優先生、作戦です
                             刀華


「あ、もしもし、倉成さんのお宅ですか?、、、あ、違うよ〜、秋の方だよ。え〜と、倉成、、、じゃなくて武さんいる?」
電話にでたのは倉成の妻、小町つぐみだった。
ふっふっふっ、、、好都合だわ。
「たぶんまだ寝てると思うんだけど、、、用事があるなら起こしてくるわよ?」
「あ、じゃあお願いします。」
「わかったわ。ちょっと待っててね。それにしても優、、、秋が武に用事なんて珍しいわね。」
「いや〜、ちょっと相談があるんで〜」
「そう?わかったわ。」
カチャ。
ピロピロピロ〜ン、と保留音が聞こえてきた。
作戦成功!
どうやらバレていないらしい。
ふっ、私も十分現役で通じるわね(ニヤリ。
そう、私は優美清秋香菜の母、優美清春香菜。
今日は武にど〜しても確かめたいことがあって、「娘になりきり作戦」を決行中である。
私もまだまだ若いのね〜。
こんなに簡単に第一関門、というか最大の関門を突破できちゃうなんて。
でも、つぐみって案外勘が鋭かったりするからけっこうドキドキだったわ。
これで作戦成功も決まりね!
でも、、、秋っぽく喋るのは、、、ちょっと恥ずかしかったな、、、
と、ガチャ、と受話器をとる音。
そして武の声。
「ふぁ〜、なんだ〜?人が気持ちよく寝てるっていうのに、、、」
「あ、起こしちゃってごめんなさい、武さん。」
「あ〜、ま、いいけどさ。それより何だ、用事って?」
「今日は武さんにお願いがあるんだけど、、、今日ヒマですか?」
秋は武とは殆ど面識なしだから、ちゃんと敬語でいかないとね〜。
「なんだなんだ!?すげ〜珍しいな。てか初めてじゃないか?おまえに誘われるの。」
「え、あ、そ〜ですね。ちょっと他の人には相談しにくいことがあるんですよ。」
「相談か〜?俺なんかでよけりゃのるぜ?」
「あ、ありがと〜ございます〜。武さん。」
ふっ、男なんて(特に倉成)なんてちょろいもんだわ〜。
「あ、ちょっと待て。1つだけ言っておく」
げっ!も、もしかしてバレちゃったかな、、、
「武さん、じゃなくて武って呼んでくれ。名前にさん付けされるとなんか気味悪いからさ。」
、、、ふ〜っ、セーフ、、、!!いいこと思いついちゃった〜。
「そうですか〜?じゃあ武って呼びますね。あと、私のことは優で良いです。秋って呼ばれるとなんかしっくりこなくて、、、」
「はいはい。で、どこに行けばいい?今日は仕事休みだからいつでもいいぜ。」
「武の家は、、、ダメかな?」
「あ〜、ちょっと待ってな、、、つぐみに聞いてみるから」
お〜い、つぐみ〜、と電話越しに武の声が響く。
プッ。
保留にしないでそのまま待たせるのがなんとなく倉成らしくておかしかった。
でも、、、手は打ってあるのよね〜。
「お〜、待たせてワリィ。つぐみたちは優、、、おまえの母さんと会う約束しているから大したもてなしはできないが、それでも良いか?」
「はい、全然かまいませんよ。では、二時間後にお邪魔していいですか〜?」
「ああ、わかった。」
「じゃあ、二時間後に伺います。では。」
「おう、またな。」
ガチャリ。
や、やったわ!
まあ、私、優美清春香菜にかかればこのぐらい楽勝よね。
と、ゆっくりしているヒマはないわね。
急いで準備しないと、、、

二時間後

とうとう倉成の家の前まできちゃったわね。
ふぃ〜、さすがにちょっとドキドキ、、、
この日のために髪も切ったし、、、
留守番は秋にまかせているし、、、
この計画は、、、絶対成功させてみせるわ!

、、、よしっ!!

ピーーーンポーーーーーン!!!

、、、長い、、、
この時間が、、、長い、、、
もしかして忘れてたりして。
倉成ならありえるかも、、、

ガチャ!

「よう、時間ぴったりだな〜、さすが優の娘だな。」
久しぶりに見た倉成の笑顔。
ドキッとした。
「ん?あ、悪い悪い。お客さんを立たせておくのは良くないよな。ま、あがってくれ、散らかってるけどな〜」
「おじゃまします。」
どうぞどうぞ、とリビングに案内してくれる倉成。
散らかっている、と言っていたけど、、、すごいキレイに片付いている。
きっとつぐみね。
「ちょっと座って待っててくれ。お茶でも煎れるから。」
「はい。」
シンプルイズベスト。
そんな言葉がぴったりの部屋。
これもきっと、つぐみの趣味なんだろうな〜。
ふふふ、倉成がやったらゴチャゴチャになっちゃうだろうし。
キッチンから、うわっ、あちゃ〜、と倉成の声が聞こえる。
お茶を煎れるのに何やってるんだろう?
「ふ〜っ、普段はお茶なんて自分で煎れないからな〜」
コトッ、コトッ、っとテーブルに並べられるティーカップ。
意外にも、紅茶だった。
「武って紅茶飲むんですね〜。なんか緑茶ってイメージ。」
「あのな〜、優。おれだって紅茶くらい飲むぜ?ジェントルメンには紅茶だろう?」
ふふふ、倉成、変わってないな〜。
「あ、こら優!なに笑ってんだ!」
「え、笑っていませんよ?武はジェントルメンですからね〜。」
「ま、優ならわかってくれると思ってたぜ。あ〜、それから普段通りに喋って良いぜ?
なんか優、、、おまえの母さんの顔で敬語使われるとなんだか気味悪いからさ〜」
ふっふっふ〜、作戦第二段階成功!!
「うん、わかったわ、武。」
「よしよし、オッケーオッケー。」
と、ちょっとノドが乾いたから紅茶もらおうかな。
「いただきま〜す。」
「ああ、どんどん飲んでくれ。あ、砂糖とか入れなくていいか?」
「うん、紅茶はそのまま飲むのが一番だよ。」
カチャ。
カップを手にとって口に運んでみる。
クピクピ、、、
う〜む、さすが倉成。
「紅茶の風味が、、、死んでるよ、武。」
へっ?という顔をする倉成。
「紅茶は、まあ種類にもよるけど90度以上で煎れないと葉っぱが開かないから風味が生きないのよ。」
「え?でも俺沸かしたてのお湯使ったぜ?」
チッチッチッ、とわざとらしい仕草をしてみせる。
「一度ティーポットに熱湯を注いで温めてからじゃないと、80度ぐらいに温度が下がっちゃうんだよ。
欲をいえば、ティーカップも温めるのが理想かな。」
「へえ、知らなかったよ。さすが優だな。」
へ〜、と感心する倉成。
でも、倉成の煎れた紅茶は、とてもおいしかった。
「うん、でも武の煎れた紅茶けっこうおいしいよ。」
「そうか?ま、俺の愛情たっぷりだからな〜。」
あはは、と笑う倉成。
あ、やだ、倉成ったら変な冗談言うから、、、
「あれ?どうした?顔赤いぞ。優。」
「え、あ、う、う〜んと、ほ、ほら、紅茶温かいから身体もポッカポカになったんだよ〜」
「そうか」
ドキドキを落ち着けるために紅茶を飲む。
倉成の愛情たっぷりの紅茶を、、、って、こ、これじゃあ堂々巡りだわ!!
ここは話題を変えないと、、、
「そういえば優、俺に相談ってなんだ?」
なんだかホッとした。
これで切り出しやすくなったかな。
「え〜とね、実は私の母さんについての相談なんだ。」
ふ〜ん、とちょっと意外そうな顔をする倉成。
何の相談だと思っていたんだろう?
「優が、、、おまえの母さんがどうしたんだ?またなにか企んでるのか?」
ははは、と微笑む倉成。
案外鋭いのね、、、
「え〜とね、最近母さん溜め息ばかりついているんだ〜。」
「ふ〜ん、優が溜め息ね〜。あいつにも悩みとかあるのか〜。」
おいおい、倉成、私にだって悩みくらいあるぞ!!
「うん、なんか悩み事があるみたいなんだ。」
「ふ〜ん。悩みってのはなんだ?桑古木が生意気になってきて困ってる、とかか?」
やっぱり鋭いわね、、、武。
当たってるわ、、、今回は関係ないけど。
「それもあるみたいなんだけど、どっちかって言うと自分のことで悩んでいるみたいなんだよね。」
う〜ん、と考え込む倉成。
「自分のこと、か?最近老けてきた、とか?」
グサッ!!
「あ、でも優はキャリアだから年はとらないか。じゃあなんなんだ?」
ふっふっふっ、、、倉成。
あとで覚えておきなさいよ。
「なんか、恋の悩みらしいんだ〜。」
「コイ?魚か?」
「違うわよ!ついでに言うと、行けの反対でも、ワザとでも、薄いの反対でもないわ。」
「さ、さすが優の娘だな、、、」
ちっ、というような表情の倉成。
ふっふっふっ、、、倉成のことは知ってるんだから。
「優もそろそろ身を固めても良い年だしな〜。」
ザクッザクッ!!
ほ〜っ、倉成。誰のせいでこんなに年(外見意外)をとったと思っているのかしら〜?
「でも、別に恋の悩みなら俺じゃなくても、つぐみや空でも良いんじゃないか?ああ、空はマズイかもしれないけどな〜。」
「そうなんだけど、、、他の人には相談しにくい相手なんだよね〜。」
「相談しにくい相手?誰だ?あ、もしかしてホクトとか?まさか、、、空、、、とかじゃないよな、、、?」
倉成は私のことどうゆう目で見ているんだろう、、、
「とまあ、冗談はおいといて、だ。優が気になってる相手はだれなんだ?」
よし、、、言っちゃうか!!
「え〜とね、母さんは、、、武のことが好きみたいなんだ。」
、、、言っちゃった〜
「そう、か。」
「17年間、ずっと武のことを想い続けてきたんだって。」
う〜ん、とうなだれる倉成。
「優、お前もわかっているだろうけど俺には家庭がある。優の気持ちには応えられないよ。」
予想通りの反応。
別に私は、倉成の気持ちを自分に向ける気は無い。
だけど、だけど、、、
「うん、それはわかっているよ。でもね、一人の男として、武が母さんをどう想っているか聞きたいんだ、、、」

暫しの沈黙

そして、、、
「俺も、優のことが好きだぜ。この気持ちは17年前から変わっていない。」
「えっ、、、?」
予想外の答え。
倉成は、私のことを好きでいてくれていたんだ。
「だけど、さ。大人の事情ってのがあるからな〜。俺にはこわ〜いこわい妻がいるしな。」
中空を見つめる倉成。
私は次も言葉を待った。
「う〜ん、難しいな。俺は優が好きだが、それは恋や愛じゃないんだよな。でも、友達として好き、っていうのでもない。
なんだろうな〜、ちょっと説明できないな〜。」
倉成らしい答えだった。
「ま、1つだけ確実なことは優は俺にとって大切な人だ!ってことかな。」
それが、倉成の気持ちなのね
私、この人を好きになって良かった、、、
「?優?どうした?」
「え?どうしたって、、、?」
なぜだろう、、、
嬉しいはずなのに、、、
悲しくなんてないのに、、、
涙が溢れてきちゃう、、、
「え?あ?ち、違うよ?こ、これは花粉症、、、」
すく、と立ち上がる倉成。
私との距離が、、、どんどん狭まる。
「優、、、ゴメンな、、、」
近づいてくる倉成の顔。
倉成の吐息が、、、こそばゆい。
「これが、、、俺の気持ちだよ。」
優しい声。
倉成の声。
そして、、、左頬にやわらかい感触。
左頬に倉成の唇の感触。
え、、、私、キスされてる、、、?
一瞬だったけど、永遠にも思える時。
「く、倉成?どうして、、、」
「言ったろ?俺の気持ち、だぜ?」
ふふっ、、、倉成らしい。
って、そういえば、、、
「ねえ、武、もしかしてバレてた?」
「ああ、バレてた。」
うっ、、、
「い、いつからバレてたの?」
「そりゃ、最初の電話の時から優だってわかってたさ。」
「バ、バレてたの、、、?」
「バッチリばれてた。面白そうだから黙ってたけどな。いや〜、でもまさか髪まで切ってくるとは思わなかったぜ。」
うう、、、恥ずかしいよぅ、、、
「く、く、く、く、、、」
「九九?九九がどうかしたのか?優」
「く〜ら〜な〜り〜!!!」
「どわ〜っ!!!」
くらえ倉成、怒りの鉄拳!!!
「なん〜てね。えいっ!」
コツン。
コツっと倉成の頭を叩いた。
「ま、これぐらいで許してあげるわ。」
「ふ〜っ。助かった。」
やれやれ、と首を振る倉成。
「で、どうして私だってバレたのかしら?」
「俺が優を間違えると思うか?」
うっ、、、
ずるいよ倉成、、、
自分で顔が火照っているのがわかった。
「ん?どうした、優?顔が赤いぞ?ははぁ〜ん、さては娘のコスプレをして恥ずかしくなってきたな!!」
「く〜ら〜な〜り〜!!!!」

ま、結果はどうあれ作戦は、、、成功かな。



あとがき
倉成が、、、えっちいです(笑
中身はそのまま優先生、っていうのを前から書いてみたかったのですが、、、
ど〜も上手く書けませんね〜(汗
オチ?も落ちてませんし(涙
こんな駄文でも楽しんでいただけたら幸いです〜


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