『インフィニ肝試し』   
第4話『恐怖』
作:メンチカツ様


「あ、そうだ、明鈴さん」
そう言って顔を上げた俺の目に映ったのは、バズーカ砲の爆発に吹き飛ばされたゾン
ビだった。
立ち上がってこっちへと歩いて来ている。
「危ない!」
俺は明鈴さんの腕を引っ張り、ゾンビから遠ざける。
「そ、そういえば、2体いたのよね・・・」
汗ジトになりながら明鈴さんが呟く。
まだまだゾンビの恐怖は拭えないが、ちゃんと動きを見ていれば対応は出来る。
俺はバズーカ砲の爆発により燃え上がる木片をゾンビの足元に放った。
ゾンビはそのまま足元の炎に気付かないかのように歩いてきて、そのまま燃え上がっ
た。
そして・・・・・・・そのまま、身体をその炎に焦がし、嫌な臭いを放ちながらも
ゆっくりと歩いてくる。
(冗談じゃない!映画じゃないんだぞ!?)
俺はそのゾンビから逃げるべく身を翻(ひるがえ)す。
しかし、ゾンビは俺達の下に辿り着くこと無く崩れ落ちた。
「・・・・・・ふぅ〜・・・」
「何とか助かったわねぇ・・・」
「ええ、ビビリましたよ・・・・」
「さ、先に行きましょう」
「そうですね」
そして俺達は廃屋を後に・・・・・
「・・・・ってちょっとまった!」
「な、なによ急に大声出して!」
「あ、いえ、先にってどこいくんですか?」
「・・・・・説明してなかったっけ?」
「・・・・・なにを?」
「どこに向かってるのか」
「・・・・・してません」
まさかとは思うが・・・・・・明鈴さんって天然?
「・・・・で、どこに向かってるんですか?」
「えぇ、研究所よ」
「研究所?」
「そう、この全ての発端となった研究所の本館地下工場。そこにいけば・・・・全て
が終わるはず」
研究所の地下工場?地下まであるのか?大体本館って・・・・研究所は一つじゃない
のか!?
「あの・・・・研究所は一つではないんですか?」
「うん?・・・あぁ、そうよ。研究所は全部で5つの棟からなっているの」
「・・・・・5つもあるんですか?」
「そう。それぞれ目的別の生体研究をしていたから・・・・」
目的別?ということは・・・・・はは、まさかそれぞれの棟にボスみたいのがいる訳
じゃないよなぁ・・・・
「・・・・で、その本館の地下に何があるんですか?」
「それは・・・・・・まだ言えないわ」
「なぜですか!?」
「言ったらきっと・・・・あなたは私を軽蔑するわ」
「・・・・・・・・・」
おれは何も言え無かった。何も聞けなかった。
これ以上の恐怖を、今聞く気にはなれなかった。
それになによりも、彼女を嫌いたくは無かった。
「・・・・さぁて!そろそろ行きましょうか!」
「・・・・・え?」
「早く行きましょうよ!」
「・・・・・いいの?あなたは・・・・誠君はそれでいいの?」
「なんの話しですか?」
「なんの話しって・・・・私は・・・・!!」
「俺は早くここを抜け出して、優夏達の・・・俺の仲間の元へ戻る。明鈴さんは全て
を終わらせる。それでいいじゃないですか。・・・・いや、それでいいんです。俺に
とっては」
「・・・・・誠君・・・・ありがとう」
「さぁ!前へ進みましょう!」
「そうね!」
そして今度こそ俺達は廃屋を後にし、第一研究所へと向けて進み始めた・・・・・

一方、入り口まで戻ってきた優夏達は、二つあるうちのもう一方の道へと進んでい
た。
「・・・・・・・なんにもないねぇ」
億彦が呟く。
それが癇に障ったのか、
「だ〜れかさんが入り口爆破するからね〜!」
と、くるみの怒鳴り声が響く。
億彦はがっくりとうなだれる。
「くるみ!いい加減にしなさい!」
とうとういづみさんが怒った。いつまでも根に持つくるみをぴしゃりと叱りつける。
優夏と遙はそれを困ったように見つめている。
※このSSでは遙は「心が無いから・・・・」なんて言いませんのであしからず!
その時、その様子を少しはなれた場所で見ていた沙紀が悲鳴をあげた!
「キャーーーーーーー!!」
皆が一斉に振り返る。
まず目に映ったのは、尻餅をついた沙紀の姿だった。
「どうしたの!?沙紀!!」
「どうしたんだ!沙紀ちゃん!!」
口々に沙紀の名を呼ぶ。
だが、沙紀はその声に反応しなかった。
皆は、沙紀の視線を追った。
そこには・・・・・
『キャーーーーーーーーーーーー!!』
ゾンビがいた。
やはり誠達の前に現れたのと同じように、その動きは遅い。
尻餅をついた沙紀がずりずりと後ろに下がるが、それと同じ速さなのだから、ゾンビ
の動きの遅さはみんなにも伝わるだろう。
だが、その動きの遅さが、みんなの恐怖を更に煽っているのもたしかだ。
さっきまでいきり立っていたくるみもさすがに声が出ない。
しかし、みんなを誘った罰の悪さもあるのだろう。
石ころを拾うと、ゾンビに向かって投げつけた。
「沙紀さんから離れろーーー!!」
ヒュンッ!ドガッ!プチュ!
石が風を切る音の後に、ぶつかる音がした。命中したのだ。だが、そのあとに、何か
が潰れるような音がした。
そう、くるみが投げた石ころは、腐った目に当たり、潰してしまったのだ。
生身の人間が相手なら、目も見えなくなり、激しい苦痛も与えて一石二鳥なものだ
が、まさかゾンビが腐った目で周りを見ているとは思えない。
目の中の液体をあたりに撒き散らし、みんなの恐怖を煽るだけの結果に終わった。
しかもその液体が沙紀に振りかかったから立ちが悪い。
お嬢様育ちで、綺麗好きな沙紀だ。
そんな物を浴びて正気でいられる訳が無い。
「%@¥○*$#!!!」
意味不明な叫び声をあげ、一心不乱に走り出してしまった。
「沙紀ーーー!!だめぇーーーーー!!」
「沙紀ちゃん!?」
「沙紀さーーーーーん!!」
みんなが口々に叫ぶが、もちろん沙紀の耳には届かず、そのまま姿は見えなくなって
しまった。
だが、あまり沙紀の心配をする余裕は無かった。
ゾンビが迫ってくる。
「・・・・・っくっ!!」
億彦は小さく唸ると、手に持っていたショットガンを構え、発砲した。
ズダァァァァァァンッ!!
中に入っていた弾は散弾だったらしく、十数個の弾がゾンビにぶち込まれる。
ゾンビはその一発で倒れ、動かなくなった。
「・・・・はぁはぁはぁ、はぁ〜・・・・」
億彦が荒い息を吐く。
いくらクレー射撃の経験があるとはいえ、さすがにこの命をかけた緊張の中で、しか
もゾンビとはいえ人間を撃ってしまった事に億彦の心をそこ知れぬ恐怖が襲いかかっ
ていた。
「う、撃ってしまった・・・・」
「お、億彦君?」
優夏が呼びかける。
「ぼ、僕は人を撃ってしまった!!」
「違うわ!億彦君、落ちついて!あれは人間じゃないわ!それに私達を守ってくれた
んでしょ!?」
「・・・で、でも!!」
なおも反論しようとする億彦に遙が近づく。
「・・・億彦・・・・落ちついて・・・」
「・・・・・遙・・・ちゃん?」
「・・・・・ありがとう・・・・守ってくれて・・・・」
意外と言えば意外な遙の反応をみんなが見守る中、億彦は次第に落ち着きを取り戻し
ていった。
「・・・・もう、大丈夫だよ、遙ちゃん・・・・」
「・・・・・・うん・・・」
みんなもほっとする。
目の前の危険を退けた皆の心に芽生えたのは、一人で走って行ってしまった沙紀の心
配だった。
ふと、優夏が夜空を見上げる。
夜空を見上げた優夏の表情には不安が張ついていた。
「・・・・・・・沙紀・・・」
月に照らされたこの研究所に、優夏の心配そうな声が響いていた・・・・・・・・

第4話 終了 次回へ続く!








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