*お読みいただく前に*
前作からの続編的要素も交えてあるため、前作をお読みいただくことを推奨いたします。




怪傑キュレイ団 

                              作者:やまちゃん

〜新着メッセージなし〜




★明かされた真実★


 その女性は、沙羅とホクトの名前をどういうわけかは分からないが既に知っていた。ブラウンの目はさして珍しくもないはずだが、青紫色の髪の毛は彼女の幻想的な雰囲気を表すのに十分だった。

「あなた一体何者なの!?」

 沙羅の質問はもっともなものである。誰だって見知らぬ人間から突然名前を呼ばれたらこう思うだろう。

「わたしは―――――」

 一瞬の沈黙は時として無限にも感じうる。ホクトは生唾を飲み込み、情勢をうかがった。キュレイ種といえど、彼らはサピエンスキュレイ種だ。つぐみや優春の様にハイレベルな格闘術を操れるわけではない。ただ、どこにでも例外は存在する。世の中には田中優美清秋香菜という、人間でありながらも狂獣でもあるという神秘的存在がいることを忘れてはならない。ふと、そんなことを考えつつも、どんな状況に追い込まれても大丈夫なように退路は確保しているホクト。さすがは倉成武の子供だけはある。……実は沙羅の指示によるものだったりするのは公然の秘密なのだが。

「わたしは守野いづみ。」

 女性が答えた。
「……守野いづみ……さん?」
「ええ、守る野原に平仮名でいづみと書くの。」
 怪訝そうな顔の沙羅に話しかける青髪の女性の口調は実に平然としたものだ。
「…………」
「そんなに警戒することはないわ。と、言ってもいきなり見ず知らずの人から名前を呼ばれたんじゃ無理もないかしら。そうね、それじゃあ私が何であなたたちのことを知っているか、そして私たちが何をしようとしているか、話すことにするわね。」
 語り始めた守野いづみ。この女性には悪意が感じられない、そう思い、目配せした沙羅とホクトは彼女の話に耳を傾ける。
「まず、あなたたちは守野茂蔵という人を知っているかしら?」
「モリノシゲゾウ? どこかで聞いたことあるね、沙羅?」
「ほら、前になっきゅ先輩のお母さんが話していたことがあったでしょ。なっきゅ先輩の出産を一緒に手伝ってくれた人だって。」
「そう、その人よ。その人はわたしの父なの。父は遺伝子工学の第一人者であり、クローン技術に関しても一流だったわ。そんな父はある日、一人の命を再び生みあげた。そうね、もう20年近く前の話になるわ。」
「ひょっとしてそれが……」
「なっきゅ先輩?」
「その通り。あなたの先輩の優ちゃんね。LeMUの事件の起こったとき、優ちゃんのお母さん、春香奈さんがいるでしょう? その春香奈さんはライプリヒ製薬を壊滅させたわよね。その日、一人の研究者とその娘が消えたの。一人は守野茂蔵。もう一人は樋口遙……私の妹よ。」
 日本には結婚すると苗字が変わるという儀礼がある。そのことを沙羅とホクトは思い浮かべた。
「わたしは必死に探したわ! でも見つからなかったの……。わたし一人の力ではどうにもならなかったのよ……。でも、幸いわたしには頼りになる友人たちがいた。わたしは遙の居場所を掴んだわ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。それとこれが何の関係が。」
「お兄ちゃん、うるさい。」
「だって、」
「人が話をしている時は黙って最後まで聞く! 小学生でも知っていることよ。ごめんなさい、いづみさん、お話続けて下さい。」
「あっ、ごめんなさいね、ホクト君、沙羅ちゃん。もう少しだけ聞いてくれるかしら?」
「はい。」
「も、勿論ですよ。」
 妹に注意されて格好の悪いホクトだった。
「それでね、遙は中東のある組織に捕まっているらしいの。」
「ある組織って……まさか!」
「……ライプリヒ!?」
「その通りよ。二人ともさすがね。ライプリヒ製薬は中東で密かに秘密基地を展開してTBウイルスの開発を再び行っているらしいの。そこではTBウイルス以外にも以前と同じようにキュレイウイルスに関しても研究しているらしいわ。おそらくTBウイルスの致死性とキュレイウイルスのTBウイルスに対する抵抗力を売り、二重の儲けをしようとしていることは予想に容易いわね。そして、その研究所では以前は行っていなかった研究もされているらしいの。」
「それは何なんです?」
「ええ、それはね……クローン人間による戦争部隊の創設よ。」
「え?」
「何ですって?」
「信じられないのも無理はないわね。今でもクローンの存在は非常に稀なの。遙と父が誘拐されたのもそれが原因ね。」
「と、いうことは……」
「そう……遙は父が創りだしたクローンなのよ……。」
 いづみはそこで目を閉じた。彼女の口調は優しかったが、それだけではなく怒りとやりきれなさがこめられていた。彼女の言葉が真実をつげていることは、彼女の目が物語っている。それが事実であるとするならば、恐ろしい計画だ。目を開いたいづみは再び語り始めた。
「そこであなたたちにお願いしたの。億彦君に頼んで……。億彦君は今回あなたたちキュレイ団に依頼をした人よ。彼は飯田コンツェルンの副社長を務めているの。遙の情報もキュレイ団の存在も彼の力なしには得ることは出来なかったわ。計画の阻止と……そして遙の救出を……! 遙を救うのは普通の人間では無理。相手はライプリヒ、どんな危険が待っているか分からない。そこでキュレイ種であるあなたたちの力を借りたいの。お願いできるかしら……?」
「でも、それなら何故こんな所へわざわざ呼び出したんですか?」
「ここまで来てもらったのはキュレイ種がそれだけの力を持っているか知りたかったからなの……。ごめんなさい、試すような真似をして……。」
 沙羅とホクトがあまり良い気持ちをしなかったのは確かだろう。だが、知っておいて欲しい。それ以上に良い気持ちをしないのがこれによって巨額の利益が得られなくなったことを知ることになる優春とつぐみであることを。そして忘れないで欲しい。それと同時に彼女たちは非常に正義感が強いということを。
「分かりました。そういうことなら私たちに任せて下さい!」
「……沙羅?」
「良いじゃないお兄ちゃん、こうなったら乗りかかった船よ。見て見ぬ振りなんて出来ないでしょ!? それともお兄ちゃん……もしかして……。」
 目をウルウルさせてホクトに非難の視線を向ける沙羅。
「あーもう、分かった! 分かったよ! ぼくもやればいいんでしょ! やれば!」
「さーすが私のお兄ちゃん! きっと賛成してくれるって思ってたわ。だからお兄ちゃんってだーい好き♪」
「そうかい? へへへ……。」
 まんざらでもなさそうに鼻をのばして笑みを浮かべるホクト。彼が妹の頼みごとを断れる日は来るのだろうか? いや、来ない。


 かくして、キュレイ団の頭脳松永沙羅と、その子分、典型的なノーと言えない日本人、尻の下にしかれマン倉成ホクトは社長と専務のもとへと向かうのであった。


★ロ神、起動す★


 かつて、地上には一人の漢(おとこ)がいた。漢は決して実ることのない愛を心の奥に秘め続けた。彼はある日、ついに想い人に思いの丈をぶつけたのである。しかし、見事に玉砕することになる。いや、正確には上手くかわされた、と言うべきか。まともな返事を貰えないのだ。
 彼の愛した彼女はちょーのーりょくしゃだった。そう、電波の持ち主なのだ。であるからして、彼女に常識は通じない。漢がいくら「愛しています。」と本音をぶつけてみたところで、彼女には「@、しています?」としか解釈されないのである。いや、意味不明だが。
 そんな彼も今や地上の人では無くなっていた。残念なことに彼は最早遠く手の届かない所に……
「こら、勝手に殺すな。」
 と、一人解説突っ込みをする俺。いたって自虐的だ。地上の人でなくなったのは確かだ。何故なら今俺が居るのは地下なのだから。

 あれから既に半日が経過していた。問題はサイコロが無いという事だった。
「くそう! サイコロさえあれば……サイコロさえあれば……!!」
 俺は悩む。入る部屋をどれにしようかと。
「むむむむむむぅ…………」

 む?

 腕組みをした時、かすかに胸に反応を感じた。
「何だ?」
 胸ポケットには何故か鉛筆が二本。

 キュピーン!!

「フフフフフ……フハハハハハ……!! 俺は勝ったぞ! ついに戦いに勝ったのだ!」
 長き戦いに終止符を打つべく、俺は鉛筆のHBと書かれている少し下の余白にもう一本の鉛筆で数字を記していく。
「1、2、3、4……」
 そう。簡易的なサイコロの出来上がりである。
「5……」
 む……
「5…………えーと……5の次って何だっけ?」
 度忘れをする俺。電波にやられたのだろうか? いやいや、心配には及ばない。ちょっとしたコメッチョだ。
「7だな、7。」
 さて、バトルの開始だ。コロコロコロ……

『●に30のダメージ』

 『7』と出た面の下にはそう書かれていた。鉛筆にはマネマネという文字に妙なモンスターと●マークの表示がされている。もう一本にはバブルスライムというモンスターと●マークが書かれていた。
「●? ●ねえ……。ありゃ、もう一本が●だ。と、いうことは……」

『ズガッ!! バブルスライムに30のダメージ!』

「と。だからこれでバブルスライムのHPは残り70だろ? 次はバブルスライムの攻撃、と……。」
 コロコロコロ……

『全員に30のダメージ』

『ズガッ!! マネマネに30のダメージ!』

 さて、次はマネマネのターンか……
 コロコロコロ……

『★に30のダメージ』

「ハハハ! 俺は●だ! だからダメージを与えられないんだ!」

 ………………
 
「ハッ!?」

 しまった! 俺としたことが何ということだ! ついつい童心にかえって懐かしのバト○鉛筆で遊んでしまった……。

 これは御覧のように鉛筆に●と★の表示がなされていて、「●(★)に○○のダメージ」という表記が出たらそのマークの相手に○○の分だけダメージを与えることが出来る、というDQファンにはお馴染みの昔流行った遊びである。というかそんなことはどうでも良いことだ。この話になんの影響もない。放置放置!

 あ、そうだ。鉛筆には数字をつけてサイコロにしたんだっけな。何が出てるかな。
『7』
「7か。ここからスタートだから。」
 ここは円状になっている中央の空間、そして円周上にある部屋の数々から成り立っている。先ほど俺が出た部屋を1として数え、右周りに順番に数えていくことにした。自分の中で決めたローカルルールだ。ちなみに部屋は全部で6部屋ある。
「1、2、3、4、5、6、7……」
 あれ? 一周して戻ってきてしまったぞ? 1が出なければ他の部屋にいけるはずだ。
「おかしい……何故こういったことが起こるんだ? 気を取り直して、もう一度。
 コロコロコロ……

『●に30のダメージ』

「よし! マネマネに30のダメージ! ……って違うだろ俺。えーと、数字は『7』。またか。1、2、3、4、5、6、7、と。おいおい、また戻ってきちまったぞ?」
 う〜ん、ミステリアス。

 ………………

「フ……俺としたことが……。サイコロに何で『7』があるんだ。」
 7を消して8にする。こうすると6番目の部屋にはいつまでたっても行くことは出来ないのだ。それは作戦だった。俺の頭脳プレイだ。6番目の部屋からは何だか怪しい空気が漂ってくる。要するに危険そうだ。俺は危険な賭けはしない主義だからな……。命あってのものだね。つぐみと優には悪いが俺はパスさせてもらうぜ。そもそも給料だって貰ってないし任務を遂行する義務なんて俺には無い。と、先ほど6という5の次の数字の存在を忘れていた自分に言い訳をする。

 その時、遠くから大声が聞こえた。

「――――――トーー!」

「ん? 何だ?」

「――――――クトーー!」

「はて? どこかで聞いた声だな……。」

「――――――ホクトーーー!!」

「ホクト? ホクトってあのホクトか? するとこの声は……?」

 ドゴォォオオーーンン!!!

 突如、轟音と共に目の前の壁が裂けた。そして俺は驚愕の物体を目にしたのだった……




 つづく



あとがき
 
 お読みいただきありがとうございます。
 かなり前作から間が空いてしまいました。反省せねばなりません。
 今回の話は、前半シリアス後半ギャグでいこうとしているのですが、ギャグの方が相変わらずDQネタ傾向(しかもバトル鉛筆ネタ)なので、極力濃いネタは使わないようにしてはいるのですが、問題がある気が自分では致しております(汗) 
 こちらでは幸いにしてDQネタを分かっていただける方が多いのが救いなのですが、知らない方にはまったく面白くない可能性があるので、この点を考慮して無駄な説明文を入れましたが、何だか微妙ですね(滝汗)
 本来Ever17SSに他のゲームを登場させる、というのは反則なので、この手のパロディーものを書く際にはいつも不安になります。どこまでネタが通用するのかな……と。ただ、私は他ゲーム登場系パロディーは好きですし、利用するのも苦手ではありません。その辺を独りよがりにならないように書いていければ良いのですが……。
 もし、幸いにして感想をいただけるならば、Ever17以外のパロディーネタが入っていて面白かったか、入っていたので逆に楽しめなかったか、書いていただければ今後の参考になり、ありがたいです。

 それでは〜♪


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