遥かなる想いは時を超えて〜優夏との約束〜   
作:メンチカツ様


「みんなおまちどおさま〜♪」
いづみさんがみんなの料理を持って来てくれる。
俺達は今ルナ・ビーチにいる。
昼食を食べに来たんだ。
みんなでわいわい料理を食べていると・…
カランカラン・・・・
いづみさんには失礼だが、この店に俺達以外の客が入って来るのを見たのは、これが初めてだった。
「いらっしゃいませ〜♪」
いづみさんが客に声をかける。
ふと客を見てみると・・・
「あ!」
みた事のある顔だった。
「明さんじゃないですかぁ!!」
そう、そこに居たのは明さんだった。
彼女とは昨日知り合ったばかりだが、彼女の性格が良いせいかみんなすぐに打ち解け、友達になっていた。
彼女は月屋ホテルに泊まっていて、ゲームの原稿を書きに来ているのだという。
「あら、みなさん、こんにちは♪」
明さんは優しく挨拶をすると、俺達のテーブルの隣に座ろうとする。
「明さんさえよければ、俺達と一緒に食事しませんか?」
そう声をかけてみる。
みんなも「うんうん」とうなずきながら明さんの方を振り向く。
「でも、迷惑じゃぁ…」
「そんなことないですよぉ。みんなで食べた方が、料理もきっと美味しいと思いますし」
「……そうですかぁ?それじゃぁ、お言葉に甘えさせてもらっても良いですか?」
「ええ!!もちろんです!!」
こうして俺達は8人で食事をする事になった。
「原稿の方はどうですか?」
とりあえず、当たり障りの無い質問からしてみる。
「ええ、なかなか思う様に進まなくて・・・」
「そうですかぁ・・・・大変なんですねぇシナリオライターってのも。・・・・・・そういえば、明さんっておいくつなんですか?」
とりあえず、失礼かとはおもったが、聞いて見た。
もし俺達よりも歳上だった場合、あまりぞんざいな口をきいたらいけないと思ったからだ。
しかし・・・・
「誠ぉ〜?女性に歳を聞くなんて、頭おかしいんじゃないのぉ?」
・・・・優夏よりはましだと思うが。
「・・・ふふふ、そうですね。秘密・・・ということで」
「ほ〜ら、いわんこっちゃない」
・・・・優夏が余計な事を言うからだろう!!
まったく、せっかくのチャンスを・・…
と、思っていると、遙の姿がみえない。
「あれ?億彦、遙はどこにいったんだ?」
「ああ、遙ちゃんなら外に出たよ」
「そうか、わかった」
俺はそれだけ言うと、遙を探すために外に出た。
遙はすぐに見つかった。
ルナ・ビーチを出て、10メートルくらいのところで、ボォ−っとつったっていた。
「遙、なにしてるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
遙は何も応えない。
しょうがなくもう一度聞いて見る。
「遙ってば、なにしてるんだ?」
「・・・・んぱ・・を・・・・」
なにかを言った様だが、よく聞こえなかった。
そして、もう一度聞いて見る。
「ごめん遙、なんて言ってるのか聞こえなかったんだ。もう一度言ってくれるか?」
そして、遙が応える。
その答えに、俺は驚愕した。
「電波を集めてるの」
・・・・・なんかいきなり変だ。
さっきまでの雰囲気はどこへ行ったのだろう。
とりあえず遙は放っておこう。
これ以上ややこしくしたくはない。
とりあえず、ルナ・ビーチへと戻る。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・なんか変だ。
ってゆうか、みんな変だ。
いづみさんが料理用の包丁を砥いでいる。・・・・・笑いながら。
「・・・ふふ・・・・うふうふふ・・・・うふふふふぅ・・・・・」
怖い。怖すぎる!!
沙紀と億彦は、腕相撲をしている。それだけならば問題は無い。
・・・・いや、少しあるかもしれないが、今は限度を超えている。
腕相撲で負けた方が、手をつける位置。
そこにはなぜか、凶悪にとがったビール瓶の破片が散乱している。
負けた方は堪ったもんじゃない。
俺は止めさせようと声をかけたのだが……
「んだぁ〜〜!?このハート様に文句あんのかぁ〜〜!?」
沙紀がなんか言ってる。
億彦は、
「あぁ〜〜ん!?聞こえんなぁ〜〜!!」
とかなんとか言ってる。
・・・・・・・・まさか北斗の拳?
おそるおそるくるみの方を見てみると・・…
・・・・・折り紙を折っていた。
よかった。くるみはなんとも無いようだ。
・・・・・・この状況で折り紙を折ってるのも変といえば変だが。
「くるみ、何折ってるんだ?」
「ん〜〜とねぇ、沖縄サミット!」
あの伝説の沖縄サミットか!!
俺はいまだにあれは折れないでいる。
しかし、くるみのセリフは終わっていなかった。
「ほかにもねぇ、肉のカーテンとかぁ、マッスルインフェルノとか、色々折ったんだよ?」
・・・・・なぜキャラクターでは無く、技を折るんだ?
それよりも、なぜくるみがキン肉マンをしってるんだ!?
俺はなるべくくるみを刺激しないようにその場を離れた。
少し離れたところには、この異常な自体を察したのか、明さんがいた。
1人カウンターに座っている。
しかし、俺の中に一抹の不安がよぎる。
(明さんは本当に普通なのか?)
見た感じでは普通に見える。
何かおかしいことを呟いているわけでも無く、怪しい行動をとっているわけでも無い。
・・・・・・ただ、座っている場所が、椅子では無く、本当にカウンターの上、つまり、カウンターのテーブルの上なのを除けば。
俺は恐る恐る声をかけて見た。
「・・…明さん?ここは出た方が良いかもしれませんよ?」
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、俺の問いには何も答えない。
・・・・・やはり壊れているのか?
少しだけ近づいて見る。
すると・・・・・・
「・・・・・・・・スゥ・・・・スゥ・・・・・」
・・・・・・・寝ていた。
こんな状況の中で、よく寝ていられるものだ。
そんなことを思っていると、背後に人の気配が生まれる。
「!?」
慌てて降り返ると、そこには遙がいた。
「・・・・・誠……」
「・・・・な、なんだい?・・・遙・・・・」
遙はもう元に戻ったのだろうか?
「一緒に行こう?二人だけの世界へ・・…」
「はぁ!?」
遙はまだ壊れていた。
「そんな世界があるわけ無いだろう?」
俺がそういうと、寝ていたはずの明さんがいきなり俺の耳もとで恐ろしい言葉を吐いた。
「永遠はあるよ!ここにあるよ!!」
ビクゥッ!!
み、明さんはいきなり何を言い出すんだ!?
まさか、こんな壊れた世界が永遠に続くとでも言うのか!?
願い下げである。
頼まれても嫌だ。
こうなったら俺1人で逃げよう。
そう思い立ち、ドアへむかい、全力疾走する。
そのまま外へ出て、少し走ったところで、ルナ・ビーチの方を振り返る。
すると・・・・・・
「まぁああぁぁてえェェェェ!!」
「うぎゃあああぁぁぁぁ!!」
ルナ・ビーチにいた全員が、なにかの映画の様に追いかけてくる。ゾンビっぽく。
俺は逃げた。全力で逃げた。
ロッジに到着し、また後ろを振り返る。
・・・・・よかった。誰もいないようだ。
ポン
そう思ったとたん、俺の肩に誰かの手が置かれる。
……もう終わりだ!!と思った。
しかし、
「誠ぉ、どうしたの?」
優夏だった。
そういえば、てっきり全員ルナ・ビーチにいたと思っていたが、
よく思い出して見れば優夏はいなかったようだ。
「大変なんだ!優夏!みんなが壊れたんだ!!」
「はぁ〜?なにいってるのよぉ。誠ぉ、大丈夫?」
あの光景を見ていない優夏は、何を言っても信じてくれない。
後ろを振り返る。
・・・・まだ誰もいない。
「・・・・優夏、二人で逃げよう。どこか遠くへ」
「・…誠ぉ?あんまりふざけてると、私だって怒るわよ?」
「・・・・・優夏、俺は真剣なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
しばらく無言で見つめあう。
やがて、俺の思いが伝わったのか、
「・・・・わかった、わかったよ、誠。私は誠を信じる!」
優夏がそう言ってくれる。
そうと決まり、俺達はロッジから必要なものを集め、かばんにいれて持ち出す。
早速二人で逃げ出そうとしたその時、とうとう追いつかれた。
「遙!?」
「・・・・誠・…逃がさないから・…」
遙がしゃべり終わったとたん、急に優夏が苦しみ出す。
「うあああぁぁぁっぁああ!?」
「優夏!?・・・遙!優夏に何をしたんだ!!」
「・・・・毒電波を送ったの」
「・・・・毒電波!?」
やはり遙は壊れているようだ。
しかし、こっちにだって武器はある。
俺は、かばんの中から一粒の薬を出し、それを飲みこむ。
「ぐ、ぐああぁぁ・・ぁぁ・・・・」
体中に力が溢れる。
そしてその力を解き放つ!!
「横島流!!サイキックソーサー!!」
ドガァ!!
俺の手から生み出された円盤状の光により、遙が沈黙する。
「優夏、大丈夫か!?」
「う、うん。ありがとう、誠」
「早く逃げよう!」
「まって、誠。敵は完全に沈黙したの?」
「・・・・・・は?」
「・・・あれ?・・・・ちょっと、何がなんだか分からない・…」
毒電波の影響だろうか?
なんか、優夏がエヴァっぽくなってるが・・・・
いまはそんなことよりも、逃げる方が大事だ。
見れば後ろにはもうみんなの姿が見えている。
と言っても、みんなの脇をすり抜けられなければ、逃げる事は出来ない。
強行突破あるのみ!!
みんなが近づいてくる。
さっきの薬をさらに2粒ほど飲む。
「来た来た来た来たぁぁぁ!!!」
体中に力がみなぎる!!
俺はみんなを充分に引きつけ、技を放つ!!
「俺のこの手が真っ赤に燃える!!
みんなを倒せと轟き叫ぶ!!」
俺の右手が紅く光り輝く。
そして、力は解放される!!
「ばぁぁくねつぅぅ!!
ゴッドフィンガアァァァァ!!!」
力の奔流がみんなを包み込む。
そして、その力を爆発させる!!
「ヒィーート・エンドォォ!!」
ドゴガアァァァン!!
みんなが吹っ飛ぶ。
まるで荒れ狂う風に舞う紙の様に。
「いまだ、優夏!逃げるぞ!!」
もはや追ってはこれないだろうが、・・・・いや、生きてるかどうかも妖しいが、とりあえず逃げ出す俺達。
俺達はこうなる前の世界へ旅立つつもりだった。
そう、鈴の力で・……
そして、司紀の杜神社にたどり着く。
「優夏、準備は良いか?」
「うん、誠。OKだよ」
「・・・・・よし、それじゃぁ始めよう」
そして紡がれる、時を操る言葉。
・・・・・・連歌。
「はるさめや みさきのはてに なりひびく すずとともにや ときはとかれん」
 
「とこしえの ときのはざまの ひとしずく あまかけるとり うかびしずみつ」
 
「かんなぎの うまれしそらの ときつかさ さきのさきにて すぎのすぎにて」
 
「まほろばの たいちゆるがす しきのもり すずねひびいて ときつかさどる!!」
 
・・・・・そして、生み出される時空の歪み。
「さぁ、優夏、行こう」
「・・・・・まって」
後はもう時間を飛ぶだけという時に、優夏が待ったをかける。
「・・・・なんだ?優夏。後はもういくだけだぞ?」
「・・・・うん、わかってる」
「じゃぁ!!」
「誠!!本当にこれでいいの!?」
「・・・・・・え?」
「例え私達が普通の時間へ飛んだって、ここでのみんなはあのままなんだよ!?」
「・・・・・・それは・・・」
「私、いやだよぉ、例え違う時間の中でもみんなが苦しんでるのを知ったまま逃げたくなんて無い!!」
「・・・・・優夏・・・」
俺は、いまさらながらに自分の浅はかさを思い知った。
例えこのまま時間を飛んでも、俺達はきっと楽しく過ごせないだろう。
いや、新しい時間の中のみんなを見るたびに、この世界で苦しんでいるみんなを思い、永遠に苦しむだけだろう。
優夏は、それが、嫌だったのだ。
短い間でも共に笑い、共に罵り合いながらも、共に過ごしてきた仲間。
俺達には、そんなみんなを見捨てることなんて出来ない。
いや、したくない!!!
「わかった。優夏、わかったよ」
「・・・・・誠?」
「そうだよな、みんなを見捨てるなんて、出来るわけ無いよな」
「うん」
俺は決意した。
必ずみんなを救うと。
どれほどの時間が掛かろうと、決して諦めはしない。
だから・・・・・
「優夏、俺は絶対にみんなを救って見せる。だから待っていてくれ」
「・・・・どう言う意味?」
「約束だぞ!優夏!!」
「ちょ、ちょっと・・・・まさか!?」
ドンッ!
「きゃぁ!」
優夏に体当たりし、時間の歪みへと旅立たせる。
「優夏!!約束だ!どんなに時間が掛かってもみんなを救って見せる!」
「まことぉぉ!!!!」
「俺達の思いはきっと、時を超える事だって出来る!!」
「いやああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
そして、俺の目の前で、時空の歪みは閉じた。
「・・・・待ってろよ、優夏。絶対に約束は守って見せるからな」
そうして、俺の新しい日々が始まった。
−−−−−そして10年後−−−−−
今日も大学の授業はつまらない。
あの日から私の中の時間は止まってしまったから。
何も感じることが出来ない。
あいつが・・・・・いないから。
キーンコーンカーンコーン・・・・
授業が終わった。
早く帰ろう。
早く眠りたい。
何も考えずにいられるように。
ガチャッ
玄関を開ける。
そこには、いつもの風景。
変りようの無い私の部屋。
ご飯も食べる気がしない。
・・・・・もう寝てしまおう。
・・・・ジジ・・・・・
(・・・・ん?何の音だろう)
なにか虫でもいるのかな?
でも、そんなことはどうでも・・・・・
ジジジジジズバババババズビズジジジ!!!
部屋の中に強風が吹き荒れる!
「なに!?いったいなんなの!?」
やがて、光は収まり、部屋が静かになる。
その瞬間!!
スバババババババ!!!
光が一瞬にして広がり、そして消える。
そこには・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・!」
「まことぉーー!!!」
「ただいま。優夏」
「ばかばかばか!!まことのばかぁ!!」
「おいおい、久しぶりに会ったセリフがそれか?」
「しんぱいしたんだからぁ!あの日からずっとしんぱいしてたんだからぁぁ!!!」
「・・・・・ごめん、優夏。でも、約束は果たしたぜ」
「・・・・え?」
「むこうの世界でも、みんなもう元通りだよ」
「・・・・ほんとに?」
「ああ」
「・・・・・まことぉ・・・」
「なんだよ、優夏。何も泣かなくても良いだろ?」
「・・・・だって・・・・」
「久しぶりに会ったんだ・・・・お前の・・・優夏の笑顔を見せてくれよ」
「・・・・・うん!!」
こうして、再び二人は巡り逢い、幸せな生活を取り戻した・・…。
 
遥かなる想いは時を超え、約束という強い絆により、再び想いが巡り逢う。
運命という名の試練を乗り越えたこの二人の未来は
きっと、光に満ち溢れている事だろう……。
そんな二人の足元には、
一つの鈴が優しい光を放ちながら転がっていた……。
 
 
終わり






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