注釈:この作品は、“Ever17〜the out of infinity〜Premium Edition シナリオ&ビジュアルガイド”の表紙の絵を元にして妄想……もとい執筆したものです。
そちらを見ていただければ、より武に感情移入しやすくなるような気もします。
以上、留意の上ご覧下さい。






ビーチサイド南国パラダイス
                              作:山猫

青い世界の只中に、俺はいる。
南の島の海水浴場……。
客は俺たち以外には、誰もしかいなかった。
俺・つぐみ・優・桑古木・ココ・ピピ……。
全部で5人と1匹だ。
俺は皆と少しはなれた場所で、砂浜に座り、広大な海原を眺めていた。
見渡す限り一面の海原。
8月の太陽が、きらきらとはねている。
頭上には、高く澄み切った青空。
まだ生まれたばかりの空は、今にもこぼれ落ちそうな程に瑞々しく艶めいていた。
俺の瞳に移ったのはそれだけだった。
遥か彼方に真っ直ぐ伸びた水平線が、海と空とを分けていた。
「のどかだなぁ……。」
ぽつりと、彼は呟く。
一羽のカモメが、緩やかな孤を描きながら風に流されていく。
風は潮の匂いをはらんでさやさやとそよいでいた。
「平和だよなぁ……。」
まるで、夢の中にでもいるようで……。
ポコン
「たっ!?」
頭に何かぶつかった。
硬い物ではない、何か、風船のような。
「な〜にぼーーーっとしてんのよぉ、倉成ぃ。若さが足りないぞぉ?」
優だ。
「いいだろ?別に。たまにはまったりと過ごしたい時もあるんだよ。」
そう言って俺は振り向いた。
そこには優とつぐみがいた。
優は右手でさっき俺に投げつけたらしいビーチボールを拾っているところだった。
左手にはつぐみが引っ張られてきていた。
当然のことながら二人とも水着姿だ。
……おお。
俺はそのあまりにまばゆい光景に心の中で感動のため息をもらしていた。
スレンダーなボディに、柄入りのピンクのビキニを身に付けた優は、健康美に満ち溢れていた。
自ら若鮎のようなぴちぴちとした肌、と自称するだけあり、その瑞々しい肌は8月の太陽でまぶしいばかりに煌いている。
……つぐみと比べると多少胸が慎ましやかだが、彼女の魅力を損なうような要因にはなっていなかった。
そしてつぐみだ。
「ねえ、優。これ水着ちょっと布の量が少ないんじゃあ……。」
「なあに言ってるの。これくらい普通だって。良いもの持ってるんだから、わざわざ隠すことなんてないでしょ?」
「い、いいものって……。」
つぐみは、黒のビキニを着ていた。
普段の服装が、肌の露出の殆ど無い、ボディラインの分かり難い服装なだけに、隠しているのが勿体無い程の白く美しい肌と想像以上にメリハリの利いた身体が、俺の脳髄を直撃した。
戸惑ったような表情も普段が無愛想なだけに新鮮な魅力をあたえていた。
おそらく普通の海水浴場だったならナンパの嵐に襲われる所だろう。
しかし今はこの海水浴場には俺たちしかいない。
そして今この感動的な光景を目の当たりにしているのは俺だけ。
そう、俺だけなのだーーーーっ!!

なあんて事を思っていると。
「あ、なあにじろじろいやらしい眼で見てんのよぉ。」
優が
「べ、別にいやらしい眼で見てなんか……。」
「まあ倉成も男だから、水着の美少女二人組に視線が釘付けになるのも分からないではないけどぉ。……デリカシーが無い男は嫌われるよぉ?」
「いや、だから……。」
「問答無用!てんちゅ〜!」
「あっ。」
ぼこんっ
つぐみのあげた声と同時に飛んできたビーチボールが俺の顔面を直撃した。
「こ、このぉ……。」
俺はころがったビーチボールを掴んで立ち上がった。
「あ、敵に武器を奪取された。それ、戦略的退却〜。」
「あ、ちょっと。」
優はつぐみの手を引いて逃げ出した。
「まてこら〜!」
あわてて追いかける俺。
「いや〜ん、犯される〜。」
「人聞きの悪いこというなっ!!」
そのまま俺たちは波打ち際に向かって走っていった。
……天国はどこにある?
空の上?おれの足元?
いや、違う。
天国は、今ここにあるのだ……。
……。
「……さん、……さん。」
「う〜ん、ビーチサイド南国パラダイス……。」
「……うさん、お父さんってば!」
「ん?」
俺は目をあけた。
「あ、お父さん。早く起きないと船が港についちゃうよ?」
「……船?。」
俺は寝ぼけた目で辺りを見回した。
部屋の中、ソファの上、そばに金髪の少年。
「……優とつぐみは?」
「え?お母さんと優なら外に……。」
窓から外を見ると、白衣を着た優とレミュールの着ぐるみを着たつぐみが何か話をしていた。
ちなみにもう夕方だ。
「……今、何月だっけ?」
「え?5月だけど……。」
8月、海水浴場、水着、ぱらだいす……。
5月、船の上、着ぐるみ、現実世界……。
「お父さん?」
そして身に覚えが無いことも無いわが息子ホクト。
認めたくない、が認めざるを得ないだろう。
「すぅーーーー……。」
俺は大きく息を吸い込んで魂の慟哭を言葉として吐き出した。

「……夢かっ!!」

END



後書き

えー、掲示板には時々書き込んでたんですが、SS投稿ははじめてになりますね。
どうも、山猫と申します。
本当はちょろっと書いて掲示板にでも書き込もうと思ってたんですが、思ったより長くなってしまったので悩んだ末、投稿させていただくことにしました。
一番上にも書いてある通りこのSSはEver17のシナリオ&ビジュアルブックの表紙から着想を得て書いたものです。
ですから武の抱いている感想はそのまんま私自身が抱いた感想とほぼ同一といって良いでしょう。
いいもの見させてもらいました(爆)
落ちがあれなのは、

1.つぐみは太陽光線の下にはいられない。
2.大体、体中傷だらけちゃうんかと。
3.よく見たら物語上重要な複線である太ももの傷がないじゃねーか!!

以上の理由があるので仕方なしに、という所です。
ああ、それとココと桑古木とピピはどこかそこら辺で遊んでる筈なんです。
空さんは絵の中にいないので諦めて下さい(というか出すと収拾が……(汗))。

それでは、また何か書けたら投稿したいと思います。
書きたいものは色々とあるんですけどね〜。


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