『THE・END・OF・INFINITY』   
作:メンチカツ様


ザザザァーーーーーー・・・・・・
俺は今、月浜にいる。
静かな場所で、色々考えたい事があった。
「・・・・・・なぜ記憶があるんだ?」
そう、俺には、経験した事の無いはずの記憶があった。
一つ目は、優夏といづみさんに取り合われる物だった。
最後にはいづみさんに「逝きましょう!」などといわれていた。
あえていうなら、優夏が主人公というべき物だ。
2つ目は、くるみだった。
なぜかくるみは呪文を扱い、世界を滅ぼした。
・・・・・なんてくだらないんだろう。
3つ目は、沙紀。
沙紀と二人で食事をしている途中で、遙達が乱入し、最後にはいづみさんがなにか強力な呪文を扱っていた。
そして4つ目。遙が狂い、億彦に惨い仕打ちをし、最後にはなぜか笑いながらみんなで食事。もちろんそこには億彦の姿もあった。
それもすべて同じ日の記憶だという事だ。
ありえない記憶。
一体、これらの記憶にどんなつながりがあるのだろう?
そして、一体どんな秘密があるのだろう?
「まーーこーーとぉーーーーー!!」
・・・・・優夏だ。
一体何の用だろう?
「・・・・なんだ?優夏、なんか用か?」
「なんだとはなによぉ〜!しっつれいねぇ〜」
優夏が怒って見せる。
ふと、ある疑問がよぎる。
・・・・・この優夏は本物だろうか・・・
・・・・ばかばかしい。すぐにその疑問を打ち消す。
「悪い悪い、・・・・で、本当に、なんか用でもあるのか?」
「うん、いづみさんが食事持って来てくれたから、みんなで食べようってことなんだけど?」
・・・・・いづみさんの料理。いいねぇ。
この暗澹とした気持ちを振り払えば新しい考えも浮かぶかもしれない。
「よし!んじゃぁ、ロッジへ行くか!」
「うん♪」
こうして俺達はロッジへと二人で向かった。
ロッジに着くと、良い匂いが辺りを漂っている。
ガチャッ・・・・パタン
中に入る。
・・・・・・変だ。
だが、もう驚かない。驚いてやるもんか!
まず、億彦がサンドウィッチのきぐるみを着ている。
しかもそのカッコでワインの入ったグラスなんぞを右手で転がしている。
いづみさんは星型の何かのきぐるみを着ている。
・・・・・・・・星の砂?
くるみは・・・・・蟹か。
普通に可愛いじゃないか。
遙は・・・・はっはっは。やっぱりフナ虫か。
(まったく、みんな何やってるんだか・・・・)
「なぁ、優夏」
「ん?なに?」
「なにっておまえ、みんなの姿・・・・・!?」
笑いながら優夏を振り向くと、さっきまで普通だったはずの、俺と一緒にいたはずの優夏まできぐるみを着ていた。
「・・・・・その姿は・・・酒?・・・・じゃなくて!」
「一体どうしたってのよぉ〜?」
日本酒の瓶のきぐるみを着た優夏が首を傾げながら聞いてくる。
・・・・・可愛くねぇ・・・
普通は可愛いはずなのになぁ・・・・・
・・・・・・・ん?
おかしい。何かが変だ。
別に億彦達があんな格好をしてるのには全然かまわない。
ただたんに、みんなで打ち合わせをして、俺がいない間にきぐるみを着て待ってればいいだけだ。
だが、さっきまで一緒にいた優夏までもがなぜきぐるみを着ている!?
「まことぉ〜?」
このとき、俺の中の何かが壊れた。
ありえない4つの記憶。
そして今体験した、不可思議な現象。
そして、俺が出した結論。
「ちょっと待っててくれ」
そう言い残し、俺は自分の部屋に入った。
そして、部屋にある物で、出来るだけ馬鹿馬鹿しい格好をした。
俺が出した結論。
そう、『踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆ならおどらにゃ損損』。
別に俺があほだとは思っていないが。
そして、部屋を出る。
「イェ〜イ!」
しかし、みんなはいつもの様に、普通の私服姿だった。
「??????」
訳が分からない。
それに、俺を騙そうとしたのなら、ここで大笑いになるはずだろう。
だが、誰一人として笑ってはいない。むしろ暗い感じだ。
「億彦くん・・・もう・・・いいわ・・・・」
ふいにいづみさんがそんなことを言う。
「わかりました」
そういうと、億彦はテレビのスィッチを押した。
・・・・・このテレビはスィッチをひねるタイプのはず・・・・・
そう思っていると、不意に景色ががらりと変る。
そして現れたのは、スタジオのようにとても広い空間。
辺りは光に満ちている。
「・・・・これはいったい?」
「・・・・誠君、落ちついて聞いてね・・・・」
「・・・・・え?」
「・・・・・・これは、誠君の体験した記憶は、全て実験だったの。」
「・・・・・・・じっ・・・・けん・・・・?」
いづみさんがなにか、おかしなことを言っている。
「どういう・・・・ことですか?」
「・・・・・キュレイ・シンドローム・・・・」
「・・・・え?」
「キュレイ・シンドロームには、3つの特徴があると前に誠君に話したわよね?」
「はい・・・・」
「2つ目の特徴・・・覚えてる?」
「・・・・確か・・・・妄想の感染・・・・」
「そう、妄想の感染・・・・」
いづみさんは、深く息を吐くと、先を続けた。
「そして、キュレイ・シンドロームの3つ目の特徴・・・・・」
「妄想が・・・・・現実に・・・・・・」
わからない。それと、このへんな場所に、どんな関係が有るというのだろうか?
「誠君が体験したあの記憶は・・・・・全てここで作り出された、映像なのよ・・・・」
「・・・・・・・・・・え?」
いづみさんはいま、なんていった?
あの記憶全てが映像?そんな馬鹿な!!
不意に、辺りの景色が変る。
壁という壁が精密な機械で埋まっていて、所々で光が明滅している。
「・・・・な、なんだ!?ここは!?」
「・・・・どうしたの?誠君」
「どうしたのって・・・・・部屋が変ってるじゃないですか!」
「・・・・ええ・・・・・それが・・・どうかしたの?」
・・・・・・いったいなんだってんだ?
辺りの景色が急に変ったんだぞ?それを「どうかしたの?」ですませるのか!?
(・・・・・と・・・・ん・・・)
「・・・ん?誰か今なにか言ったような?」
(・・・・こと・・・ん!)
「誰か何か・・・・・!?」
 
「誠君!しっかりして!」
「・・・・・いづみ・・・・さん?」
「・・・・・誠君!?・・・・・良かった・・・・」
いづみさんが抱きついてくる。
「い、いづみさん!?みんなが見てるよ!?」
「・・・・みんな?」
いづみさんが不思議そうな顔をする。
「だから、優夏とか億彦・・・・・・!?」
辺りを振り返って、俺は気付いた。
みんながいない。
っていうか、ここはどこだ!?
「い、いづみさん・・・・ここは一体?」
「・・・え?ここは大学の研究室よ?」
大学の研究室!?・・・・一体どういうことなんだ!?
まったく訳が分からない。
「誠君・・・・よかったら、いままで何を見ていたのか、話してくれない?」
「・・・・え、ええ。それは別に構いませんけど・・・・」
そして俺は、いづみさんに全部を話した。
ありえない記憶が有る事。
ロッジに戻ったらみんなが変な格好だった事。
そしてそのあと、すべては実験だと告げられた事・・・・・・。
「・・・・そう・・・そうだったの・・・・・」
「はい、だから、一体何がなにやら・・・・」
「・・・・・ごめんなさい、誠君」
「え?なんでいづみさんが謝るのさ?」
「誠君・・・・実験の途中で意識を失ったのよ・・・・」
・・・・・え?実験?まさか・・・・・
「いづみさん、冗談キツイですよ?」
「・・・・・本当に覚えて無いのね・・・・」
また「実験」か?勘弁してくれよ・・・・
そうおもっていると・・・・
「これは私の推測だけど・・・・それでもいいかしら?」
「・・・・ええ、何も分からないよりはましです」
「誠君が言ってた、ありえない記憶・・・・あれは私達の実験だったのよ」
「・・・・・・え?」
「私達は、みんなの合意のもとで、実験をする事になったの。・・・・もちろん誠君の同意も得て・・・・ね」
・・・・・・俺も同意していた?
「キュレイ・シンドロームの第2の特徴までの実験だったはずなの」
キュレイの第2の特徴・・・・妄想の感染・・・・・・
「かといって、現実に魔法を使ったりは出来ないし・・・・・そのため、仮想意識におけるシミュレートでの実験方法を選んだの」
「・・・・仮想意識におけるシミュレート?」
「そうね・・・・みんなの意識を繋いで、コンピューターの中で物語を作った・・・・そう思ってくれれば良いわ」
「・・・・・・分かりました」
「でも、それにはコンピューターを管理してくれる人が必要になる。でも、私達は全員シミュレートに参加するから管理出来ない。そこでこの大学の中で私達に良くしてくださっているザキ教授に管理をお願いしたの」
「・・・・・ザキ教授?」
「ザキ教授は、心理学やコンピューターにとても詳しい方で・・・・そこらへんの話しは置いておくわね」
「・・・・はい」
「そして、コンピューターの中で、私達はあの物語を作った・・・・」
「ありえない記憶・・・・の事ですか?」
「ええ・・・・そうよ」
・・・・なんてことだ。すべてはコンピューターの中の出来事だったって言うのか!?
「でも結局、誠君は感染しなかった・・・・していないとおもっていた・・・・・だから、実験を中止にすることにしたの」
「・・・・でも!」
「そう、誠君は・・・・誠君の意識は戻らなかった。誠君は、その時すでにキュレイ・シンドロームの第3の特徴に目覚めていたのよ」
「!?」
妄想の・・・・・現実化・・・・・
まさか・・・そんな・・・・・
「そう考えると、すべて納得が良くのよ。まず、シミュレートといっても、真剣にやらなくては効果がなかったの。あれは妄想が常識を上回って初めて発症するものだったから。だから私達は真剣に演じていた。その結果、私達の中で妄想が感染していった」
いづみさんの顔はいたって真剣だ。
冗談なんかでは無いのだろう。
「そして、私達の物語はどんどんエスカレートしていった。最初はログハウスの中で優夏ちゃんと私がただ言い争っているだけだったのに、くるみが魔法を使うようになり、沙紀ちゃんも格闘術を使ったり、そしてあの遙ちゃんまでもが狂ったようになってしまったり」
確かにあの壊れかたは尋常ではなかった。あの時すでにみんな感染していたのだろう・・・・。
「そして、誠君にも感染していた・・・・・。みんなほど壊れてはいなかったようだけど。そこでザキ教授はコンピューターからみんなを戻したのよ」
・・・・・ 俺が感染していた?
「だけど、その時何らかのショックがあったのか、誠君の中でキュレイ・シンドロームの第3の特徴が目覚めた・・・・・・」
「!?」
「たぶん、あまりに過激な展開で、訳が分からなくなったのね。誠君の頭は考える事を必要とした。そして、誠君の妄想が始まった」
・・・・・・俺の妄想だって!?
「いづみさん!俺は!」
「誠君、お願いだから、今は私の話しを聞いて」
「・・・・・分かりました」
俺はしぶしぶうなずいた。
「まず、最初の月浜でのこと。あれは、誰も居ないところで一人きりで考えたかった。だけど、一人で考えるにはあまりにも問題が多すぎて、他の誰かに助けを求めた。そして、優夏ちゃんが登場した。」
・・・・・確かに、そうかも知れない。
「でも、そのときすでに実験という事を忘れてしまっていた誠君は、これが現実なのかどうかを確かめたくなった。そして、みんなを登場させる為に、ロッジで食事という理由を与えて、みんなを登場させた」
「・・・・でも、沙紀は?沙紀がいなかったはずだけど・・・・」
「沙紀ちゃんは、もともと私達の実験には関係無かったでしょう?」
言われて見ればそうだ。
「そして、みんなを登場させて、みんなの反応を確かめようとした。だけど、ありえない記憶をもっていた誠君は、これが現実ではないことを心のどこかで祈ってた。現実だと認めると、あの記憶の中で狂っていたみんなを認める事になるから」
・・・・・・・・俺は何も言えなかった。
「誠君の期待通りみんなはおかしな格好をしていた。・・・・そこで、気付いたのよ。自分が実験中だったという事に。だから今度は、そのお膳立てをしなくてはいけなかった」
・・・・・・そうか、そうだったのか。
「誠君は、みんなと同じように壊れた振りをして実験を成功させたように見せかけたの。それをきっかけとして、誠君は私達に、実験だという事を誠君に告げさせ、妄想を終了させようとした」
「・・・・・あれ?じゃぁ、いづみさんはなぜここに?まさかまだ妄想は!!」
「誠君、落ちついて!」
「でも!」
「これは私の妄想の中なのよ!」
・・・・・・・なんだって!?
「帰ってこない誠君を心配した私は、ザキ教授にお願いして、もう一度コンピューターの中に入ったの。そして、誠君の作った妄想を私の妄想で塗り変えたのよ」
「・・・・・結局、まだ妄想の中なんですね?」
「・・・・ええ、そうよ・・・・」
・・・・俺は一体どうすれば良いんだ!?どうすれば元の世界に戻れるんだ!?
「・・・・・誠君?前に私が言ったこと覚えてる?」
「・・・・・・前に言った事?」
「・・・・・レグルスは今も、輝いている」
「!!」
「誠君の中で、今の妄想が良いものなのか、悪いものなのかは私には分からないわ。だけど、こんな形でも、誠君と二人きりになれて私は嬉しかった・・・・」
「・・・・いづみさん!?その姿は!!」
いずみさんの姿が薄くなっていく。
「誠君、少しの間だったけど、誠君と心を共有できて嬉しかった・・・・ありがとう・・・」
「いづみさん!!」
「・・・・・忘れないでね・・・・・レグルスは今も、輝き続けている・・・・」
「まってくれ!!いづみさん!!!」
・・・・・そして、いづみさんの姿は消えた。
 
−−−−−−2年後−−−−−−
 
あれから2年が経った。
俺は残り少ないキャンパスライフを優夏達と共に過ごしている。
いづみさんの姿はなかった。
それどころか、優夏達はいづみさんの存在すら忘れているようだ。
これも俺の妄想の所為なのだろうか?
・・・・いや、俺はもうその事に付いては考えない事にしたんだ。
いづみさんは、俺の中では、確かに存在していたから。
・・・・・・レグルスは今も輝いている・・・・・・
「そうだったよな・・・・いづみさん・・・・・」
「まことぉ〜?またいづみさん?一体誰なのよ?その人ぉ〜」
「ん?優夏か、なんでもないよ」
「あやしい・・・・ずぇったいに怪しい!」
「はっはっは!勝手にあやしんでろ!」
「あ!まちなさいよぉ!まことってばぁ!」
・・・・・いづみさん、俺は今の現実を楽しんでるよ・・・・・・
 
 
終わり







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