「あああああぁ、くそぉ〜、今日はバレンタインデーだと言うに、なにゆえ俺は智也なんかと肩を並べてなきゃならんのだぁ〜〜」
ザクザクと新雪を踏みしめながら、商店街を歩く。
「だあぁ!! さっきからうるせぇぞ、信!!
唯笑にやるプレゼント探しにつきあってやるって、言い出したのはお前の方だろが!?」
吐く息が白い、踏みしめる大地も、また白い。
「そりゃ、そうなんだけどさぁ〜・・・」
白き世界に、俺と智也はいた・・・

今日は2月14日バレンタインデー。
智也と唯笑ちゃんが桧月さんの死を乗り越えてから初めてのバレンタインデー。
智也は、おそらく、というか間違いなくチョコをくれる唯笑ちゃんに、何かお返しのプレゼントを送りたいと言う。
あの智也がここまで幸せを謳歌している。
正直、単純に羨ましくもないではないが、これまでの経緯を思い返すと、羨ましさ以上に、嬉しさや感慨深さが先に来る。自分の手助けが必要とされないことに、そこはかとなく寂しさすら感じてしまう。
二人、いや、三人は傷つき哀しみ疲れ果て、悪夢の底で絶望に喘いでいた。
一人は、想いの深さゆえに過去を愛し、白い傘を抱きしめ続けた。
一人は、想いの深さゆえに孤独に現在(いま)を生き、自らの想いを殺し続けた。
一人は、想いの深さゆえに二人の未来を案じ、姿なくしてなおこの地にとどまり続けた。
俺に訪れた悪夢。
俺に絶望を教えるために訪れた悪夢。
だが、ここには幸せがあった。
希望の灯火が、眩しいぐらいに、赤々と光り輝いていた。
俺には希望があった。
夢とは、いつかは覚める物なのだ。どんな悪夢を見ようとも、必ずいつかは目覚めることができるのだ。
哀しみに彩られた悪夢から抜け出してみせた、希望の象徴が、俺にはあった。


「あれ? おい、智也。あそこ見てみ」
「あん? なんだよ・・・って、唯笑じゃないか」
「待ち合わせは駅前に2時、だったよな?」
「あ、ああ・・」
「かぁ〜〜、泣かせるねぇ〜〜。
このクソ寒い中、愛する男にチョコを渡すため、30分以上も前に待ち合わせ場所に向かうなんてなぁ〜〜。あ、でも、この場合はお互い様、かなぁ?」
「そ、そんなことどうでもいいだろう」
「照れるな照れるな♪ とはいえ今の状況では確かにそんなことはどうでもいいな。
ほら、とっとと行けよ、智也♪」
「な、何言ってんだよ、信。まだ、時間はあるんだ、ゲーセンでも行って時間潰すぞ」
「はあ? 智也〜〜、お前そういうとこは全っ然変わんないのな・・・
いいかぁ? チョコの入った袋を大事そ〜〜に抱きしめて、幸せそうに歩く唯笑ちゃんがいる。そして、お前は、30分以上も前だってのに、駅前に向かっていた。しかもその手にはプレゼントをしっかりと握りしめて、だ。
この状況で、お前の言うべきセリフは、そんなんじゃないだろ?
あ〜あ、智也が駄々こねてる間に唯笑ちゃんもう角曲がっちゃったじゃないか〜」
「だああぁ、わかったよ、行きゃいんだろ、行きゃぁ!!」
「そういうこと♪ ほら、ガンバレよ、と〜〜もや♪」
『トン』
俺は軽く智也の背中を後押ししてやる。
俺の手の平全体が智也の背中にべったりと押し付けられ、そこから俺の力が智也に伝えられていく。
俺の軽い一押しを、全て自分の運動エネルギーに変換した智也が、前方に、唯笑ちゃんに向かって、幸せに向かって進み始める。
智也の背中から軽い反動を受けた俺の手の平が、智也の背中から音もなく離れてゆく。
続いて親指の先が離れる。
さらに小指が、人差指が、薬指が、次々と智也から離れてゆく。
そして、最後の最後に中指が・・・
背中を押した反動の力を受けた俺の右手が、俺の胸元へと戻ってくる。
戻ってきた右手に視線を送ることなく、俺は智也を見つめ続けた。
智也の背中が、見る間に遠ざかってゆく。
そして、俺と智也の間を遮るように、大粒の真っ白い雪が、後から後から絶えることなく降り続いている。
智也の背中が霞んでいく。
俺は思った。
三上智也という人間の存在が、このまま霞んでいって、見えなくなって、消えてしまうのではないだろうか?
はじめから、そんな人間などいなかったことにされてしまうのではないだろうか?
そう思えるほどの、とんでもない大雪だった・・・


俺の思いを他所に、世界は、時は、いつもと変わらず移ろい流れてゆく。
白い世界の中、雪道などものともせずに、風のように駆ける智也が叫んだ。
「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜い、唯笑ぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


Memories Off Nightmare
第八章「奪い去られし、自由」
 Produced By コスモス



「こ、こんなのって・・・」
「悪いね、俺も手段を選んでられないんだよ・・・
そんな余裕は、もうないから。
もちろん、俺のことを恨むな、何て言うつもりはないよ。だから好きなだけ恨んでくれればいい。
でもね?
もう、君に、選択の自由はないんだよ・・・」
冷たい冬の寒風が吹き抜ける人気のない公園の中、呆然とする私と穏やかに微笑む稲穂君とが佇んでいた。
踏み越えてはならない一線を、いとも軽々と踏み越え、踏みにじり、蹂躙した、許されざる男が、私の目の前にいた。
「こんなのって・・・」
男は、天使の如き微笑みが彫りこまれた精巧な仮面をかぶっていた。だが、どんなに取り繕おうとも、その仮面に開いた覗き穴からは、その卑劣で醜悪な本性が、止めどもなく溢れ出していた。
そして、私はその侮蔑すべき、闇を宿した瞳を睨みつけて怒鳴りつける!!
「こんなのってないよ!!
なんで? 何でそこまでできるの?
狂ってる!! 狂ってるよ!!!
稲穂君! あなたは狂ってるよ!!
やっていいこと、言っていいことってあるでしょ!?
あなた!! ホントに手段を選んでないじゃない!!!
そんなことして、智也が喜ぶとでも思ってるの!?」
「思ってるわけないだろおおおおお!!!!!」
怒鳴りつける私に負けじと怒鳴り返してくる稲穂君。その顔には苦渋の色がはっきりと浮かんでいる。
「思ってないなら、どうして!?」
「言った通りだ!! もう、手段なんか選んでられないんだ!!
ここまで追い込んだ本人に言われたくはないね!!」
「なんでよ!? 私に今坂さんにこだわる理由を教えてくれればいいじゃない!!」
「それができるんだったら、とっくの昔にやってるさ!!
できないから!! 
こんな・・・こんな胸くそ悪いことをしなきゃならないんだよ!!」
「・・・・・」
「さあ!! おとなしく俺の言うことを聞いてもらおう!
音羽さん!! 今、ここで誓ってくれ!!
もう、これ以上俺の邪魔をしないと!!!
智也のため、唯笑ちゃんのため、俺の指示どおりに、いや、今までどおりに行動してくれるだけでいい。
先週の日曜日に、俺達は会ったりはしなかった。だから、先週も今週も来週も、何も変わりはしない!! いいなっ!!」
「いいわけないでしょ!!!」
睨みあう私と稲穂君。
二人の間で激しく火花が飛び散る。そして、そのままわずかに時が流れてゆく。
先に根負けしたのは稲穂君だった。
「チッ、音羽さんもしぶといね・・・
クソッ! もうすぐ10時じゃないか」
いらいらと時計を見上げながら髪を激しくかき上げる。そして、再び視線を私に向けると、聞きわけのない幼女に言って聞かせるように説得を始める。
「いいかい? 音羽さん。冷静になってもう一度考えてごらん。
君は智也のことが好きだった。友人としても、一人の男としても」
「ちょ、ちょっと、いきなり何言いだすのよ!!私と智也はそんなんじゃないったら!!」
突然のことに思わず私は狼狽してしまうが、稲穂君は鼻で笑うとかまわず話を進める。
「自分でも気づいてなかったのかい? まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。要は音羽さんにとって智也は大切な人だったってことさ。そして、さっきも言ったように、音羽さんには智也に対して大きな借りがある。
音羽さんには、智也のために何らかの行動をとりたいと思う動機と、智也に借りを返さなきゃならない理由とが共にあるわけだ。
そして、今までの行動をみる限りでは、音羽さんと俺と、どっちがより深く智也と唯笑ちゃんのことを理解しているかは明らかだ。
さぁ、この状態で、好奇心っていう自己満足のために真相究明を徹底することと、現時点で誰よりも二人のことを深く理解している人間の出す指示に従うのと、どっちが智也と唯笑ちゃんのためになると思ってるんだい? 音羽さんは?
繰り返すけど質問は、『音羽さんのためになるのはどっちなのか?』じゃなくって『智也と唯笑ちゃんのためになるのはどっちなのか?』だよ?」
「・・・・・なんだか私、稲穂君のことが大っ嫌いになりそう」
「まだなってなかったの? 言っただろ? 二人のために協力してさえくれれば俺のことはどう思ってくれてもかまわないって・・・」
「・・・安心して、とことん嫌いになれそうだから」
「・・・・・で? 結局、やっと分かってもらえたのかな?」
「うん、稲穂君の非常識極まりない自分の都合オンリーな言い分の主旨はよ〜〜く、わかったわ。
で、当然納得なんてこれっぽっちもできなかったから」
「はぁ・・まさか音羽さんがここまで頑固だとはね・・・今日は音羽さんに驚かされっぱなしだよ、ホント・・」
「ありがと。一応、褒め言葉と受け取っておくね♪」
「で? 俺の説得に欠片も応じないっていう音羽かおるさん? 俺の説得を蹴って、君はどうしようって言うのかな?
言っとくけど、二人にこだわる理由を話せったって、こっちも応じる気なんかないよ?」
「大丈夫。私の考えが間違ってない限り、稲穂君に話す気があろうがなかろうがあなたにこそ選択の余地はないから。それこそ、文字通りにね♪」
「へ〜〜〜っ、そいつは楽しみだな。まだ手札を残してるなんて、これまた予想外だよ」
「ノンノンノン♪ い〜い、稲穂君? 最後に勝つのはね、切り札を最後まで残しておいた方って、決まってるものなのよ♪」
にっこり微笑んで言ってやる。おそらく今の私はさぞかし意地悪な目つきをしていることだろう。だが、この切り札を使ってしまうことを、私は内心恐れていた。
なぜならば・・・

だが、手段を選ばず、一線を踏み越えてしまった稲穂君に対抗するには、もうこの切り札に全てを賭ける以外に道はなかった。刹那の逡巡の時を経て、私の切り札スペードのエースが、ついに表に向けられた。


「白い傘」
一言、ただ一言そう呟いて私は言葉を切った。
「・・・・・・」
一瞬だけぴくりと眉を動かしただけで、それ以上の反応は一切見せることなく稲穂君は私を見つめ続けた。
そして、しばらくの空白の時をはさんで再び稲穂君が口を開く。
「・・・・・で?」
「それで? 『白い傘』がどうしたって?
ひょっとして・・・あれだけの大口を叩いておいて、まさかこれで終わり、なんてことじゃないだろうね? 音羽さん?」
「・・・・・」
私は何も答えずただ稲穂君を見つめ返す。その視線を肯定と受け取ったのか、ほっとしたような小バカにしたような、ため息でも聞こえてきそうな調子で稲穂君は再び言葉を滑らせる。
「確かに、この前は墓地であの『白い傘』に反応してみっともないとこ見せちゃったけど・・・
まさかその言葉を言うだけで、俺が動揺して印籠を見た悪代官みたいに洗いざらい全部白状するとでも思ったの?
だとしたら・・・ちょっと、俺のことを見くびりすぎてるよ、音羽さん」
―稲穂君の言葉に取り合うことなく私はおもむろに口を開く。
「そう・・・やっぱり『白い傘』に反応してあんなふうになっちゃってたんだ」
―稲穂君を追い込むために。
「え?」
―そう、家畜を柵の中に追い込むように・・・
「あのね? まぁ、まずあの『白い傘』が原因で間違いないだろうとは思ってたんだけど・・・
ただ、確証がなかったのよ。ひょっとして、ただ単に智也と話したいのにいつまでも傍をうろついてるデリカシーのない私にぶちぎれた、とかいう可能性もないわけじゃなかったでしょ?
で、本当の理由がどうあれ本人にそういう風に言われてしらばっくれられたらお終いじゃない? だって稲穂君が激怒した理由を、本人以上にわかる人なんているわけないんだから♪」
「え? え・・・あ・・ああっ、クソッ!! カマかけたのか!?」
「カマかけただなんて、そんな人聞きの悪い・・・あの時一体何が起こったのかを再確認しただけじゃない♪ 
ま、これで、あの時稲穂君が突然逆上してしまった原因は、『白い傘』という言葉だったということは間違いないわけね。なんて言っても、本人自らが誰に強制されたわけでもないのに、『白い傘』に反応してみっともないところを見せた、って証言してくれてるんだから♪」
「あぁ、もうこれじゃあ過小評価してたのは俺の方じゃないか!!」
「ふふ、ま、そういうことね♪
それじゃ、アレが原因って認めたところで、きりきり白状しようね。
で、結局あの『白い傘』って何なの? 智也や今坂さんと関係してるんでしょ?」
―そして、柵を閉めた私は。
「・・・知らないな」
―再び家畜ににじり寄る。
「あれ〜〜? 今度はだんまり作戦? そういうのは、男らしくないなぁ」
―今度は屠殺場へと追い込むために・・・
「男らしくなくて結構。これ以上墓穴を掘るつもりはないよ。
で? 音羽さんはこの後どうしようっていうんだい? 確かに、俺はこの前、『白い傘』って言葉に反応してみっともないとこみせたのは認めるよ。でもだからどうだって言うんだい? 『白い傘』に反応して取り乱したことが、今回のことに何か関係してるのかい?」
―哀れな家畜は、右へ左へと逃げ惑う。
「もちろん関係しまくりじゃない♪」
―家畜は知らない。
「・・・その根拠は?」
―右に行こうと、左へ行こうと、行きつく先は変わらないということを。
「根拠、ね。それはあの時あの場で稲穂君があれだけの反応を示した、それで十分よ。
私もいろいろ考えたのよ。何で稲穂君はあんなに取り乱したんだろうって。それで、結局いきついた答えは3つあったの。
仮説@ あの時稲穂君は、智也と二人でゆっくりと話したかった。けれどもいつまでもその場に残って見当違いなことを言い続ける私に、ついに我慢の限界を超えてしまい暴走。つまり『白い傘』とは、ただ単に私にいちゃもんをつけるための口実にすぎず、深い意味は持っていない。
シンプルだけど捨てきれない可能性よね。でも、さっきの稲穂君の言葉から考えれば、この仮説が間違っていることは明らかね。
仮説A その詳細はともかくとして、稲穂君は『白い傘』に対して大きな傷を持っていて、『白い傘』という言葉には無条件に反応してしまう。
私、最初はこれが本命かと思ってたの。でも、今までの怖いぐらいの冷静さをみてると、これもちがうなぁ〜〜って。で、さっき念のために確認したけど、やっぱり大外れだったってわけ。
で、最後に仮説B
『白い傘』と智也と今坂さんのことは、何らかのつながりがある」
―自分に待ちうける運命は変わらないということを。
「・・・・・」
稲穂君は、ただ何も言わずに私の話に耳を傾けている。私もそれに応じて自分の仮説の最後を締める。
「これなら、冷静沈着なはずの稲穂君があそこまで取り乱したのだって納得がいく。
ねぇ、そうなんでしょ? 稲穂君」
―そして、屠殺場の入り口に立った家畜は、その戸の向こう側を知ることなく・・・
「・・・・・
さすがだね・・・
確かに・・・筋が通ってる・・これでもか、って位に正論だよ」
静かに私の仮説に感想を言う稲穂君に、私も静かに、囁くように言葉を返す。
「じゃあ・・・教えてくれるの?」
―最後にひと鳴き。


フワ・・・
これで何度目だろうか? 数え切れないほどの回数を、夜風が変わることなく吹き抜けてゆく。
稲穂君は・・やっぱり素直にうなずいてはくれないだろうな・・・
もう、私にも、わかった。
その理由はわからないけど、きっと、私が暴き出そうとしていることは、きっと他人が触れていい部分ではないのだろう。稲穂君にとっての『白い傘』とは、私にとっての『砂の城』のようなものなのだろう。私は酷いことをしようとしているに違いない。
私は、稲穂君の心に土足で上がりこもうとしているのだろう。
でも・・それでも、私は・・・
ねぇ、稲穂君。稲穂君は言ってくれたよね?
俺を恨んでくれていいって・・・
私は・・恨んだりなんかしないよ・・・だって、恨まれるのは・・・
恨まれるべきは・・・
『私』
なんだから。
ごめんね、稲穂君。きっと稲穂君にも、いろいろあったんだよね? 今も、つらくて、苦しくて、哀しいんだよね?
だって、稲穂君が・・・
智也の一番の親友だったんだから!!
哀しくないわけないのに、つらくないわけないのに、苦しくないわけないのに、いつも平気な顔して、ただ今坂さんのことを考えて、自分の痛みを閉じ込めて、誰にもどこにも、そんな様子は少しも出さないで、いつもと変わらないように振舞って・・・
ねぇ、稲穂君。あなたが何を背負っているのか、私は知らない。
でも、今日、今から、私はあなたの心を覗いてしまう。
あなたの扉を、勝手に無理やり開いてしまう。
許して、なんてそれこそ言えないと思う。
でも、それでも、私は・・・真実が知りたい。
真実を知らなければ、何もすることはできないと思うから。
智也との約束も、今坂さんを助けることも、そして、
また『砂の城』を作ろうと、私が私の心の扉を開こうとすることも、
何もできないと思う。
だから、あなたに開いてみせた、このカード。
使うことにするよ・・・


「まさか。何度も言うけどさ、俺が二人にこだわる理由は何度何と聞かれようとも、絶対に答えはしないよ、俺は。
大体、音羽さんの仮説にしたところで、筋が通ってるのは確かだけど、それだけだ。
つまるところ、単なる憶測にすぎないじゃないか。何の証拠もありはしない。
仮に証拠があったところで、ここは法廷じゃない。俺が『知ったことか』と一言言ってしまえばそれまでだ。音羽さんは俺に対して何の強制力も持ってはいないんだからね」
稲穂君は、肩をすくめて動かしがたい事実を告げてくる。
そう、どんなに正論を並べ立てて稲穂君を論破しようと、結局稲穂君が自らしゃべる気にならなければ真実が明かされることはない。だから、私はそれを認めることにした。
「そうね」
そして、わたしもまた、稲穂君と同様、一線を踏み超えてしまう・・・
「???」
―屠殺場の戸が、地獄への扉が、家畜の前に開かれる。
「だから・・・ 今坂さんに聞くね。
『白い傘』って何? って!!」
―そして私は、家畜に、稲穂君に、囁きかける。チェック・メイト・・・と。
「なっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そう、こう言ってしまえば・・もう・・・
「だって、今坂さんが無関係なら、聞いても問題ないし、関係あるんなら、『白い傘』が今坂さんに聞かせられないような言葉なら、今、稲穂君が話してくれるでしょ?
話さざるを、えないでしょ?」
稲穂君に・・選択の自由はないのだから・・・
「お、音羽ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
そして、断末魔の絶叫が、夜の公園に響き渡った・・・

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---あとがき----
みなさん、こんにちは、コスモスでっす♪
ナイトメア第八章「奪い去られし、自由」いかがだったでしょうか〜〜? 今回は、最初すごい楽にサクサクっと書き進めることができたんですが、途中で、1回間を開けてしまったら、なんだかYシャツのボタンが全部掛け違いになっているような猛烈な違和感に襲われました。他の方にチェックして頂いたりしてさらに間を空けて見直したら、今度は自分でどこに違和感を感じていたのかがわからなくなってしまいました。確かに間違いなく頭をかきむしりたくなるような違和感を覚えたのですが、結局どうにもしないまま、(というよりできないまま)アップということになりました。
ああああああ〜〜〜〜、アレは一体なんだったんだぁ〜〜〜!!!!
『木を見て森を見ざるが如し』と言いますが、なんだか森を眺めてる間にどの木を見ていたのかの区別がつかなくなってしまったような気分です。
『見切った、ここだああああ!!!』というのを、もしお気づきになられましたらぜひ私にも教えてやってくださいm(_ _)m
ところで、今回は、かおるの猛反撃が、信を完全撃破したわけです。で、当然ながら、いよいよ次章では、今までずっと伏せられていたあの人のラストシーンです。言うまでもないことですが、かなりの山場です。ただ、これまで、このシーンに向けていろいろ伏線を張ってきたのですが、たぶん通読ではない方はすっかり忘れ去られていると思います。
(書くの遅くてごめんなさいです(T-T)
そこで、作者からのお願い(?)です。ナイトメア第九章「彼の者は往かん、遥かなる高みへ」は、お読みになられる前に、プロローグから、第三章までをもう一度読んで頂けると嬉しいです。きっと、より楽しく読んで頂けるのではないかな、と思います。
それでは今日はこの辺で。次は、第九章のあとがきでお会いしましょう♪
ごきげんよう(^o^/~~~~~


Produced by コスモス  deepautumn@hotmail.com



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