2人の時間
作:樋口誠


第1夜

                  

あの合宿から19日後、またあの島へとオレと遙の2人だけで再び満喫しようと言う事になった

遙の退院祝いもかねてだ、それに一週間もの入院は遙には暇だったらしい、せがまれた勢いと言う事もあって

おまけにラッキーな事なのかアンラッキーな事なのかオレ達が通っている大学が半壊していたのだ

こっちでも地震があったらしい、半壊した理由は大学の門に張り紙されてた紙に書かれていた張り紙によると・・・・・

大きな地震により半壊しました、復旧の目処は早ければ数週間、あるいは数ヶ月後、復旧の目処ならびに

復旧しだい連絡をします、それまでの間は自己学習をするように・・・・・との事だ

そんなこんなで遙と一緒にフェリーの上に居るって訳なのだ、退院祝いと言ったら喜んでくれたし、おまけに

ゴールデンウィークも近いことだし

「ねぇ、誠、泊まる所は大丈夫なの?」

と900ml入りのミネナルウオーター片手に首を傾げて聞いてきた、しかし、その点はぬかりがないさ

「ん?ああ、大丈夫さ、全然ぬかりは無いから心配はいらないさ、いづみさんの所に行けば」

そう、フェリーに乗る前に公衆電話でいづみさんに電話で連絡したら何とかしてロッジを手配するとか言ってたのだ

何とかできるのか、とか思いつつも今に至るまでの事を思いだしていた

「あ、俺、誠だけど、優夏か?」

ハナからロッジに泊まろうと思い何とかならないものだろうかと思い立って最初に電話したのが優夏の所
だった、しかし、何かが違う、違和感と言う雰囲気すら受話器越しでも伺えた、口調が違うと言う違和感だ

「あ、まこったん?そ〜れすよ、ゆうかれすよ〜、どったの?」

はっ!?酔ってる、かなり酔ってるぞ!!、しかも犠牲者が1名居るようだ、犠牲者の声は酔った優夏の
声で掻き消され確認は出来なかったが確実に犠牲者が居る、おまけに優夏に電話したのが間違いだったと
遅いながらも気づいたのだ、しかも聞いたことのある回文を連発で叫びまくってるし、会話になってない

「ああ、やっぱいいわ、うん、悪かったな、それじゃ」

ここは素早く電話を切った方が良い、素直に思ったオレは犠牲者の無事を祈りつつも溜息混じりに受話器を
置こうと持ち替えた、その時、酔った優夏の笑い声が受話器から響いた、ますます溜息を吐き出したオレだった

「だったら、奴しか居ないな、イヤだけど」

呟きながらテレフォンカードの出る音を聞きながらテレフォンカードを引き抜き、受話器を取ると同時にテレフォンカード
を入れボタンを押した、奴なら大丈夫だろうと思いつつしばらく電話の呼び出し音を聞いた

「はい、億彦です」

出るのが遅いぞ、と思いつつも寒気がしそうな奴の声を聞いた、それは我慢した初めて奴にお願い事をするためだからだ

「あ、オレ、誠だけど」

と言いながら返事を待った、しかし何やら受話器の向こうがやかましいオマケに楽しそうな感じもする、何やってるんだ?
と思った、すると

「なんだ、石原か、何の用だ?」
「あ、ああ、って言うか何かにぎやかだなぁ、何してるんだ?」
「君には関係ないだろ?忙しいから電話切るぞ?」
「ああ、悪かった・・・・って、待て、おい!!」

とものの数分、いや、数秒で終わってしまった、何が忙しいだっ!!くそ!!と怒りを込めて受話器をたたき込むように置いた
そんなこんなで、今に至るまでの事だった、そして今は遙と一緒にフェリーに乗ってる訳か・・・と思い回想から戻ろうとした瞬間

「誠?どうしたの?どうかした?」

と回想モードから戻るのと同じタイミングで声をかけられた、しかも顔ギリギリの所でペットボトル越しに

「ぬあ!?ビ、ビックリたっ!!」

回想モードから戻り視線を合わせた所にしかも顔のギリギリによられると誰でもビックリするだろう、しかもオレはイスからずり落ちで
しまった、そしてズボンを払い再び腰掛けてた

「あ、いや、さっきのはビックリしたけどね、他は何でもないよ、大丈夫さ」

頷きながら言ったが、オレの顔を見て不思議そうに首を傾げてる

「・・・・・・?」

遙本人は驚かそうとしてやった訳じゃないらしい、水が好きな遙の事だ、水から見える世界はどんな物だろうと試したのだろう

「他って・・・・何?誠、隠し事してる?」

じっと見つめながら問いかける遙、そして言葉の後の息継ぎもなく900mlのミネナルウオーターを一気に半分も飲み干してしまった

「えぇ!?」

遙の行動に驚いた、普通の女の子なら一気に半分も飲めないはず中には居るかも知れないが、それぐらい水が好きなんだろう、遙は

「あ、いや、うん、いづみさんが合宿の時に使ったロッジを手配してくれるって電話で言ってたからな、うん、それだけ」

と手短に話して聞かせた、遙はキャップを閉めつつ話を聞きながら軽く頷き微笑んでいる

「連休が終わるまで遊べるね」

微笑みペットボトルを膝の上に置きながらオレの腕に抱きつくようにして言った、何とも可愛らしい

「そうだな、釣りしたり海辺を散歩したり、色々しような」

オレも遙の微笑みにつられ微笑みながら頷きながら言った、右手は自然に遙の肩を抱き寄せた、たぶん目的地に着くまではこのままだろう

そして優しい潮風がオレ達2人を背中から包んだ、冷たくもなく寒くもない心地よい風、オレ達は背を海に向けデッキにあるベンチに座ってる

その潮風に遙は弾かれるようにまるで踊るかのように身軽に軽やかに立ち上がりざまに振り向いた、そして真っ直ぐ指差し微笑んでいる

「ん?何か見えるのか?」

重い腰を持ち上げる如くよっこらせと呟きながら立ち上がり振り向いた、すぐに指差しながら微笑んでる答えがわかった

「島、見えたね、誠」

「ん〜、見えたと言うよりも、もう少しで到着って感じだな、合宿の時は気づかなかったけど長旅って感じだったなぁ」

腕を伸ばし思いっきり背伸びする、それを見た遙も真似するように同じく背伸びしている、腕時計の時間は夕方間近を告げていた、向こうを出るのが遅かったらしい

そしてフェリーのコインロッカーに預けた荷物を取りフェリーから降り立つ、合宿した地に再び来たのだ、時計をもう1度見ると4時を告げている

昼に出て4時間もかかったらしい、そして2人してそれぞれ自分の荷物を担ぐと目的であるルナビーチ目指し歩む、多少遠いがそんなに時間が掛かる程じゃない

時間は掛からないものの久しぶりな感じに来たせいか、商店街をあっちにいったりこっちに行ったりと店を見ながらだったから結構時間をくってしまった

時計は5時を告げている、約1時間も商店街をうろついたらしい、久しぶりに来たせいか見るもの全部が新鮮で真新しい物に見えたからだ、めぼしい物は1つもなかったが

「こんにちは〜、いづみさん」

ドアを開け入ると同時に挨拶をする、挨拶と共に聞こえてるのはドアベルだ、その後に続くように申し訳程度な声の高さが聞こえる

「こんにちは・・・・」

それはもちろんの事、と言うかやっぱり遙だった、いづみさんにはなじめてないと言うか照れくさいようだ、合宿の時はじめて逢ったんだから仕方ないか

「あら、遅かったのね、こんにちは・・・・と言うかこんばんはの時間帯ね」

合宿の時はじめて逢った以来ぜんぜん変わってないみたいだ、むしろ懐かしいと言った方が容姿に有ってるかもしれないエプロン姿のいづみさんには

「2人とも、晩ご飯は?お腹すいてない?」

見渡すようにしながら微笑んだまま問いかけてくる、手元は前の客にだした皿やグラス、カップを洗ってる

「私、お腹空いた」

とオレよりも先に空腹な事を訴えたのは遙だった、待ち合わせして船に乗った頃には2時近くだったし食べた物と言えば軽いスナック菓子とミネナルウオーター

だけだし無理もないか、それにいづみさんと顔を合わせると照れくさそうにしてるけどいづみさんの料理を食べたがってたしな

「あ、はい、いただきます、昼は殆ど食べてなくて」

遙の言葉に微笑みながらオレも空腹を訴えた、大学で遙を誘って大学が無いからその足で遙と散歩、そして別れてから出かける準備して待ち合わせてフェリーに乗って

気づけば少し昼を過ぎてたと言う訳だ、4〜5日分の着替えやらをバックに詰め込んだだけなんだが以外にも手間の掛かる事は言う迄もない

「簡単な物しかできないけど、良いわよね?」

とまた微笑みながら言う、「OKです」と言うような感じで頷き返事をしたが何かが足りない感じがしてオレは思わずキョロキョロと見渡した、すると遙が口を開いた

「くるみは?くるみは来てないの?」

遙が言わなければ足りない感じがなんなのか気づかなかった、しかしくるみは高校生だ、日曜とみどりの日、ゴールデンウィーク以外の二日間は学校があるはず

しかし気づかなかった事をくるみに知られたら何を言われるかわからない、取りあえずは安心だろう、だがいづみさんは首を傾げるばかりで曖昧な返事だった

何か裏があるな?と思ったオレは色々と考えを巡らせて見た、そして導き出した答えは1つくるみといづみさんでオレ達を驚かそうとしてるなと閃き導き出した

「そうか、くるみが居なかったのかぁ、くるみは来てないの?」

ときわめて何も気づかない、考えてないように振る舞い問いかけた、キョロキョロと再び見渡すも3人の気配しかないようだった

「え?あ、うん、くるみもまだ高校生だしねぇ、えっと、それじゃ手早く料理を作っちゃいましょうっと、テラスの方で待っててね?」

ん〜、いづみさんも結構な演技派だ、曖昧な返事で何かがあると気づいたが1つ気づかない振りでもしよう、軽く頷き思ってた次ぎの瞬間ルナビーチのドアが開いた

「いらっしゃ・・・・・えぇ!?」

ドアの開く音を聞いても別に誰だろうと振り向く必要もないだろう、夜はバーにもなるんだし地元の人か観光客だろうと思ったがいづみさんのぎこちなくもある驚きの

声にチラッといづみさんを見るものの、あえてそれも気づかない振りをしたが遙の方が可成り驚いてる顔をしてドアの方を指差している、それには流石のオレも振り向く

「遙、何に驚いて・・・・・って、何ぃ!?」

遙の指の先に居たのは何と・・・・・もう1人の遙!?ど、どういう事だ!?何が何なんだ!!??、と本気で一瞬混乱したオレ、遙は一足先にもう1人の遙の正体に気づいてたようだ

遅れながらもオレも正体に気づいた、決め手はやっぱりいづみさんの行動と言うことも有った、もう1人の遙の正体はくるみだった、顔は幼さが有るが髪型や容姿がそっくりだ

「何だ、くるみかぁ、本気でびっくりしたぜ」

「私も一瞬だけびっくりした、でもすぐに気づいたけど」

笑いながら言うオレの後に続くように微笑みながら言葉を紡ぐ遙、流石だと言うか直感めいた物が有るのだろうと感心する面も有ったりする

「ぴんぽんぴんぽ〜ん♪、正解だぴょん☆、でも何で分かったの〜?」

「だって、いづみさんが不自然だったしな、アイコンタクトの如くそっちを見てたし遙も気づいたようだったしな」

髪型も容姿もおまけに着てる服も遙そっくりのくるみを見て言う、髪の色はこの事の為の染めたらしい

「2人を驚かそうと思ったんだけど、失敗におわったみたいね、さっ、出来ましたよ〜」

独り言のように呟きいつの間にか作った手料理を運ぶいづみさんの後ろでくるみがぶぅたれてる、驚かそうとしても何の得も無いぞ、くるみ

作ってくれたのは桜エビと蟹フレークが散りばめられたチャーハンと酢豚だった、簡単なものの割には絶品すぎた二品だ、優夏には真似出来ないな

そんなこんなで料理を食べながらも会話は弾んだ、ロッジの方は手配出来たらしい、フッと時計を見れば7時を回っていた

「時が経つのって早いなぁ、そろそろロッジにでも行くか、遙?」

遙を見ながら問いかける、疲れたと言う顔色でもなく口に出した訳でもないがオレが疲れたんだから遙も疲れただろうと思った、遙は頷いて答えた

「くるみもロッジに行きたいなぁ〜♪」

遙の頷く返事と同時に楽しげに言いながら腕にくるみが抱きついてきた、何時の間にか髪型は見慣れた髪型に戻されていた、恐るべしくるくるくるみマジックだな

「だめよ〜、くるみ、誠くん達は疲れてるんだから、それに2人っきりなんだしね?」

「えぇ〜!?でもぉ〜、またお兄ちゃんにも会えたのにぃ〜」

「それに、誠くんに迷惑かかるでしょ?」

とアイコンタクトも交えながらくるみに言い聞かせてるいづみさん、それと同時に何かを理解したのか本当に残念そうな顔で頷いてるくるみ

「いや、別に良いですよ?遙の退院祝いもかねてたまにこんなのも良いかな?何て思って来たんですから、な、遙?」

「うん、私、くるみ来ても構わないよ?」

微笑みながらいづみさんとくるみを見て言うが、「今回は遠慮しとくぴょん」と元気ハツラツで言うくるみ

「でも、明るいうちは遊びに行くからね?お兄ちゃん、遙お姉ちゃん」

「わかった、んじゃ、明日の朝な?」

くるみの頭を撫でながら約束をする、その隣りで微笑みながら見つめている遙、合宿の時とは別人とも見て取れる笑顔だった

そんなこんなでロッジの鍵と差し入れとばかりに缶ビール、遙には100mlのペットボトルの水とオレンジジュースを手渡してくれた

おまけに本土で流してる一局がこっちでも見れるようになったと教えてくれた、だけど差し入れとばかりに貰ったビール片手の夜空を眺めよう思っていた

BGMの変わりにでもテレビの音を聞きながらでも悪くないな、ただし遙はオレンジジュースだけど

「ふい〜、なんか久しぶりだな、ここも、ここから見える夜空も」

「そうだね、でも、あの時はいろいろとあったけどね」

そしてロッジに来たオレ達、適当に部屋に荷物を置いてきて今はテレビの音をBGM代わりにビールとオレンジジュースを飲みながら夜空を眺めてる

部屋はお互いに何があっても良いように隣同士にした、しかし本当に2人っきりだとのんびりできる、あとの2人の声は無い変わりにテレビでやってる

音楽番組の音だけだ、そしてオレはビールの酔いが手伝ってか気分も良い、それに隣りには遙が居るもう最高だ

「本当に綺麗な夜空だな、ってもう11時か、気づかなかったなそろそろ寝ようか、その前に明日何する?」

「う〜ん・・・・?」

空っぽのペットボトルを手にしながら小さく唸り軽く首を傾げ考えている、9時ごろのニュースの天気予報じゃ明日は25℃にも26℃にもなるとか言ってた

「オレはできれば涼しい事をやりたいな、でも遙の好きな事で良いぞ?」

「それじゃ、釣り、釣りしよう♪」

「釣りかぁ・・・・釣り場はあそこだし、丁度良いかな?よし、釣りにしよう」

よほど釣りにハマったんだろう、嬉しそうな顔だ、オレもそんなに釣りが嫌いじゃ無いから丁度良いか、涼も得られるわけだし

「遙と2人っきりか・・・・のんびり・・・できそう・・だな」

4月27日(土)PM11:30 ビールの酔いも手伝い心地よい眠りに入った、明日から連休が終わるまでのんびり楽しく過ごせそうだ

つづく






後書きのようなもの

初めて書きました、書きたいことをくわえすぎたみたいで可成りめちゃくちゃなストーリー
になってると思いますが楽しんで読んで貰えると嬉しいです
二部構成にしますので、次回はお待ち下さい







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