『インフィニ肝試し』 |
第5話『地下』 |
作:メンチカツ様 |
「明鈴さん・・・・・この道で合ってるんですか?」 第一研究所へと向かって歩いていた俺達。 だが、長い間放置されていたようで、辺りには腰ぐらいまである草が生い茂り、道などほとんど分からない。 ちゃんとした道だったのは廃屋辺りまでだろう。 明鈴さんの長い髪が風に靡く(なびく)。夜の闇のなか月明かりに照らされた明鈴さんの瞳が輝いていた。 その瞳を見ていると吸い込まれそうになり、俺は明鈴さんに話しかけた。 「明鈴さん、・・・・鎮圧されたのって、どのくらい前の事なんですか?そうとう放置されていたような感じですけど・・・・」 「え〜っと・・・・約10年くらい前かしら・・・・・」 「10年!?」 クローンが認められるずっと前から研究がされていたのか? 「それって、クローンが社会に認められるずっと前ですよ!?」 「誠君・・・・・一般の社会に発表されるのは、ホンの一部なのよ。発表するにはまだ早い研究や、発表されるとまずい研究はもっとたくさんあるわ。そして、その中には私達のような闇に携わる研究もあるのよ・・・・・」 「闇に携わる・・・・・研究・・・」 生体研究。バイオテクノロジーと呼ばれるもの。それは一般に、いまだ解明されきっていない人間の身体の研究。DNAプログラムや、老化の防止・若返りなど、何らかの形で世界に貢献出来る研究と思われている。 だが・・・・・この研究所のように、遺伝情報の操作・交換、投薬、身体のパーツの交換・融合・増築、果ては人体と武器の融合など、さまざまな方法で生体兵器を生み出す研究をしているものもある。 大抵、こういった研究所のほうがその技術は高いものだ。 そうして・・・・闇に生きる化け物が誕生する。 「明鈴さん達はなぜそんな研究を・・・・・」 ガラガラガラーーーーッ!! 「うわぁ!?」 「キャァ!」 明鈴さんの話しを聞こうとしたとき、急に足場が崩れた。 ドサッ!! 余りに急な出来事で、受身を取ることができなかった。 「・・・・ぃってー・・・明鈴さん、大丈夫ですか?」 「えぇ、なんとか大丈夫よ・・・・」 よかった。明鈴さんも無事のようだ。 「ふぅ・・・・?・・・・・ここは・・・・」 見回してみると、ここは部屋のようだった。 まさか、もう地下にきてしまったとか!? 「明鈴さん、ここは何の部屋なんですか?」 「・・・・・・・知らないわ・・・」 「・・・・え?・・・・明鈴さんって・・・・もしかしてただの研究員?」 「いえ、一応第3研究所の総合研究主任だったけど・・・・・」 「・・・・・ひょっとして偉い人?」 「・・・まぁ、一応・・・・」 そういって明鈴さんは照れながら俯いた。 「・・・えっと・・・・この部屋でも調べましょうか」 「・・・え、ええ。そうね」 そして俺達は部屋を調べ始めた。 「ん?なんだ?これ」 変な物を見つけた。 まるでゲームのように、この埃の溜まった部屋で机の上に真新しい小さな瓶が置いてあった。 「・・・・・・まさか、体力回復とか?はは、そんなまさかな」 と、いいつつも、俺はその瓶をポケットにしまった。 一方、その頃沙紀は・・・・・・ 「なによぉ・・・・なんであたしがこんな目にあわなくちゃいけないのよぉ・・・・ ヒック・・・」 一人どこかも分からない場所を歩いていた。 「この液体も落ちないし・・・・もういやよ・・・・・」 うっそうと生い茂る草。 その草は膝辺りまであり、道は全く分からない。 辺りは静寂と闇に包まれ、沙紀の孤独と恐怖を煽る。 「?」 沙紀の顔が何かに気がつく。 「・・・・!?」 沙紀の顔に恐怖が再び張りつく。 「・・・やだ・・・なにこれ!?・・・イタッ!」 沙紀が顔をまさぐっている。 「沁みる・・・痛い・・・・・もう、なんなのよぉ!!」 沙紀がその場でよろめく。 と、その時!! ガラガラガラッ!! なにかを踏んだかと思うと、目の前に地下への穴が現れた。 「・・・・な、なによ・・・今の音は・・・」 沙紀は穴に気付いていなかった。 なにしろこの暗さで、この草である。 自分の足元を見るのが精一杯であろう。 音は下の方から聞こえて来た。丁度、地面の上辺りから。 沙紀はよく目を凝らし、屈みこむ。 そして、 沙紀は見てしまった。 視線が下がった為に、視界に入ってしまったのだ。 沙紀の足元にある物を。 人骨。 「・・・・・・!!」 驚いた沙紀に、一匹の虫が飛んだ。 それは小さな虫だった。 だが、沙紀は突如として現れたそれを虫だと判断できず、慌てふためいた。 そして・・・・・足を踏み外した。地下へと続く穴だ。 「キャーーーーーーーーーーー!!」 身体のそこかしこを壁にぶつけ、沙紀は地下へと落ちていった。 ズシャァッ!! 「・・・・・・・うぅ!?」 着地の際、どこかに頭をぶつけたらしい。 そして沙紀は、気を失った・・・・・・・・ 「沙紀ーーーーー!」 「沙紀ちゃーーーーーーん!」 優夏達の声が夜の闇に響く。 「いないねぇ・・・・・」 くるみがぼそっと呟く。 「沙紀ィ・・・・どこいったのぉ?」 沙紀を探しながら奥へ奥へと歩いて行く優夏達。 混乱している者の向かう場所など検討もつかないが、沙紀がこっちへ走り去ったということだけをたよりに歩き続けていた。 探せど探せどあるのは鬱蒼と茂った草のみ。 暗い夜の中、月明かりだけを頼りに沙紀を探す一同。 だが、焦りは苛立ちを生む。そしてその苛立ちは・・・・可哀想に億彦に向けられた。 「おっくんなんで武器取り寄せたのに懐中電灯は無いのォ!?」 「う!!そ、それは・・・・」 「億彦く〜ん!?ちょっと気配りたらないんじゃないのぉ!?」 「・・・・うう・・・・しくしく」 だが、億彦にも味方はいた。 いづみさんである。 「ちょっとみんなぁ・・・・焦っちゃ駄目よぉ。億彦君はよくやってくれてるじゃない?」 「い、いづみさん!」 億彦は感動に涙目になっていた。 「・・・・・でもぉ・・・懐中電灯は欲しかったわねぇ・・・・」 「・・・・・・とほほ・・・」 力無くうなだれる億彦。 その時だった!! 「キャーーーーーー・・・・・・・・」 沙紀の悲鳴が木霊した。 みんなが一斉に走る。 声のした方向へと向かって。 「多分ここらへんだとおもうけどぉ・・・・・」 みんなで辺りを探す。 沙紀がいないのはすでにわかっている。 だが、なにか落ちているかも知れない。 「・・・・ああ!!」 そして億彦は何かを見付けた。自分の足元に。 「こ、これって・・・・・」 「沙紀のポシェット・・・・・?」 「ってことは・・・・・・」 『沙紀ちゃんはこっちへ進んでる!?』 みんなの心に希望が戻り、笑顔が浮かぶ。 「さぁ、沙紀ちゃんはこっちへ進んでるわ!探しましょう!」 『おーーーー!!』 そして優夏達は沙紀を探す為、再び歩き始めた。 ポシェットの横3メートルほどの所に、沙紀が落ちた穴がある事に気付かずに・・・ ・・・。 第5話終わり 次回へ続く。 |
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