『インフィニ肝試し』   
第二話『思わぬ真実・・・・そして生存者』
作:メンチカツ様


『うぎゃああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・』
誠の悲鳴が響き渡る。
「・・・くすくすくす!お兄ちゃんびびってるねぇ!」
くるみが笑いながら言う。
くるみどころか、優夏も沙紀も、遙までもが笑っている。
「まったく、石原もだらしないなぁ」
億彦が髪をかきあげながら笑う。
「だいたいこれは全部コンピューターの幻なのにねぇ」
沙紀が腹を抱えて笑っている。
「まぁ、それだけ家の技術力がリアルってことさ」
億彦がまた髪をかきあげている。これで18回目だろうか?
「まぁ、私も知ってても怖いだろうからあんまり誠の事笑えないけどねぇ」
優夏がちょっと申し訳無さそうに言う。
しかし。
「え?お兄ちゃんには言ってないよ?」
くるみがそんなことを言う。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
皆の笑い声がぴたりと止む。
「・・・・・そ、それは怖いかも知れないなぁ・・・」
億彦が弱気な発言をしたその時、
《お、億彦様ーーーー!!》
遠くの方から一代の車から身を乗り出して、叫ぶ男がいた。
「どうした?杉本」
億彦が急に真剣な表情になってその男に問いかけた。
「は、はい、ただいまコンピューターが到着しましたので、御報告にあがりました」
「・・・・・は?」
億彦が間抜け顔になる。
「いえ、ですからコンピューターが到着したのですが、どこに設置すれば良いのかと
思いまして・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
またしても沈黙が降りる。
「・・・・じゃ、じゃぁこれはいったい・・・・」
億彦が墓地の方を振り向く。
「・・・・・・・これは!!」
急に杉本が叫んだ。
「なんだ!?なにをしってるんだ!!」
億彦の語調も荒くなる。
「は、億彦様に心配をかけまいと黙っていたのですが、飯田の支配下の生体研究所の
一つが反乱を起こす為に生体兵器を作っていたのが発覚し、ただちにこれを鎮圧した
のですが、死体はゾンビとなってさまよっていたので研究所を封鎖したのです」
「それがここというわけか?」
「は、まさにその通りで・・・・」
「だがここは墓地と聞いたぞ!?」
「は、墓地と言っておけば気味悪がって誰も近づかないかと思ったのですが・・・
・」
皆の顔が青くなっていた。
ゾンビなんてゲームの世界の話しだ。そう思っていたからだろう。
そのゾンビがうろうろしている墓地へ誠を一人で行かせてしまったのだ。それも無理
矢理に。
「・・・ど、どうしよう!!」
まず最初に慌てたのは優夏だった。
「お兄ちゃん・・・・・・どうしよう・・・・お姉ちゃん、どうしよう!?」
くるみが半泣きで姉であるいづみに泣き付く。
それはそうだろう。
誠だけに何も教えずに墓地へ突き飛ばしてしまったのだ。
その罪悪感はみんなよりもずっと大きいはずだ。
しかし、
「・・・・・いいえ、大丈夫よくるみ」
「・・・・・・え?」
意外にもいづみは怒っていなかった。
「だって、誠君には何も話してなかったんでしょ?」
「・・・・・・うん・・・」
「ならきっと大丈夫。誠君の心に隙は無いはず。まだ希望はあるわ!!」
そう。
くるみは誠だけには何も言わなかったのだ。
もしくるみから真実を聞かされていたら、ゾンビが出た所で「所詮幻だろう」とたか
をくくって、殺されてしまうだろう。
だが、誠は何も伝えられていなかったのだ。
「で、でもくるみちゃんが誠に渡した拳銃は!?」
優夏が焦りながら問う。
「あ、あれはそこの草叢で拾ったの。やけに重かったけどね」
ということは本物だろう。
つまり誠は身を護る武器を持っているということだ。
皆の心に希望がみえはじめた。
「じゃぁ早速助けに行こう!!」
「まってくれ!」
皆の掛声に待ったをかけたのは億彦だった。
「なによ億彦君!まさか誠を見殺しにする気!?」
みんながつめよる。
「みんなこそ手ぶらでゾンビとどうやって戦うつもりだい?」
「・・・・・あ!」
そう。みんな手ぶらだったのだ。そのことに今頃気が付いたのだ。
「・・・・・でも武器なんて・・・」
「杉本、ただちに武器製造工場に連絡して武器の手配を」
「は!・・・・しかし、わたしてくれるのでしょうか?」
「大丈夫だ。憂怒工場長に僕の名前を言えば渡してくれるはずだ」
「わかりました!」
一通り話し終えると、杉本は走り去って行った。
「さぁ、これでだいじょう・・・・・ぶ?」
皆の視線が億彦に集中していた。
「・・・・武器製造工場って・・・・なに?」
皆の疑わしげな視線が億彦を貫く。
「ああ、そのことかい?飯田財閥は自衛隊の武器も製造しているんだよ」
髪をかき上げつつ自慢げに言う億彦。
みんなの視線は相変わらずだったが、誠を救う為ということで一応納得したようであ
る。
そして3時間後、武器を積んだヘリコプターが億彦達の下に到着した・・・・・・。

俺はあれから数体のゾンビ犬を倒し、入り口から離れた廃屋へと逃げ込んでいた。
「・・・・・・これって・・・・夢じゃぁないよなぁ・・・・」
そういいながら自分の頬をつねってみる。
「いてぇ!!」
ちょっと強くつねりすぎた。
「ちくしょう!こんな所で死んでたまるか!」
一人文句を言い続けていると、
ゴト・・・・・・
物音がした。
俺以外誰も居ないはずだ。
つまり・・・・・・敵。
右手に拳銃の感触を確かめながら、そっと隣の部屋を覗き込んでみる。
妖しい人影がある。
「誰だ!!」
拳銃を構え、人影に問う。
返答なんて期待はしていなかった。
こっちに襲いかかって来たら即撃つつもりだった。
しかし、
「キャァ!」
短い悲鳴が上がった。女性の声だった。
「・・・・・まさか、君は人間なのか?」
「あ、あ、あ・・・・・・・」
怯えているらしい。
そう言えば俺は拳銃を突きつけたままだった。
「あ、ごめん!俺は君に危害を加えるつもりはないよ」
そういって拳銃を下ろす。
「俺の名前は石原誠。誠って呼んでくれて良いよ」
「・・・・・わ、私は明鈴・・・・魅加佐明鈴よ・・・」
「みかさあかり・・・・かぁ。可愛い名前ですね」
とりあえず自己紹介。
「ところで・・・魅加佐さんは・・・・」
「明鈴でいいですよ」
「えと、・・・・じゃぁ明鈴さんはなにをしていたんですか?」
「私はここの研究所の所員なの。冷凍睡眠が解けて出て見たら、誰も居なくて・・・
・」
「研究所?・・・・そうだったんですかぁ・・・・・」
まさかここが研究所だったとは・・・・。
ちなみに冷凍睡眠は、結構前にどこかの国が完成させたという。当時は大騒ぎになっ
た物だ。
「そういう誠君は?」
「ああ、仲間と肝試しに来たんですけど、・・・・・なんか妙なことになってて・・
・・・・」
「・・・・・・妙な事?」
「はい・・・・笑わないでくださいね?」
「ええ」
「実は・・・・ゾンビが出たんですよ・・・・・」
俺の答えに固まる彼女。
そりゃそうだよなぁ・・・・・とうとつすぎるもんなぁ・・・・・
しかし、彼女の返答は意外なものだった。
「・・・・そう・・・・遅かったのね・・・・」
「・・・・・・え?」
「私達はある方の依頼で生体兵器を作っていたの。研究の途中で毒素が発生したの。
毒素は液体になって、触った人に感染していった。そしてその毒素を処理使用とした
時に・・・・・研究がばれてしまったの」
・・・・・・毒素?いったいなんなんだ?
「そして私達は鎮圧された。鎮圧の最に使われた爆弾が毒素を振りまき、みんなの身
体を侵食していった。幸い私は所長に助けられ、冷凍睡眠装置に入れたんだけど・・
・・他のみんなは・・・・・・」
そういうと彼女はうなだれた。
「あの・・・・・毒素って?」
「ええ、触った人間に感染し、感染してから10分後に身体を侵食し始めるの。侵食
が進むと精神は破壊され、そして驚異的な生命力を得るの」
そうか、だからあの犬も頭が無くても生きていたんだ。
「助ける方法は無いんですか?」
「ないわ。強いていうなら・・・・死」
・・・・・・俺は何も言え無かった。
唯一死によってしか救われないなんて・・・・・
「お願い!私と一緒に彼等を・・・・みんなを救ってあげて!!」
みんなを救う?それって・・・・・・
「みんなを殺すって事か!?俺にはそんなことできない!!」
「みんなをあのままにしておくの!?あの姿で居る限りずっと苦しみ続けるのよ!?
あなたはそれでいいの!?」
永遠の苦しみ。逃れられない地獄。
自業自得と言ってしまえばそれまでだろう。
彼等はしてはいけない研究をしていたのだから。
・・・・・だけど・・・・
「・・・・分かった。一緒に行こう」
「・・・!!ありがとう!!」
「一つ聞いてもいいかな?」
「・・・・・・なに?」
「武器はどこにあるんですか?」
彼女は何も持っていない。
これではただ殺されるだけだ。
「ああ、外で木製のボックスをみなかった?あれの中に色々入ってるから、ボックス
を壊すといいわ」
「・・・・・・・・・・やっぱり」
とほほでやんすとでも言いたくなる心境だった。
とにかく、俺は新しい仲間を見つける事が出来た。

ドゴオオオオォォォォンッ!!!

その時、俺が進んで来た方向・・・・入り口の方から大きな爆発音が聞こえて来た・
・・・・・・・

第二話  終了










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