたのかもしれない。後頭部が壁にぶつかる。その痛みが孫を目に入れるほどの痛みでしかないと思えるような、そんな激痛が鼻に残っていた。 死んでしまう。 心の底からそれを思った。 死は恐怖を伴い、純然たる暴力としてこの世に君臨したのだ。その指先は幼子を撫でるように人類を滅ぼす。人の狂気は、生来の武器として誰もが持っているその殺人兵器は、こんなにも簡単に。 人を 殺す のか 。 意識が途切れる寸前。 天井をぶち破り、黒服の魔女が降ってくるのが、見えた気が、した。 6、 ひと通り誠二に治療を施し。 「すべて私の責任よ」 それまで無言だった彼女の、開口一番の声はそれだった。 「親に何を聞かれても、誰に何を聞かれても、今日の事は黙っておいた方がいい。それが、あなたのできる最大の予防策。たぶん、あなたはもう狙われないと思う」 無表情。無表情だったのだろうか。彼女は。 「安心して、とは言わないけれど……。不必要に警戒する必要もない。彼らは組織ではないはずだから。どこかの富豪にでも雇われた、ただの飼い犬」 それは言い訳だったのかもしれない。 なにかを補おうとしているのではないだろうか、彼女は。 かつて欠いてしまったなにかを、必死で補おうと。 「全て私の責任よ」 彼女は繰り返す。 誠二は口の端が吊り上がるのを感じた。 「そうなんだ」 彼の声を聞いて、彼女はうつむいた。彼女の顔は見えない。 ――やがて彼女は立ち上がった。 座ったまま、誠二の視線は動かない。だから目に入った。 彼女の血に染まった右手。原形を留めていない右手。成人男性三人の頭蓋骨を粉砕したその手。 ふと左手を見る。包帯はどこかに消えていた。 傷痕はなかったが、 その手の形は、 どこかいびつであるような……。 魔女は告げる。 「さよなら」 魔女の呪いの言葉。 魔法にでもかかったのかもしれない。 気がつくと、彼女の姿はなかった。 7、幸せな罪人 ――私は今、幸せだった。 愛する子供との、ゆっくりとした日々。他に何もいらないとすら思える。 仕事の最中も子供の事を考えているような駄目社員ではあるが、どうせ五年もしたらやめようと思っているのだ。構いやしない。歳をとらない女。長居は命取りだ。 ある日、昔の友人に会った。というか、一年ごとに会っているのだが。 友人は軽く手をあげ、それを挨拶とした。 私はうなずく。 それから二人は無言で歩いた。静かな道。 やがてたどりつく。その墓石の前に。 ――×××―― 墓石の隅に故人の名前が彫ってあった。 地面の下には、海中で回収された彼の遺骨が納められているはずだ。 毎年の事ながら、涙が出そうになる。 線香をあげ、花を差し。 私達は合掌して黙祷を捧げた。 それを一分ばかり。 友人が寂しそうにつぶやく。 「次は××の番だ」 彼女の墓は少しばかり離れた町にある。 私達はそれぞれの車に乗り込む。 車の中。私とよく似た娘が、にっこりと白い歯を見せて笑った。 End...? 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あとがき(しぶがき) 相変わらずE17っぽくはないですが、書いてて物凄く楽しかったです。 読んでもらえたら嬉しいです。長いだけに、それはもう。 たぶんこれが掲載される頃はR11まであとわずか、という事になっているはず。僕は今春休みなので、それはもう猿のようにやる予定です。ウキー。 過遊死していなければ、次の話も書きます。 たぶん沙羅観察日記。できるのは三月末頃か。 ではでは。 |
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