*お読みいただく前に* 前作からの続編的要素も交えてあるため、前作をお読みいただくことを推奨いたします。 |
怪傑キュレイ団 作者:やまちゃん |
★改造計画★ 「れーだーニハンノウアリ。ネツゲンハンノウヲにタイカンチシマシタ。」 暗い室内の一角。声の方向に一人の女性が肘掛け椅子に座っていた。 「…………」 その機械じみた声に無言で返す。 「指令。いかがいたしましょうか?」 もう一人、女性がいた。そこには3人〜2人の人がいるようである。 ブーブー ブザーが室内に鳴り響く。やはり無言で返す女性。 「あ、あの……指令?」 「…………」 「ヘンジガナイ。タダノシカバネノヨウダ。」 先ほどの機械じみた声が「指令」に声を掛け続ける女性に答えた。 「何ですって!? し、指令! 指令!?」 「…………くー……くー……」 「……って、寝てんじゃないわよ!」 「はっ。どうした?」 ブーブー 相変わらず鳴り続く耳障りなブザー。 「どうするの? 誰か来たわよ?」 「今出撃体制にあるのは……」 「私とあなたとココ、それにLM-RSDS-4913Aよ。」 「そう……。私とあなたは社の中核だから離れるわけにはいかないわね。かといってココに任せるのは心もとないし……。」 「答えは決まったようね。」 「ええ。行くのよ! LM-RSDS-4913A!」 「らじゃー。」 ………… 「はぁ。何でちょっと来客者を出迎えにいくだけでこんなに大騒ぎするんでしょうね、あの二人は。これだから倉成さんは小町さんには任せられないんです。いえ、勿論例えこうでなかったとしても任せられないんですが……。田中さんは言うまでも無いですね。ま、私の敵では無いとは思うのですが、油断は禁物ですから……ブツブツ」 ブーブー 「はーい、今出ますー。というか会社なのに何で鍵がしてあるんでしょうね。これだから倉成さんは小町さんに……」以下同文。 戸を開けるとそこには二人の男女がいらついた様子で立っていた。 「あら、松永部長代理とキワクさん?」 「キワクさんって誰のことかと小一時間問い詰めたい。」 「空も言うようになったわね。」 「まあ、私の方が立場は上ですし。課長ですからね♪ それはさておいて、お仕事お疲れ様でした。さあ、上がって下さい。社長も専務もご存命ですよ。」 「ご存命って……何かあったの?」 「いえ、それが、お二人がいらっしゃらない間に田中さん……優美清秋香菜さんがいらっしゃって、『ホクトを返してー!』とチェーンソーを振り回していてそれはもう大変な状況だったんですよ。」 「あ゛。なっきゅ先輩のことすっかり忘れてたわ。」 「それでユウはどうなったの?」 「今は桑古木係長のもとへ私の愛する倉成さんと向かっています。」 「って、空? 何でパパと、それもよりによってわざわざパパもどきのところへむかっちゃってるわけ? 普通お兄ちゃんのところに来るんじゃない?」 「そ、それが……」 「はは〜ん、読めたでござるよ。さてはなっきゅ先輩、お兄ちゃんに愛想を尽かして……」 「そ、そんなわけないでしょ! 僕たちは愛し合っていた…………」 「ほんとにぃ〜?」 「ほ、ほんとだって!」 「最近お兄ちゃん、私とばっかりいた様な気もするけど? あ、そっか! 実はお兄ちゃん、やっぱり私のことを……」 「そ、そんなわけないだろ!」 「あ、あの……お二人とも……」 「空もそう思わない? なっきゅ先輩、ひょっとしたら桑古木になびいちゃってるのかもって。」 「え? え、ええ、そうかもしれませんね……」 「そ! そんなバカなぁぁああああ!?」 顔面蒼白になり白目をむいて倒れそうになるホクトを見て、ユウたちに渡した沙羅とホクトのもとへ向かうはずの航空チケットが、実は間違えて桑古木のもとへ向かうチケットを渡してしまっただけだ、ということは、このままホクトの混乱ぶりを楽しみ続けるためにも口が裂けても言えない空だった。 あわれホクト。この世界には悪女が多い。 「まあ、それはともかく上がりませんか? 玄関先でいつまでもホクトさんをいじっているのも面白いのですが、中でじっくりとコーヒーでも飲みながらにしましょう。」 「それもそうね。さ、お兄ちゃん、いつまでムンクの叫びやってるのよ。ママたちに報告もしなくちゃいけないし行くわよ。」 ………… 「ママー、ただいまー♪」 「あら、おかえり、沙羅……と、誰? その怪しげな連れは。」 沙羅の隣には、ホクトがいる。 しかしホクトの鮮やかに金を誇っていたはずの髪の色は先ほどのショックのあまりかすっかり白色と化しており、目はうつろでその虚空には何も映し出されてはいなかった。さながらゾンビの様相である。 「って、お兄ちゃんしっかりしてよ! まだそうと決まったわけじゃないでしょう? ほら、なっきゅ先輩を信じてあげなきゃ。」 「信じるものは救われる……か……はは……」 「ねぇつぐみ……。あれって本当にホクトなの?」 「そ、そうみたいね。何があったのかしら。」 「と、とにかく。コーヒーをどうぞ。」 「ありがとう、空。」 「ホクトさんもどうぞ。」 「僕は遠慮しとくよ……」 「ココちゃん、ホクトさんを励ましてあげてくれませんか?」 「うん、分かった。ねえねえホクたん、ホクたんにはココがついてるから。」 「ありがとうココ……でもストライクゾーンが若干違うんだ。気持ちだけ受け取っておくよ……」 「何だかどさくさにまぎれて酷いこと言ってるような気がするわね、うちの息子。」 「口が悪いのは親譲りかしら。」 さらりと優。 「あら、何か言った? うちの子に悪影響を与えているのは私より口の悪いあんたの娘よねえ?」 「おほほほ。やあねえ、嫉妬深いおばさんって。」 「お、おばさ、何ですってー!?」 第一ラウンド開始 ………… 「ぜえぜえ……」 「はあはあ……」 「お二人とも気は済みましたか? こんなけ会社を滅茶苦茶に荒らしまわってくれたからいい加減もう良いですよね? というよりもこれは誰が掃除すると思ってるんですか?」(ニッコリ) 空は天使の様な笑顔で改造した右腕を二人に向けた。空は昨晩こっそりと自分で右腕を改造し、空専用付属兵器と取替え可能にしていたのである。今はグレネードランチャー級の銃口が二人を見つめていた。 「そ、空……いつの間にそんな武器を……」 「そ、空さん、あんまり怒るとショートしちゃうよ?」 「ほら! ママ、早く片付けないと。」 「なっきゅも手伝ってね。」 「わ、分かったわ。」 「それが賢明みたいね……。」 ………… 「さて、片付けも済んだようですしコーヒーをどうぞ。」 空の右腕は通常モードに戻っている。 「あ、そうだ! ママたちに大事な話があったのよ。ねえ、お兄ちゃん?」 「ははは……そうみたいだね……」 「お兄ちゃんは駄目みたいね。仕方ない、私が話すわ。」 「何なの? その大事な話って。」 「あのね……」 ………… 「話は分かったわ。」 「ってことはお宝の話は無しってこと!?」 「優、落ち着いて。」 「つぐみ、あんた悔しくないの? 財宝がパーなのよ?」 「悔しいに決まってるじゃないの……。でもここで暴れたらどうなると思う?」 「?」 「後ろを見てみなさい。」 優の背後にはにこにこと天使の様な笑顔を浮かべた茜ヶ崎空(推定24歳)が立っていたのである。ちなみに右手には先ほどのグレネード級が装着されていた。 「そういうことね……」(滝汗) 「ここは大人しくその依頼を受けるしか無さそうね。またあんなウイルスが世界にばら撒かれるのは私としても防ぎたいし。」 「ねえ沙羅、報酬はあるんでしょうね?」 専務は社長よりがめついのだ。 「はい。飯田コンツェルンが依頼者のバックについているらしいのでそれ相応の額が出ると思いますよ。」 「よし、その話、乗るしかないわね。それと空、お願いだからその武器はしまって。」 ………… 「チケットの準備は出来ました。」 「お兄ちゃん、いつまでもくよくよしないで。こうなったら桑古木からなっきゅ先輩を取り返すのよ!」 「む……。そうか! そうだよね! 僕が桑古木に負けるわけ無いよね!」 覇気を取り戻したホクトの髪は不思議なことに某古典アニメの超サイヤ人の如く、元の金に色を戻していったのであった。 「そうそう。その意気よ。」 「それじゃあ全員出張に出かけるわよ。」 と、つぐみ。 「行ってらっしゃーい。」 「優、あんたも行くのよ……。」 ★深まる溝★ 突如、それは俺の目の前に現れた。 刃物だった。それも回転している。 ギュイーン 「って、危ねえっ!」 目の前の壁を割って現れたその刃物はグングンと俺に迫ってくる。 「ホクトー!!」 その壁の奥から声が聞こえた。聞きなれた声だ。 「おいおい……ユウの声じゃないか? これって……。」 案の定、壁が崩れ去り、ユウが登場。後ろには武もいた。ユウはチェーンソーを装備していた。それで壁を割ってきたのだ。というか用途が間違ってるぞ……。 「って、何であんたがいるのよ!?」 「ご挨拶だな……。それはこっちのセリフだ。何でお前らが来たんだ?」 「空たちがホクトが沙羅を助けにこっちに来てるって言うから来たのよ。」 「はあ? そんなの聞いて無いぞ? というかあいつらもあの会社に巻き込まれたのかい。可哀想に……。」 「何ですってー!? と、いうことは空にお母さん……謀ったわねえ……!」 「ま、とりあえず俺の任務はテロリストに奪われたこの施設を奪還することだからな。どうせならユウたちも手伝ってくれないか?」 「おいおい、勘弁してくれよ。俺は宇宙帰りだぜ?」 と、武。 その時、近くから人の声がした。 「おい! さっきの音は何だ!?」 「分からん。とりあえず調べに行くぞ!」 「ちっ、ユウが馬鹿みたいに大きな音立てるから敵さん集まってきやがったぜ。どうする? これで武も手伝わないわけにはいかなくなってきたみたいだぞ?」 「仕方ないな。後で給料の分け前よこせよ。」 「いや、それがな。働けど働けど給料が出ないのだが……。っと、来たみたいだ。」 「何だ、お前たちは!?」 敵は二人だ。 「俺は桑古木涼権だ。人呼んでミラクル涼ちゃんだ。」 「弱そうね。」 「ふ……ユウ、お前はまだ俺の本当の実力を知らないようだな。」 「何だかよく分からんがとりあえず大人しく捕まることだ。お前たちには聞きたいことが山ほどある。」 「そうはいかーん! くらえ! ミラクル涼権パンチを!」 スカッ ほほう……俺のパンチをかわすとはなかなかやるな……。 ズガッ! 「うぐっ」 次の瞬間、俺はもう一人の敵にパンチをくらって捕まってしまったのだった。 「まったく……、武さん! 助けてあげて!」 「レディーの頼みとあっては仕方が無いな。」 キザなセリフを吐くや否や武は俺を捕まえた男に強烈な蹴りを叩き込み、解放された俺は呆気にとられているもう一人に再びミラクル涼権パンチを浴びせかける。 ズガッ! 「今度こそ決まったっ!」 「武さん、かっこいい!」 ユウの黄色い声援。 いや、俺の方がかっこよかっただろ? 「―――どうしたっ!?」 遠くからまた足音と声が聞こえる。 「また来なすったぞ……。」 「今度は気をつけろよ、涼権。」 「分かってるよ!」 ………… とりあえず数派に亘る敵を片付け、しばし休憩する俺たち。 幸い敵は様子を見ているのか一時流れが途切れたようだ。 「俺たちも一時様子見といこうぜ。」 「そうだな……さすがに消耗が激しい。」 ………… 数時間たった頃合だろうか。遠くから大声が聞こえた。 「――――――ウーー!」 「ん? 何だ?」 「――――――ユウーー!」 「どこかで聞いた声だな……。というかこの展開、前にもあったような……。」 「ユウ、何かお前のこと呼んでるみたいだぞ?」 「え?」 武も気づいたらしい。俺の隣ではユウが怪訝そうな顔をしている。 ッタッタッタッタッタ と、突如足音がして数人が先ほどユウが壁に開けた穴から姿を現し、一人の男が叫んだ。 「ユウッ! 急いでそいつから離れるんだ!」 「!? お、お前は……!?」 つづく |
あとがき お読みいただきありがとうございます。 なるべく他ゲームネタを抑えるのが今回の目的でした。 長々と続いておりますが、完結まで後少し時間がかかりそうです(^^; もうしばらくお付き合いいただければ幸いです。 それでは♪ |
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