| 僕と俺の境界線 刀華 |
| 昼と夜の境界線、、、 紅と蒼が交じり合う瞬間。 それは、おれが最も好きな光景だった。 はっきりと違うところもあれば、似ているところもある。 「なんだか、俺みたいだな、、、」 彼は自分自身に言い聞かせてみる。 言葉は、紅い空気に溶けた。 計画は一週間後、、、 だが、俺は、、、自信が無かった。 「倉成武」という男を「演じる」ということ。 僕、、、俺の、男として最も尊敬し、目標とする男。 俺に本当に演じきることができるのだろうか? 俺は17年間を倉成武になることに費やした。 それは、とてつもなく長い時間のように感じたし、あっという間だったような気もした。 でも、俺は、、、倉成武になろうとすればなろうとするほど、「倉成武」の大きさを知ることになった。 優に言わせれば「殆ど完璧」なほどに俺は倉成武になっているんだそうだ。 外見、仕草、しゃべり方、細かなクセ、、、 そういったものすべてが「まるで本物の倉成をみているみたい」にまでに。 そう、優の言う通りだ。 俺は「まるで本物の倉成みたい」程度にしか「倉成武」になれていない。 「倉成武」ではない、ただ「倉成武を演じている桑古木涼権」にすぎない。 俺は、心底悔しかった。 自分が憎かった。 いくら努力をしてみても、俺は「倉成武」には、なれなかった。 むしろ、「倉成武」を演じれば演じるほど俺は「倉成武」から遠くなっていくような気がした。 それほど「倉成武」は大きな存在だったんだと痛感させられた。 と、そのとき 背後に気配を感じた。 「あ〜、ワリィ、優。ちょっと疲れちゃってさ。すぐ戻るからよ。」 俺がここにいるのを知っているのは優くらいだ。 「どうした、少年?浮かない顔して。」 予想外の声。 俺が、今まで何度も聞きたいと思った声。 「た、、、たけし?」 俺は、信じられなかった。 武がここにいるはずがない。 でも、たしかに感じる「倉成武」の気配。 「おお、どうした?何か悩みでもあるのか?」 紛れも無い武の声。 忘れることも無い、武の声。 「、、、、、、」 言葉が、でなかった。 話したいことが、たくさんあるはずなのに、、、 俺は、振り返ることができなかった。 振り返ったら、武が消えてしまいそうだったから、、、 「どうした?どうした?恋の悩みか〜?」 あはは、と笑う武。 いつもの、武。 張り詰めていたものが、一気に緩んだ。 なぜだかわからないが、涙が、あふれてきた。 ざあ、と風が鳴いた。 「なあ、少年。おまえさあ、もうちょっと気楽にしてもいいと思うぜ?」 「、、、、、、」 何か答えたいのに、、、言葉にならない、、、 「まあ、つまりな、あれだ、今のおまえはおまえじゃないような気がするんだよな。」 それは、わかっている。 僕は、僕を捨てて武になろうとしているんだ。 僕が僕だったらダメなんだよ、、、 「少年。おまえは自分が嫌いか?」 僕は僕が嫌いか、、、 そういえばそんなこと考えたことなかったな。 自分を空(から)にして武になろうとしてきたから。 自分という存在について考える余裕もなかった。 「ま、俺はおまえが好きだけどな。変な意味じゃないからな。」 いつものような、屈託のない笑み。 武だった。 僕の、憧れの、倉成武だ。 好きだと言われた。 うれしかった。 「だから、おまえはおまえでいいと思うぜ?無理する必要なんて無いと思う。」 ああ、そうか。 なぜ僕が、武になりきれないかわかった気がした。 武の言葉には「力」があった。 そう、自分の意思と信念という力が。 僕には、自分がなかった。 武になろうとするあまり、自分を殺していた。 僕が僕じゃあダメだと思っていた。 でも、、、武にはなれない。 僕は気づいていた。 気づかないふりをしていた。 僕が武になれなければ、計画は失敗してしまう。 ココを、武を救え出せなくなってしまう。 その重圧が、僕を殺していた。 いつからだろう、、、僕はココロから笑えなくなっていた。 そこに、僕は、いなかったから、、、 でも、今わかった気がした。 僕は僕で良いんだ。 僕は、桑古木涼権だ。 「武、、、ありがとう、、、」 やっと、言葉が出た。 たった一言。 でも、僕にはすべてだった。 「いやいや、おれは大したことは言ってないぜ。」 ははは、と微笑む武。 僕もつられて微笑んだ。 ココロが軽くなった。 「元気になったみたいだな、少年。じゃあ、おれはそろそろ行くぜ。」 ビュウ、と風が鳴いた。 「じゃあな、少年。また会おうぜ。」 すっかり黒が強くなった風に、武の気配は溶けた。 「さて、がんばるか!!」 空を見上げてみた。 そこにはいつもよりきれいな空が広がっていた。 |
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