そして、空は暗く、昼というのが嘘のようだった、あの日のあの瞬間。
白い傘は、空へと舞い上がっていった・・・
舞い上がった傘は、雨に煙る空を漂いながら、ゆっくりゆっくりと回転していた。
くるくる、くるくると・・・
白い傘が、徐々に俺の方へと舞い降りてくる。
傘と俺との距離が縮まると共に、白い傘はどんどんと大きくなってゆく。
やがて、俺の視界の全てを覆い尽くした白い傘は、俺の意識までをも呑み込んでゆく。
白い世界へと呑み込まれ溶かされてゆく中、俺は思う。

まず、一人・・・


(・・・今度は・・お友達だね・・・)
気づけば俺は、白い世界に佇んでいる。
そして、あの子の囁きに、今が2月14日、バレンタインデーのあの日であることを理解する。
大地は白い雪に包まれていた。
降り積もった雪が、世界を白く染め上げていた。
白く。まぶしいくらいに、白く・・・
不意に、鈍い音が耳に届く。
その直後、なにか大きなシルエットの物体が、放物線を描いて俺の視界を横切ってゆく。
ドサッ。
白い雪に横たわったその物体に、すがりつく人影があった。
その物体からは、紅い世界がにじみでていた。
紅い世界が、雪を、人影を、全てを紅く染め上げてゆく。
紅く。
まぶしいくらいに、紅く・・・
やがて、俺の意識もまた、紅い世界へと取り込まれてゆく。
紅い海の中を漂いながら、俺は思う。

また、一人・・・


「・・・・・・・・・・」
目覚めの時を迎えた俺は、ゆっくりゆっくりと目を開いた。
見慣れた天井が、俺の瞳に映る。
いつもと同じ、いつもと変わらない朝。
いつもと同じように、冷たい寝汗で服をぐっしょりと濡らし、いつもと変わらない呟きをこぼす。

「今度は・・誰を・・・?」


Memories Off Nightmare
第十二章「森の賢者の占い館」
 Produced By コスモス



「双海さん、おっはよぉ〜〜〜♪」
読書にふけっていた詩音に対し、唐突に明るい挨拶が投げかけられる。
詩音が顔を上げると、彼女の隣の席の住人、稲穂信が登校してきたところだった。
「おはようございます、稲穂さん」
毎朝のことながら、どうして彼はこうも朝からハイテンションでいられるのだろう?
そんなことを考えながら、詩音は挨拶を返す。
「う〜〜〜ん、今日も朝から読書かい?」
いつものことながら、どうして彼女は本ばかり読んでいられるのだろう?
そんなことを考えながら、信はその考えを口にする。
なぜか苦笑を浮かべながら、詩音が本を閉じる。
どうやら本格的に話をする態勢に入ったようだ。
「ええ、私、本は好きですから。
それよりむしろ、私には稲穂さん達が本を読まれないことの方が不思議に思えるのですが?」
「ハハハ、相変わらず双海さんは厳しいなぁ〜〜〜」
信の口から乾いた笑いがこぼれる。
「どうも活字ばっかりの本はね・・・
多少は読んでみたくもあるんだけど、俺、難しい本を読んでると眠くなる体質なんだよ」
「それはもったいないですね。
本とは、先人の知識と想いが形となって著された、今を生きる私達にとって、どんな宝物にも勝る至高の遺産なのですよ?」
「いや〜〜、どっちかって言えば、俺としては宝物の方が・・・」
「稲穂さん!?」
「は、はいっ?」
「本はどんな宝物にも勝ると、稲穂さんも思いますよね?」
「い、いや、だから・・・」
「思わないのですか!!?」
「思いますよね!!!!」
「は、はい、ボクも、本は人類の宝だと思います・・・」
有無を言わせぬ詩音の迫力に、たじたじとなった信には、首をかくかくと振りながら本の素晴らしさを賛美することしか出来なかった。
「そうですよね!!やっぱり本は素晴らしいものですよね!!」
詩音は満足そうにうんうんと頷きながら、上機嫌に恐ろしいことを言い放つ。
「それじゃあ、私が何冊かお勧めの本を選んであげますね♪」
「へ!?」
もうすでに、詩音の中では信が読書をすることは決定事項のようだ。
「そうですね。最初はこれなんかどうです?挿絵とかが多くて読みやすいですよ?」
詩音が手にしていたのは、『世界童話全集第一巻』ちなみに厚さは約5〜10センチのスーパーハードカバーで、全13巻の名作選らしい。
ドサッ。
「・・・・・」
「それからやはり稲穂さんは日本人なのですから、日本文学の名作も読まれた方がいいでしょうね。
これなんかはどうですか?」
今度詩音が手にしていたのは、『羅生門』『我輩はぴょん吉である』これまたごつい装丁に包まれた本だった。ちなみにこちらは挿絵も少なく、字も細かく、漢字にも振り仮名はついてはいないようだった。
ドサドサッ。
「・・・・・・・・・・」
「そうそう、日本人ということから考えれば、自国の歴史や古典文学についても触れておいた方がいいですね」
詩音が次に手にしていたのは、『古事記』『伊勢物語』『学問のすすめ』ちなみにこれらは全て現代語訳がされておらず、原文を忠実に写した物らしい。
ドサドサドサッ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「それから稲穂さんは、これからグローバル経済下の国際社会日本で生きていくのですから、海外情勢・社会経済・宗教・文化についての知識も必須ですよね」
そして詩音が手にしていたのは、『世界ミリタリーバランス2002』『資本論』『コーラン』『人肉文化紀行 ヒトの肉はどこが美味しいか』ちなみに最後の1冊は何かが間違っている気がするのだが・・・
そういう趣味なのだろうか?
ドサドサドサドサッ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉もなく呆然とする信に構うことなく、次々と机の中から分厚い本を取り出しては積み上げてゆく詩音。
お前の机は4O元ポケットか?そうつっこみを入れたくなるぐらいの書籍が信の机に山と積まれていった。
そして詩音は言った。
「あと、おまけで私のコレクションをお付けしますね♪」
ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサッ
「ふぅ、最初はざっと、これくらいでしょうね♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
うず高く積み上げられた本の山を満足そうに見上げながら詩音が口を開く。
「じゃあ、来週までに読んできてくださいね♪」
「読めるかあああああああああああああああああああああ!!!!!」
信の絶叫が、朝の教室にさわやかに響き渡るのだった・・・


それから数分後、信の机からは本が片付けられ、朝の寸劇はようやくにして幕を迎えた。
「ところで、今朝はどんな本を読んでたんだい?」
「占いについて書かれた本ですよ」
信の質問に詩音が自分の本を開いて見せながら答える。
詩音が開いて見せた本は、中身も黒い装丁もひたすらにごつく、適度な古さもあり、いかにもといった雰囲気の漂った妖しげなモノだった。
それを見た信の瞳に好奇の色が宿る。
「双海さんって、占いなんか出来るの?」
「ええ、プロの方ほどではありませんが、ある程度なら・・・」
「おおっ!!すっげぇ〜〜〜〜!!!
「ただ私の占いは神社のおみくじの占いとは違いますからね、必ずしもいい結果が出るとは限りませんよ」
「へ〜〜〜。でも、かえってそういう方が信憑性はあるんじゃない?」
「さぁ、どうでしょうか?・・・なんでしたら、稲穂さんを占ってみましょうか?」
「へ?俺を?」
「はい、稲穂さんをです。
・・・・・大凶かもしれませんけど」
「・・・・・・・・・・」
微妙な間が、2人の間に落ちる。
そして一瞬の沈黙の後、詩音が小さな笑みを浮かべる。
「・・・・・怖いのですか?」
「そ、そんなことないって!!」
「では、占ってみますか?」
「ああ、いいよ」
「では、稲穂さんのお名前の総画数は?」
「総画数?性と名、両方あわせて?」
「ええ、両方です。」
「え〜〜と・・・22、かな?」
「??? なんだか少なくないですか?」
「そんなことないよ。ちゃんと数えたからね♪
で、総画数だけでいいの?」
「あ、はい。あと誕生日もお願いします」
「・・・3月20日で」
「わかりました。姓名の総画数が22で、誕生日が3月20日、これに間違いはありませんね?」
「ああ、大丈・・ブッ!!」
パシィ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!
「ちょ〜〜〜っと、稲穂く〜〜〜ん♪
姓名の総画数が22で、誕生日が3月20日って、いったい誰のことかな〜〜〜?」
信が頭を抑えて振り向いた先には、額に青筋を浮かべた笑顔のかおるが仁王立ちをしていた。
そのかおるの後ろには、唯笑も控えている。
そして、なぜか2人の手にはかなり巨大なハリセンが握られている。
先ほど信が張り倒されたのもこのハリセンだった。
ちなみに、かおるの額に浮かんだ青筋の具合からして、相当力一杯殴られているのは間違いないだろう。
「いたたたた、お、音羽さん、いきなり殴らなくったって・・・
だいたいこのハリセンはどっから?」
「ふふ〜〜ん♪ 信君、驚いたでしょ〜〜
これはねぇ、信君達が本を積み上げはじめたのを見て、きっとしょ〜〜もない落ちがつくだろうから今の内に作ろうって、音羽さんが先読みしてくれたんだよ。
ね、音羽さん♪」
唯笑が嬉しそうに解説する横で、かおるがうんうんと頷いていたりする。
「な、なんて余計なことを・・・」
「ねぇ、ねぇ、詩音ちゃん。
その占い、唯笑にもやってよ〜〜〜」
「・・・・・・・・・・」
「詩音ちゃん?」
「・・・え!?あ、はい、わかりました。では今坂さんの姓名の総画数と誕生日を教えてください」
「えっとねぇ〜〜、唯笑の総画数と誕生日が、32画と7月12日。
で、信君が、38画と1月4日だよ」
「え!?唯笑ちゃん!!なんで俺のまで言ってるんだよぉ!!
それじゃあ、何のために・・・ハッ!!!」
「何のため・・・かなあ?」
「い、いえ、みんなで仲良く占いができて、ボクはとっても嬉しいです」
「この占いは、相手を鳥に見立てる鳥占いなのですが、ではまず今坂さんから・・・」
・・・・・・・・・・
一瞬の間の後、詩音が顔を上げる。そして、クスリと微笑む。
「この占い、やっぱり当たりますね♪
今坂さんは『鳩』だそうです。
平和の象徴たるこの鳥と対を為す貴方は、いつの間にやら周りを和ませ癒してくれるそうです」
「うわ〜〜〜、唯笑、鳩さんだったんだ〜〜〜〜」
「周りを和ませる・・・今坂さんの場合だと、なんか良くも悪くもって気がしないでもないけど当たってるね・・・」
「癒す・・・?唯笑ちゃんが?
・・・ま、まぁ、場が和むのは和むよね、ハハハ・・・」
「うう〜〜、なんか二人して酷いこと言ってるよぉ〜〜」
「では、続いて音羽さんを・・・」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
先程よりもかなり長い沈黙が続く。
コクリと、小さく詩音の喉が動く。
詩音が動揺している。それは傍目にも明らかだった。
わずかな逡巡の後、顔を上げた詩音はいつもの彼女だった。
「ね、ねぇ、いったい私なんだったの?」
「日頃の行いから考えるとハゲタカか、ハゲワシか・・・それとも裏をかいてアホウドリとか!?」
カツッ!!
「グギョッ!!!」
やたらと硬質な音が響くと同時に、突如奇声を発して信が頭を押さえてうずくまる。
その横には、ハリセンを竹刀のように構えたかおるの姿が。
彼女は、ビラビラと開かない柄の方が剣先になるように本来とは逆向きにハリセンを持ち、かつ縦に正眼に構えていた。
確かにこれでどつかれたのならシャレではすまないだろう。
実際、さっきの音は、紙製のハリセンというよりは角材で殴られたといった感じだ。
しかも、のた打ち回る信を、詩音の冷静な一言が突き放す。
「自業自得です」
「ねぇねぇ、音羽さんは何なの?詩音ちゃん、早く〜〜〜」
唯笑に至っては、見向きもしなかったりする。
「ええと、稲穂さんに話の腰を折られてしまいましたが続きいきますね。
音羽さんは『金翔鳥』つまり『ガルーダ』だそうです」
「私が・・・ガルーダ?」
「はい、この本の原文にはこう書かれています
『遥かなる天空より降立ちし、美の女神よりも美しき汝よ!!
数多の生き物をもひれ伏せさせてやまない、光の神王よりも王者たる汝よ!!
我は、汝を称讃しよう!!
美しき哉!!気高き哉!!清らかなりし哉!!
おお、金翔鳥よ!!
太陽の如く燃えよ!!黄金色に輝け!!
朝日を受けし海原の如く、我に輝きを与えよ!!
我が双眼を黄金色で焼き尽くせ!!
おお、金翔鳥!!おお、金翔鳥よ!!!
我は汝を称えよう!!我は汝を愛そう!!
汝こそが、汝だけが、金翔鳥なのだから!!!』
・・・・・・・・・・以上です。
いかがですか?」
『お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
見事に信・唯笑・かおるの3人の声がはもる。
にこりと笑って詩音が解説をはじめる。
「私もびっくりしてしまいましたよ。
ガルーダは王者の中の王者。
美しさと気高さをあわせ持った至高の存在なのです。
ですからガルーダと対をなされる方なんて10,000人に1人位しかいらっしゃらないはずなんですよ?」
「うわ〜、音羽さん、すっご〜〜〜い!!」
「なるほどな〜〜〜
双海さんでも、固まっちゃうわけだ〜〜」
「え、ええ、まさかガルーダが出るとは私も思ってなかったものですから・・・」
「フッフッフ〜〜♪や〜〜〜っぱり、私は王となるべくして生まれてきた、神に選ばれた人間だったのねぇ〜〜♪」
「うわ〜〜、音羽さん、すっご〜〜〜〜〜〜〜い!!!」
「でしょでしょでしょでしょ〜〜〜♪
なんてったって、美の女神よりも美しいんだから〜〜♪」
「うわ〜〜〜、音羽さん、すっご〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!」
「双海さん? あれが・・・ガルーダ?」
「・・・聞かないでください」
「所詮は占いか・・・」
「・・・・・・・・・・」


かおると唯笑が一通り騒ぎ終わり落ちついた後・・・
「で? 結局俺のはどうなったの?」
「あ、そうだよ〜〜、唯笑、信君の前世も知りたいよ〜〜〜!!」
「前世占いじゃありません!!!」
「まぁまぁ、双海さん♪そんな細かいことはいいから早いとこ占ってあげてよ。
早くしないとこっちの話ができなくなっちゃうからさ♪」
「あ!! 唯笑あの話、完全に忘れちゃってたよぉ〜〜」
「・・・・・? まぁ、話が良く見えませんけど、ともかく稲穂さんを占えばいいんですよね?」
「そ〜〜ゆ〜〜こと♪」
「では・・・」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先程よりもさらに長い沈黙が続く。
ゴクリと、大きく詩音の喉が動く。
詩音が激しく動揺している。それは傍目にも明らかだった。
「ああ、校庭の桜がきれいですねぇ〜〜〜」
わずかな逡巡の後、顔を上げた詩音はわざとらしさ全開だった。
「ちょっと、まてぃ!!」
「は、はい?」
「占いはどうした!! 占いは!?」
「あ、そうでした。占いの途中でしたね。
ちなみに私は総画数が35画で誕生日が2月3日なんですよ。
稲穂さん、知ってましたか?」
「いや〜〜、全然知らなかったよ〜〜。で、俺の占いは?」
「え? そんなに私の占い結果が知りたいのですか?
仕方ないですねぇ〜〜〜」
「・・・うんうん、仕方ないねぇ〜〜。で、俺の占いは?」
なにやら、詩音と信の間で激しい駆け引きが繰り広げられているようだった。
本人達は極めて大真面目なのだが、どうにも間の抜けた光景にしか見えない。
2人の隣では、やや困惑気味のかおると唯笑が、曖昧な笑みを浮かべて突っ立っている。
そんな二人の存在などとっくに忘れ去った2人のバトルは、いよいよ佳境へとさしかかろうとしていた。
「実はですね。
この占いによると、私はフクロウだったんですよ。
フクロウですよ!?稲穂さん、フクロウのすばらしさをご存知ですか?
フクロウはその落ち着いた物腰と知的な容貌から、『森の賢者』として古来より人々に敬愛されてきたのです。
ですから、この知性の象徴たるフクロウと対を為す私は、その知識を持って人々のお役に立てることが約束されているのです。
どうです?すばらしいと思いませんか!?」
信に口を挟ませまいと、らしくもなく饒舌に語る詩音。
「へ〜〜〜。フクロウって凄いねぇ〜〜。で、俺の占いは?」
だがこのフクロウは、口先三寸における知識は不足気味なようだった。
単に相手が悪かったのかもしれないが、信のわずか一言で、あっさりと話を元に戻されてしまっている。
詩音の頬を流れる一筋の汗が、現在の彼女の戦況を物語っていた。
それでも詩音は、決してあきらめようとはしなかった。
「あ、そうそう今坂さん、先程のお話は結局なんだったんですか?」
今度は、完全に観戦モードに入っていた唯笑に話の矛先を向ける。
「ふぇ?
え〜〜〜とね、唯笑のお父さんが会社で遊園地のフリーパスチケットをもらってきてくれたの!!
だから、今度の日曜日に4人みんなでいけないかなって思ったんだけど・・・」
「遊園地ですか!?
それはすばらしいですね」
「うんうん、それはすばらしいね〜〜〜
で、俺の占いは?」
「・・・・・・・・・・」
「あの〜〜、私も占いの方の結果が知りたいんだけど・・・」
またもあっけなく撃沈。
しかも、今度はかおるからまで、牽制のジャブが飛んでくる。
沈黙と共に、詩音の頬を二筋の汗が流れる。
「・・・どうしても知りたいんですか?」
「どうしても♪」
「どうしたって、どうしてもですか?」
「どうしたってどうしても♪」
「・・・はぁ、仕方ないですね。
私、知りませんよ?」
「?????」
「・・・・・・・・・・です」
「はい? なんだって?」
「・・・・・トリです」
「だから良く聞こえないんだってば、なんてトリなの?」
「詩音ちゃん、信君に遠慮なんかしないで、ガッツ〜〜〜ンと言っちゃってよ♪」
「そうだそうだ、言っちゃえ〜〜♪」
信の追及と、お気楽な野次が飛ぶ。
とうとう観念した詩音は、いったん言葉を切って一呼吸置く。
そして一言。
「・・・ニワトリです!!!」
「俺が・・・ニワトリ?」
「え、え〜〜と、ニワトリもいいよね。ほら、なんていうか、アレだから・・・」
「わ〜〜〜、信君、ニワトリなんだ〜〜〜〜〜♪」
パシッ、パシィ〜〜ン♪
呆然とする信。無理なフォローを試みるかおる。とりあえず無駄に喜びながらハリセンで信を連打する唯笑。
三者三様のリアクションを横目に詩音が冷静な解説を加えていく。
「そうです、古今東西を問わず、いつの時代もどこの国でも常に人類と共にあった、人類に最も愛され、最も都合よく利用されてきた鳥です。
この、最も人類の生活に貢献してきたニワトリと対を為す貴方は、尽くしても尽くしても、万事において報われることはないでしょう。
そんな貴方を一言で表現するならば、『苦労人』となります。
ちなみに原文の方はと言いますと・・・
『おお!!白き衣を身にまといし汝よ!!
古よりも我らに仕えし愚かなる汝よ!!
汝の足は美味!!汝の胸は美味!!汝の卵は美味!!
・・・・・以下略』
といった感じで激しく語りかけてますけど、続き、聞きたいですか?」
「・・・・・いえ・・・もう・・いいです・・・・・」
言葉すくなにそう答えた信は、教室の床にしゃがみこんで『の』の字を書いていた・・・
その哀愁漂う信の背中に、誰もがフォローを入れることができずにいた。
後には、ただただ虚しい沈黙だけが残っていた。
やがて、朝のさわやかな一時にも終わりの時が訪れる。
リ〜〜〜〜〜ン ゴ〜〜〜〜〜ン・・・
響き渡った朝のチャイムが、燃え尽きた信の脳を、そっと優しくゆすいでいた・・・




リ〜〜〜〜〜ン ゴ〜〜〜〜〜ン・・・
5時を告げる鐘の音が、誰もいない教室に時を告げる。
窓から差し込む夕日が、教室を紅く染め上げていた。
紅く。
まぶしいくらいに、紅く・・・
紅く染まった机の上に、一冊の本が置き忘れられていた。
まぶしいくらいに紅い世界の中で、その本だけが昏い闇色に沈んでいた。
パタン・・・
唐突に、無人のはずの教室で、乾いた音が響き渡る。
厚く重い表紙が、開いていた。
ヒュゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜パラパラパラパラ・・・
そして、突如吹き抜けた一陣の風が、よどんだ教室の空気をかき混ぜてゆく。
風を受けた埃が舞い上がった。数枚の紙と共に・・・
気づけばピッタリと閉じられていた闇色の本が、とあるページを指し示して佇んでいた。


遥かなる天空より降立ちし、美の女神よりも美しき汝よ!!
数多の生き物をもひれ伏せさせてやまない、光の神王よりも王者たる汝よ!!
我は、汝を称讃しよう!!
美しき哉!!気高き哉!!清らかなりし哉!!
おお、金翔鳥よ!!
太陽の如く燃えよ!!黄金色に輝け!!
朝日を受けし海原の如く、我に輝きを与えよ!!
我が双眼を黄金色で焼き尽くせ!!
おお、金翔鳥!!おお、金翔鳥よ!!!
我は汝を称えよう!!我は汝を愛そう!!
汝こそが、汝だけが、金翔鳥なのだから!!!

汝を喰らえば、全てが我が物となるのだから!!!


フフフ・・・アハハハ・・・
風の悪戯だろうか?
少女のような少年のような幼い笑い声が、紅い教室で虚ろに木霊していた・・・



>>十三章へ



あとがき

コスモス「皆さん、こんにちは!!ここにメモオフナイトメア第12章『森の賢者の占い館』をお送り致します!!ちなみに、『うらないかん』ではありません。『うらないやかた』ですのであしからず〜〜〜」
かおる「こんにちは〜〜、輝ける鳥達の王者、ガルーダこと音羽かおるで〜〜す♪」
詩音「森の賢者、双海詩音です」
唯笑「平和への道標、今坂唯笑でっす♪」
信「明日のお弁当にどうぞ、稲穂信です」(T-T)
コスモス「はい、今回はとある方のSSを読んで無性に座談会をやりたくなったのでこの形式であとがきをいってみたいと思います〜〜それでは、レッツ・スタート〜〜〜♪」
詩音「ええ、それではコスモスさんにお尋ねします。今回は一応、私がヒロインという扱いになるのでしょうか?」
かおる「え〜〜?ああいうのは、ヒロインというよりはいじられ役じゃ・・・」
信「確かに、最初から最後まで俺と掛け合いやってたもんな〜〜〜」
詩音「はぁ、やっぱりそうなのですか・・・」(T-T)
コスモス「は、はは、まぁ一応今回のメインは詩音と信だけど、やっぱりメインではあっても、ヒロインって感じじゃないよねぇ〜〜見せ場らしいところって言ったら、ガルーダの詩の朗読ぐらいかな?」
唯笑「ねぇねぇ、コスモス?あの詩って全部自分で考えたの?なんかけっこうかっこいいよねぇ〜〜〜」
コスモス「ああ、アレは部分的にはパクりと言うか、意識してダブらせたとこがあるけど、基本的にはオリジナルだよ」
かおる「パクったって、どこをパクったの?」
詩音「『美しき哉!!気高き哉!!清らかなりし哉!!』の部分ですか?」
コスモス「お♪さすがは詩音」
唯笑「ええ〜〜〜、唯笑全然わかんないよ〜〜〜ヒント!!ヒントちょうだ〜〜い!!」
信「フッ、ヒントなら俺が出してあげるよ、唯笑ちゃん♪」
かおる「え、稲穂君がわかったの!?稲穂君がわかってるのに私わかんないよ・・・凄いショック・・・」
信「・・・・・い、今の発言の方が・・・」(^^;
唯笑「信君、そんなことよりヒント早く〜〜〜〜!!」
信「あ、はいはい、某有名潜水艦漫画『沈没(!?)の艦隊』で、アル中副大統領さんがなんかのたまってるのでそこを参考にしてごらん♪」
唯笑「は〜〜〜い♪」
詩音「ところでこれまでずっと1人称で通されてきたのに、今回は3人称で書かれてましたよね?どういった心境の変化です?」
コスモス「飽きた」
かおる「そんだけ?」
コスモス「そんだけ」
『・・・・・・・・・・』
コスモス「ひ、ひかないでよ!!だってもうこのナイトメアもう12章だよ?字数換算したら10万字位はもういこうって量だよ?そんなに1人称ばっかやってられっか〜〜〜!!って感じにもなるって、絶対!!」
唯笑「不良作者〜〜〜♪」
かおる「でたらめ作者〜〜〜〜♪」
信「行き当たりばったり作者〜〜〜〜〜♪」
コスモス「くっそぉ〜〜〜〜〜!!言いたい放題言いおってからに〜〜〜〜!!!
今にみてろ〜!!作者の職権乱用でえらい目に合わせちゃるからなぁ〜〜〜〜!!!」
唯笑・かおる・信『うわっ、せっこ!!!』
コスモス「せこい、ゆ〜〜なぁ〜〜〜〜!!!うわ〜〜〜〜ん」(T-T)
シュタタタタタタタタタタタ〜〜〜〜〜〜
詩音「・・・・・え、ええと、都合により作者が早退しましたので、本日の第12章あとがき座談会はこれでお開きにしたいと思います。それでは皆様♪
ごきげんよう!!!」(^o^/~~~~~



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