----- レジェンド・メイカーズ!! -----
第1章『時は巡り、動き出す』その6
作:メンチカツ



 
私達は温泉で有名なハッピーレインボウへと向かう為にエレディーンの街を出た。……出たんだけど……
「……ねぇ、ちょっと聞くけどなんで街の外に出たのかしら?」
そう、私達は街の外に出ちゃった。
「え?いや、……さぁ?」
まったく、何で外に出たのか分からない。
街の中からなら車で行けるのに。
ちなみに私の車はSSシティーに止めたままだ。ブルーフォレストからSSシティーへと移動する為に乗って来たが、あの国王にいきなりエレディーンまで強制的に移動させられた為、私の車はあっちに置いたままだった。
「コスモスは車持ってる?」
「いや、持ってません。あんまり興味も無かったし」
「うみゅぅ……じゃぁどうする?」
この時代、もはや電車は博物館で見かけられる程度の存在だった。まだ魔法が存在していなかった頃は人々の移動手段として重宝されていたが、魔法が生まれ、異形が存在し始めてから次第に消えて行った。
その理由は、ある事故にあった。
異形の存在が確認されてから間も無い頃である。電車の中で1人の男が異形へと変貌し、その電車を破壊したのだ。電車に乗っていた乗車客は全員死亡。異形も乗車客といっしょに死亡した。この事故の他、走っている電車の前に急に現れた異形を電車が轢いてしまい、そのまま脱線して大破。これも異形、乗車客共に全員死亡した。
この事故が元で電車の利用客は減少し、事故も無くなることはなく、とうとう全ての電車は廃線となってしまったのだ。
そのため、いままで一家に一台が普通だった車は、いまや1人に一台というまでに普及していた。
車が普及した理由をもう一つ上げるとするならば、先に挙げた例のように電車に乗車中に異形が現れた場合、逃げ道は無い。車ならば避けるなりその場に止めて逃げるなり、場合によってはそのまま轢いて逃げることも可能だ。電車よりも車を選ぶのは自明の理であろう。
その例に漏れず明も車を持っていた訳だが、国王のトラップに見事引っ掛かり、移動手段を無くしてしまったという訳だ。
「……どうするといわれましても……」
「……そうよねぇ、やっぱり車をレンタルするしかないかな」
ふと、フェレットの入っている篭に目をやる。
「ZZZzzzzz……」
気持ち良さそーに寝ている。
この姿を見る限りでは、とても勇者と共に旅をしたとは思えない。きっと、鑑賞用に飼っていたんだろう。
そーに違いない。
私は勝手に納得すると、コスモスと共にレンタルカーのお店を探し始めた。
「あの店で良いんじゃないですか?」
「そうねぇ、あんまりこんな事で時間使いたくないしね」
一つの店を見つけだし、私達は店の中に入った。
「すいませーん」
店の店員に声を掛ける。すると……
「はいはいはいようこそいらっしゃいましたお客様私どもは貴方様がたの御来店を心より歓迎致しますですはい!」
一気にまくし立てるように喋り切る店員。その顔には意味も無く笑顔が張りつき、脇に書類を挟んで、始終揉み手をしている。
「本日の御要望は何でございましょうか?車の御買い求めでしょうか?それともレンタル?どちらにしろこの店を選ばれた貴方の目は正しい!私どもは誠心誠意を持ってお客様の期待に応えられるよう対応させて頂きますですはい!」
ちょっとうざい。少し黙らせよう。
「レンタルしたいんですけど……」
一瞬、店員の顔が固まる。頭の中で情報、対応の切り替えを行っているようだ。これで対応が変るようでは良い店とは言えない。
「は〜いはいはい御待たせ致しましたレンタルで御座いますね、そ〜れならば今一番のレンタル率を誇る車を御紹介しましょうこちらへどうぞぉ〜」
固まった表情が急に動き出す。
……ちょっとびっくりした。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
先を行く店員を呼び止める。
「はー……いはいはい何で御座いましょうか?」
……今一瞬止まったのはなんだったんだろう?
「出来れば安くて頑丈な奴が良いんですけど……」
「あー……はいはいはい、安い奴ね。わかりました」
……いきなりトーンダウンしてるし。
「それではこれなんかどうでしょう?」
気の所為かも知れないけど、口調も少し雑になったようだ。
結局私達はその店員が最初に進めた車を借りることにした。
車名「ピッツァ」と呼ばれる物で、一般でも買い安いニーズナブルな車だ。
ちなみに私の車は、車名「インフィニティ」と言う物で、世界に一つしかない特注品!
速度、耐久力、機能、安全性、どれをとってもこの世界で最高を誇ると言っても過言ではない。
前に携わった仕事で、車の会社の社長さんにいたく気に入られて、「是非貴方の為に最高の車を作らせてくれ!」と言われて作ってもらった物だ。
その言葉に嘘偽りの無い、最高の車を作ってくれた。
あの社長さんには感謝感謝ね♪
まぁそんな話しは置いといて、私達は「ピッツァ」に乗り込み、ハッピーレインボウへと向けて車を走らせた。
「それじゃぁ本題を……という前に、一つ聞きたいんだけど」
「なんでしょう?」
「貴方の持ってるその……奇妙な杖はなんなの?」
「これですか?」
そういいながら杖を見る。
実は会った時からずっと気になっていたのだ。
基本の形は先端の大きな杖。先端の部分は扉が付いていて、中に何かを入れられるようになっている。
その様は、何かを奉る祠のようだ。
そして、その先端部分にはカツラのような物がかぶせられていて、カツラからは2本の角のような物が伸びている。
更に、何かを祝う時などに使うような荒縄がハチマキのようにカツラに巻き付いていて、荒縄から三本の白いヒラヒラが垂れ下がっていた。
「これは『箒神(ほうきがみ)』と呼ばれる呪具です」
「……箒神?」
「はい。俺の一族、『夢使い(ゆめつかい)』の扱う道具です」
「夢使いって……聞いたこともないわね」
「まぁ、いずれ使う時が来たら説明しますよ」
うみゅぅ、なかなかもったいぶっってくれるわね。
「ということは、コスモスは呪術師なの?」
「いえ、これは特定の敵としか使えないんで。一応剣士です」
一応……ちょっと頼りない感じはするけど、主に魔導師タイプの私には丁度いい仲間かもね。
一応私も体術は使えるけど、所詮ある程度。
接近戦のプロがいるなら、それに越した事はない。
「それじゃぁ……本題に入りましょうか」
「ええ、そうですね。ハッピーレインボウまでは、まだまだ時間もありますし」
ついにこの時が来た。
知られざる過去の話しを聞く時が。
私達の車は、ただただ道路の上を走り続けていた。
 





後書き
なんかどんどん話しが先送りになってるような……なんて思ってますね!?
いやいや、次回ちゃんとでます!
ついにコスモスの正体も明らか(?)になったし!
さぁさぁ、次回はどうなるのか!?
夢でも見ながら寝て待つが良い!!
〜〜見果てぬ夢の狭間でまた逢おう〜〜



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