解かれた封印   
                           作:三剣 由
出会えたことからすべてが始まった。
今まで私は自分のことをよく知らなかった。
いや、知ろうとしなかった。
私が普通のひととは違う存在だから・・・
私は水の中で生まれた。
作られた生命───クローンとして。
そんな私に対し、他人はいつも奇異の視線を送った。
あるとき、誰かが私に向かってこう言った。

「あれは生きた人形だ」

その言葉が私に大きな壁を作った。
───意味がないんだ・・・私は人形だから、存在する意味なんてないんだ・・・
そう考えるだけで、胸が張り裂けそうになった。
だから、私は本当の人形になることに徹し、他人との関わりを否定した。
心の封印───
それが私の選んだ道だった。
しかし、それでも私は待っていた。
誰かが本当に私のことを理解してくれることを。
誰かが心の封印を解いてくれることを。
そして、ある南海の孤島で、私はあるひとと出会った。
初めて会ったときから、私はそのひとに何か特別なものを感じていた。
今まで出会ったひととは違う何かを秘めていた。
そのひとは私に優しく接してくれた。
この世界が憎しみや悲しみだけではないことや信じることの大切さなど、私が
今まで知らなかったことを笑顔で語ってくれた。
また、そのひとは、私がクローンであることを知ったときも、最初と同じように接してくれた。
そのことがとても嬉しかった。
そのひとは今、私のすぐそばにいる。
この世で1番大切なひととして・・・
そのひとは、島で一緒にいたときと変わらない笑顔と心を持ったままで、生まれ変わった私を見守ってくれている。

「おーい、遙ー!」
砂浜に打ち寄せる波と遊んでいる私に、あのひとが声を掛けた。
「誠」
私は大好きなひとに手を振って答えた。
誠は私のところに駆け寄ると、ポケットから何かを取り出した。
それは小さな巻貝だった。
「ほら、さっき別の砂浜で拾ってきたんだ」
「うわあ、綺麗・・・」
私は、思わず感嘆のため息をついた。
「これ遙にあげるよ」
「ありがとう、大事にするね」
嬉しさのあまり私は誠に抱きついた。
誠は照れた表情を浮かべながら、優しく私を包み込んでくれた。
───温かい・・・
体に伝わる鼓動と温もりが心地よかった。
私はこの世界に生まれてきてよかった心の底から思った。
そして、願わくは、この幸せがとこしえまで続くようにと思った。
「誠、大好き・・・」
私は、そっと誠にキスをした。


------ あとがき ------

今回はずいぶん中身のない作品になっています。
だから、「これだけじゃつまんない」って方もいるかと思いますが、そのへんは
お許しください。(土下座)
今度の作品は心理描写を主体に進めてみようと思い、こういう物語になりました。
このような作風は初めてだったのですが、描写そのものは、それほど悪くないのではと
自分ではそう思っていますが、どうだったでしょうか?
こんなひとりよがりの作品でしたが、最後まで読んでいただければ、幸いかと思います。
本当にありがとうございました。


三剣さんのHPは『Three swords』です。
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