二人のサンタと天使は、とても楽しそうでした。
二人で一生懸命プレゼントを運んでいます。


〜SANTA AND ANGEL〜
                              作 BREAKBEAT!

後半 天使の涙

リョウとココはプレゼントを配っている最中でした。
一つ一つの家を回り、子供達を起こさないようにプレゼントを靴下に詰めこみます。
仕事をこなしているうちに、回る家はあと三つになりました。
「さ〜て、次は・・・ホクト=マツナガとサラ=マツナガの家だな」
リョウは手綱を片手にし、もう片方に握られているメモを見ました。
「な〜に?今度は兄妹なの?」
「あぁ・・・ここあたりのはずなんだが・・・あ、あったあった」
リョウはメモをポケットにしまい、プレゼントが入った袋を取り出し壁に手を当てました。
「壁に住みし精霊よ、我に従いし光よ、汝ら我に力を貸し、我に障壁がないことを示せ・・・ゴヲール!」
壁から手を離し、リョウは額の汗を拭きました。
「ふぅ・・・流石に連続して魔法を使うと疲れるな。ココ、行くぞ」
「うん!」
夜というだけあって、部屋の中は真っ暗でした。
「真っ暗だね・・・」
「そうだな〜。ここまで暗いと何も見えやしねェな」
「・・・だったら、この魔法でどう?」
ココは片手を出して、目を閉じました。
「光ありところに闇あり、ならば、闇ありしところに光りあることも世の理なり・・・ライア」
魔法を唱えると、ココの右手に暖かい光が生まれました。光は部屋の中を優しく照らしました。
「その魔法は覚えなくていいのか?」
「この魔法?う〜ん・・・リョウちゃんにだけ、特別に教えてあげようかな?でも、あとでね」
にこっと笑うココはとても楽しそうです。久しぶりに会った友達と話をする子供みたいに話します。リョウは、その笑顔に同情を隠しきれませんでした。
「あ、あぁ・・・とりあえず、プレゼントが先だな」
リョウがベッドを見ると、小さな男の子と女の子が安らかな寝息を立てていました。
「よく眠ってるな」
「そうだね・・・きっと、仲がいいんだろうね?」
男の子は、女の子を優しく包み込むように女の子の肩に手を回しています。
「あぁ、こんな風に寝ていられるんだ。仲が良いに決まってるよ。おっと、靴下はっと、これだな」
二人が寝ているベッドに並んで吊るされた靴下を見つけてリョウは袋から取り出した青い箱と、赤い箱をそれぞれの靴下に詰め込みました。
「ねぇねぇ?リョウちゃん。このお魚なにかな?」
「ん?熱帯魚でもいたのか?ん?うぉ!」
リョウは慌てて口を塞ぎました。
「シー!リョウちゃん声が大きい」
そんなリョウを、ココは叱ります。
リョウは何でそこまで驚いたのでしょうか?その答えは・・・この大きな水槽にあります。
「なんで、マグロ飼ってんだよ?」
「マグロっていうの?このお魚。かわいいね」
「・・・そうか?」
ココの美的センス(?)がどんなものか知りたいですね。
「おっと、長居してる暇はないぞ。次に行くぞ」
「あぁ!まってよ〜」
そういって二人は、部屋を後にしました。

しんしんと雪が降り、それでも星が見える夜空・・・
とても神秘的で、とても不思議な夜・・・
幸せの一時・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「次はこの家だな」
「今度のおこちゃまはだ〜れ?」
「お前が言うべき台詞じゃないと思うんだが・・・えぇっと・・・タケシ=クラナリだな」
リョウとココは、さっそく『ゴヲール』でタケシという男のこの部屋に入ります。
「お?寝てる寝てる」
「ぐ〜が〜。ぐ〜が〜」
大きなイビキを書きながら、元気そうな男の子が眠っていました。
「さ〜て・・・靴下は・・・お、これだな」
リョウが靴下にプレセントを詰めているとココが・・・
「あ〜あこんな格好で寝てたら風邪ひいちゃうよ」
と、タケシに布団を掛け直していました。それを見ていたリョウは、なぜか悔しそうです。いったいどうしたんでしょうか?
「?リョウちゃん、この子・・・なんか持ってるよ?」
「これは・・・ノートか?うわ、きたね〜字」
タケシの手から取ったノートをパラパラとめくるリョウ。途中までめくってると・・・
「はは!『サンタを捕まえてプレゼントがっぽり大作戦!!』か。こりゃあいい」
リョウはタケシが寝ていることを忘れてしまい大声を出してしまいます。
「うぅ〜ん?誰かいるの・・・?」
「しまっ!」
「あぁ!サンタクロース!?捕まえてやる〜!」
リョウは目を覚ましたタケシに見つかってしまいました。子供に姿を見られることは、サンタの間では基本的に禁句なのです。
「ココ!」
「わかってるよ、タケぴょん。こっち向いて」
「なんだよ!わわ、こっちには天使がいる〜!」
「ごめんね、少し眠ってて。汝汚れを知らぬ赤子、汝を眠りに誘うは、聖母の優しき心なり・・・スート!」
ココの放つ不思議な光を浴びたタケシは、眠ってしまいました。・・・あれ?ここにも一人、寝ている人がいるぞ?
「リョ〜ちゃ〜ん!起きてよ〜!」
「むにゃむにゃ・・・あと五分〜」
・・・リョウでした・・・。
「も〜怒ったぞ!汝罪を犯し罪人、我罪を断ちし力を持ちて、汝を罪より救わん!・・・ピコピコハンマー!」

・・・・・・・

「いてて・・・ココ〜。もう少し優しい起こし方なかったのか?」
「も〜起してもらったんだから文句言わないの!」
「はいはい・・・プッ・・・ククク・・・ははははは!」
「ほへ?なにがおかしいの?」
「いや、なんでもない。ただ・・・楽しいなって、思っただけだ」
「クス、そうだね。あ、ホットシロップ飲む?」
「あぁ、一杯貰おうか」

本当に・・・本当に楽しそうでした。
仲がいい友達・・・いえ、それ以上の仲と言ってもいいでしょう・・・
こんな時が永遠に続くことを私は願いました。
世界が幸せに包まれ、二人が幸せに包まれる・・・
しかし・・・そのような幸せの時は続きませんでした。

「今度で最後だよね?」
「あぁ・・・そうだな・・・」
リョウは寂しそうでした。
「?リョウちゃん?どうしたの?元気ないね」
「ん?あ、あぁ・・・なんでもない。それより、飛ばすからな。しっかりつかまってろよ!」
リョウは気づいてしまったのです。
ココがリョウと一緒にいる理由は、ココがリョウの初仕事をサポートするため・・・リョウの仕事が終われば、ココがリョウの元を離れてしまいまうことに・・・
「リョウちゃん・・・本当に大丈夫?」
リョウは・・・返事をすることができませんでした・・・


「次の家は・・・ツグミ=コマチだな」
最後のプレゼントを取り出したリョウは、ツグミの家に入りました。
真っ暗な部屋をライアの光で優しく照らし、靴下を探します。
「あった。これで最後だな・・・」
リョウが靴下にプレゼントをつめようとすると・・・・
「だれ?」
ツグミは目を覚ましてしました。
「あ・・・もしかして、サンタ・・・さん?」
「あちゃ〜見つかっちゃった。ごめんね?もう一回眠ってね」
そう言って、ココは手を突き出し『スート』を唱えようとしましたが、
「まって。あなたは・・・天使様?」
「そうだよ。天使のココ=ヤディアだよ」
「こ、こら。ココ。なに自己紹介してるんだよ」
リョウはココを叱ろうとしました。
「リョウちゃん・・・ちょっと待って。この娘・・・ココに用があるみたい・・・」
「え?」
リョウとココはツグミを見つめました。ツグミの表情は、嬉しさでいっぱいでした。
「天使様は魔法が使えるんだよね?お願い。私の病気を治して」
「病気?」
リョウは首を傾げました。魔法を使わないと治らないほどの病気・・・それほど苦しい病気があるのでしょうか?
「ちょっと、見せてくれる?」
ココが訪ねるとツグミはすぐに頷きました。ツグミのお腹に軽く手を当てて、ココは目を閉じました。
「真実を覆うは闇、我聖なる鏡光もちて、真実を覆う闇を祓わん・・・スレン!」
すると、ココが手を当てていたツグミのお腹が淡い、黄緑色の光をを放ち始めました
「これは・・・」
お腹から手を離したココの表情は真剣そのものでした。
「・・・ティーファ・ブラウ・・・だね?」
ゆっくりと首を縦に振るツグミの顔は泣いていました。
「ティーファ・ブラウ?なんなんだよそれは?」
ココはリョウの顔を見ました。ココの厳しい表情を見て、リョウはツグミの病気がどれほど酷いものかよくわかりました。
「昔ね、一番最初の神様と一番最初の魔王は、生命を作る力を持っていたんだ。その神様と魔王はとても仲が悪くてね。神様が生き物を作ると、魔王は病気を作るようになったの。ティーファ・ブラウは魔王が作った最高傑作。天国にある薬でも治すことは不可能なんだ・・・ましてや、人間の力じゃ治すことはできないよ・・・」
「だったら・・・ツグミは死ぬまでこのままなのか?」
リョウは慌てて口を塞ぎました。でも、遅かったのです。ツグミは、全てを聞いてしまったのです。
「やっぱり・・・私・・・死んじゃうんだ。すん、ぐす・・・うわ〜ん!わ〜ん!」
泣き始めたツグミを見て、リョウは・・・何もできない自分を呪いました。
子供達が大好きだから・・・笑ってくれる子供達が人一倍好きだから・・・何もできない自分が・・・嫌になったのです。
「ココ!何とかならないのかよ!」
しばらくの沈黙の後、ココはゆっくりと口を開きました。
「ならないことはないよ・・・」
「え?」
その声を聞いたリョウとツグミは同時にココを見つめました。
天国にある薬でも治すことのできない病気を、どうするというのでしょうか?
「なんだよ。助かる方法があるって早く言ってくれよ!」
リョウは笑いながらココの頭に手をポンと置きました。
「・・・ココ?」
ココは返事をしませんでした。それどころか・・・寂しそうな、悲しそうな表情を浮かべました。
「ねぇ、リョウちゃん・・・」
リョウの顔を見つめながら、ココが話を続けます。
「ココのこと・・・忘れないでくれる?」
「な、何だよ。いきなり・・・」
「いいから!」
「あ、あぁ・・・もちろんだとも。俺が、友達のことを簡単に忘れられるほど薄情な奴に見えるか?」
できるだけ堂々とした表情でそういうリョウの姿を見て、ココは笑います。
「フフ・・・そうだね・・・」
そう言って、ココは何かを決心したかのような顔をしながら、ポケットを探りました。
「ピカポカピカ〜ン!エンジェルリング〜!」
エンジェルリングを取り出したココは、それを頭の上に置きました。
「ココ・・・それはつけたくないんじゃなかったのか?」
「これ?つけないといけないんだ・・・本当の姿に戻らないとツグミンは助けられないよ」
「本当の姿って、おい。ココ?」
リョウを見ながらクスっと、笑うとココは祈るように手を交差させました。ココを明るくて、とても暖かい光が覆っていきます
「時は満ちた、我、今こそ我が友を我が愛す者のために、封印されし力を開放せん!」
光は一層輝きを増し、リョウとツグミはココを見守ることしかできませんでした。
「イフェニティ!」
ココがそう叫ぶと共に、激しい光がリョウたちの視界を遮りました。
「キャー!」
「ココー!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

光は消え、ようやく目を開けられるようになったとき、リョウは自分の目を疑いました。
「お前・・・ココか?」
「そうです・・・私は、ココ=ヤディアです」
ココは姿そのものが変わっていました。
背は伸び、顔は大人っぽいくなって、ピンク色の髪は腰まで伸び、羽は大きくなって光り輝き、服も純白シルクのドレスをまとっているように見えます。
まさに、リョウが想像していた天使そのものでした。
「本当にココなのか?」
リョウはいまだに信じられませんでした。
「そうです。私はエンジェルリングに私の法力・・・つまり聖なる力を溜め込んでいました。今の私が本当の私・・・」
「だったら・・・なんでいままであんな姿でいたんだ?」
「それは・・・後で話しましょう。今はツグミちゃんを助ける方が先です」
「あ、あぁ・・そうだな」
リョウとココは改めて、ツグミを見つめました。
「リョウさん・・・私一人の力だは、ティーファ・ブラウを消すことはできません。あなたにも手伝ってもらいますよ」
「俺?俺はお前みたいな高等魔法は使えないぜ。どうやって手伝うというんだ?」
ココは微笑みました。まるで、慈母のようなその笑顔はリョウの心をとても安心させます。
「ツグミちゃんの手を握って、私の手を握ってください。そして、ツグミちゃんが助かるように心の底から願ってください」
「・・・それだけか?」
「そうです」
「それなら任せろ!こんなまだまだ未来ある娘を簡単に見殺しになんてできないからな」
「では、準備してください。あ、ツグミちゃん・・・怖がらないでくださいね。きっと治して見せるから。ね?」
「うん。わかった」
「クスッ、いい娘ね」
ツグミをベッドに寝かせ、リョウはツグミとココの手を握りました。
「リョウさん・・・さっき言った通り、ツグミちゃんが助かるように心の底から願ってくださいね」
「なぁ・・・なんでこうするんだ?願うだけなら俺は必要ないと思うんだが・・・・?」
「出発した時もいいましたが、魔法の強さは、心とイメージ強さです。あなたがツグミちゃんが元気になることを願えば願うほど、私の魔法の効果は強くなります」
「そういうことか、わかった。まかせろ!」
ココに向かってニカッと笑った後、ツグミに向かって・・・
「待ってろ。俺達が絶対に病気を治してやるから」
リョウの笑顔を見て、さっきまで不安がってたツグミの表情から、恐怖が消えました。
「うん!」
その顔を見て、リョウはツグミの頭を撫でました。
「ココ、始めてくれ!」
「わかりました」
ココは深呼吸をした後、ゆっくりと目を閉じ、魔法を唱え始めました。
「汝を支配せんとする闇・・・」
ココの身体から発せられる光がリョウを伝いツグミへと伝っていきます。
「闇を拒む汝・・・」
「ツグミ、ツグミ!がんばれよ!絶対に・・・絶対に助けるからな!」
リョウは心の底からそう思い、口より発しました。
「汝、死を拒み、生を欲すなら、我と共に光を望み、光に祈れ」
ココたちを包む光が一層に強くなります。
暖かい光、母に抱かれているような安らぎ、温もり・・・それらがツグミの中の病気を支配していきます。
「汝、光の司祭より、魔の運命を断ち切りし剣を受け取り、栄光への未来を再び歩め!」
最後の言葉・・・それは・・・
「キュレイ!」
ココがそう言うと、ツグミは光に包まれました。
「ツグミ?ツグミ!」
「落ち着いてください!ツグミちゃんは大丈夫です。魔法は・・・成功しました」
あたり一面を覆っていた光が落ち着くと、ツグミは・・・幸せそうに眠っていました。
「やった!やったぞ!!ココ!」
「うん。やったねリョウちゃん♪」
「・・・はい?」
リョウが振り返るとココは元に戻っていました。
「ココ・・・お前、戻っちまったのか?」
「うん。本当の姿でいると疲れるから」
汗が流れる顔をハンカチ拭きながら、ココは答えました。
「(疲れる?普通なら、姿を変えてるほうが疲れるんじゃないか?)」
「リョウちゃん。お仕事終わったんだよ。行こう」
「あ、あぁ・・・」
少しふらつきながら壁をすり抜けていくココの姿を見つめながら、リョウはできたばかりの疑問と戦い続けていました。

ココの異変。
リョウの疑問。
考えている暇はありませんでした。
なぜなら・・・別れの時はゆっくり、ゆっくりと近づいていて・・・
もう、そこまで来ていたから・・・

「もう・・・お別れだな・・・」
「・・・・・・・」
「そろそろ・・・行くのか?」
「・・・・・・・」
リョウの問いかけに、ココは答えようとはしませんでした。
「なぁ・・・最後なんだし、少しぐらい話しをしようぜ」
隣のココの肩を掴むリョウ。しかし・・・
「・・・・・・・」
「ココ?」
突如、ココの身体が傾き、ソリから崩れ落ちました。
「ココ!なにやってんだ!?飛べ!飛ぶんだココ!」
ココの身体は動きません。真っ白の羽も、動く気配を見せませんでした。
「ピピ!チャミ!ココのところまで行くんだ!」
「ご主人、無理だ!間に合いまわん!」
ピピもチャミも無理だと言い張ります。
「くそ、なんか、なんか手はないのか?」
そのとき、リョウの頭を瞬間的に何かがかすりました。それは、ある魔法の名前・・・
「そうだ、あの魔法だ!」
リョウはココがリョウに対して初めてかけた魔法を唱え始めました。
「汝、神の祝福に背くならば、光汝の敵となり、汝を束縛するリングとならん・・・ライリグ!」
手を遥かと浮くにいるココに向かってかざしました。すると、リョウの手から光の輪が出てきます。
「やった!成功だ!」
『ライリグ』は見事にココを救いました。リョウは『ライリグ』の鎖を縮め、ココを引き上げます。
「ココ?ココ!しっかりしろ!ほれ、ホットシッロップだ。飲め、温まるぞ」
リョウはそう言ってホットシロップの入ったカップをココにつかませます。が、

ガチャン

ココは・・・ココは、カップを掴むことができませんでした。
「あ・・・リョウちゃん?・・・えへへ・・・ごめんね。ココ・・・もう駄目みたい・・・」
「な、なに言ってんだよ。下手な冗談は俺には通じないぞ」
「ココが・・・ね、本当の・・・姿、で来なかった理由は、ね。前にね・・・リョウちゃんと・・・別れた時が、このかっ、こう・・・だったから・・・なんだ・・・」
苦しそうに息を吐くココをリョウは抱き上げました。
「なに言ってんだよ?俺は、俺はお前と始めてあったんだぞ!前も今もないだろう!」
「ああ・・・やっぱり、リョウ・・・ちゃ、ん・・・忘れ・・・ちゃったんだ、ね?ひどいな・・・」
ココは雪の振り続ける夜空を見上げました。とても、弱々しく・・・とても悲しそうに・・・
「あの日も・・・こんな日・・・だった・・・ね?」
「なに言ってんだよ!わからねえよ!もう終わりみたいなこと言ってんじゃねえよ!」
「いえ・・・もうお終いです」
「あ・・・ソラ様・・・」
優しい光が辺りを覆ったかと思うと、リョウとココの前に優しそうな女の人がでてきました。大きな羽。全てを許してくれそうな優しい瞳。・・・お話に出てきそうな女神のような人でした。
「ココ・・・よくがんばりましたね」
そう言ってココのおでこを撫でてあげている女の人をリョウは睨みました。
「ココ・・・誰だよ?こいつは・・・」
「あなたが、リョウですね?クスッ、やっぱり似ていますね。私はソラ=アカネル。これでも、34代目の神です」
「神・・・様?」
「はい・・・」
「だったら・・・だったらココを助けろよ!万能なんだろ?神様なんだろ?ココを助けろよ!」
「・・・残念ながら・・・それは無理です。ココは・・・ココは法力を使い果たしました。それに・・・私に生命の力はありません」
「法力ってなんだよ?生命の力ってなんだよ!?」
「法力は・・・天使の生命力です。そして・・・魔法の源です。生命の力は、生命を生み出す力のことです」
「魔法?生命の力?ま、まさか・・・」
「そうです・・・『キュレイ』が原因です。『キュレイ』はココオリジナルの魔法。私も使うことはできません。ココは、初代神以外で唯一生命の力を持つ天使だったのです。でも・・・ココの身体には強すぎる力だったのです。ココもわかっていたはずです。使えば・・・どうなるかということを・・・」
リョウはソラの言葉を疑いました。
「ココは・・・ココは助からないのか?」
ゆっくりと頷くソラ。
苦しそうに呼吸するココ
そして・・・何もできないリョウ・・・
「なにが終わりだよ!このままじゃ、このままじゃ終わらせないぞ!」
リョウは、ココをそりに乗せソリを飛ばそうとしました。
「無駄です。法力を使い果たしたココが助かる方法はありません」
あくまでも冷静に、はっきりとソラは言います。
「ち、ちくしょー!」
リョウの叫びが夜空に響きました。とても虚しく・・・とても悲しく・・・

「リョウちゃん?」
しばらく経った後、さっきまでぐったりとしていたココが目を開きました。
「ココ、しゃべるな」
「もういいの、あと少しだから・・・最後までお話させて・・・」
リョウはゆっくりと頷きました。
「ココね。この前リョウちゃんとお別れするとき、お願いしたの覚えてる?」
リョウはううん、と首を横に振りました。ココは、また微笑みます。
「あ〜あ・・・やっぱり覚えてないのか・・・残念だな〜」
苦しそうに呼吸しながら微笑むココ。何故笑っていられるんでしょうか?
「ココは・・・お星様が欲しいって言ったんだ。それをね、ココの頭のボンボンの飾りにしようと思ったんだ・・・」
うん、うんと頷くリョウ。
「でもね・・・本当はね・・・」
「なんだよ、何でもいいから言ってみろよ」
「リョウちゃん・・・ココのこと、ぎゅ〜って抱きしめてくれる?」
恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしながら言うココ。
リョウは・・・
「い、いや、その・・・なんだ・・・」
リョウも顔を真っ赤にしながら慌ててました。
「だめなの?」
リョウの慌てぶりを見たココの瞳にゆっくりと涙が溜まっていきます。
そんなココを見て、リョウはゆっくりと、優しくココを抱きしめてあげました。
「えへへ・・・リョウちゃん。ありがとう」

チュ

「え?」
リョウはほっぺにやわらかい感触を感じました。
「リョウちゃん。大好きだよ。ずっと前から、大好きだったよ」
ココは満足そうに微笑み、雪降る夜空を見上げ、手を伸ばしました。
「不思議だよね。こうやって手を伸ばせば、お星様だって掴めそうなのに、掴めないなんて・・・」
そして、リョウを見つめ直します。
「リョウちゃん。約束してくれる?」
「ん?何をだ?」
「今度会えたときは・・・今度会えた時は、ココのこと忘れてないでね」
「あぁ。わかってる・・・」
「本当?」
「あぁ・・・本当だ・・・」
「えへへ。今度は、約束破らないでね」
そう言って、ココはもう一度リョウの頬にキスをしました。そして、ゆっくりと口を離します。
「リョウちゃん、ありがとう。もう一度出会ってくれて、もう一度お話してくれて・・・本当に・・・あ、りが・・・と・・・う」
リョウの肩に乗っていたココの手が滑り落ち、ココの顔もゆっくりとリョウの胸元に、トン、っと小さな音を立ててぶつかりました。
「コ、ココ?おい、返事しろよ!さっきも言っただろう!俺に下手な冗談は通じないって!なぁ、ココ・・・ココー!」
ココは・・・二度とその目を開きませんでした・・・

「リョウ・・・ココを・・・」
しばらくの後、目を真っ赤にしながら、ソラはリョウにいいました。リョウは、静かに頷きソラにココの身体を手渡します。
「リョウ・・・『心静かに、真理を求めよ』の意味を知っていますか?」
リョウは何も言いません。
「『真理』とは時の流れを『求めよ』は知ることを示します。つまり・・・『時の流れを知り、それを冷静な心で受け入れよ』と言う意味です。ですから・・・」
「ココが死んだことも時の流れ。だから受け入れろとでも言うのか!?そう簡単にできることかよ!」
リョウは荒々しくソリを叩きました。
「リョウ・・・」
ソラは何も言えませんでした。

しばらくして、リョウがソラに聞きました。
「なぁ・・・神様・・・ココが言っていた『前』って何のことかな?」
「それは・・・あなた達の前世のことです」
「ぜん・・・せ?」
「そうです。全ての生き物は生きては死に、死んでは生きます」
ソラは静かに語り続けます。
「わかりますか?生命はかけ巡るのです。昔を、今を、未来を・・・時を巡って出会い続けるのです。あなた達は、前世で恋人のような関係だったのでしょう」
リョウは黙ってソラの話を聞いていました。
「ココは・・・どこか特別な天使でした。前世のことを覚えていたんでしょうね。エデンでも、何度かそのような傾向もありましたし・・・」
上を見上げたソラにリョウは訪ねます。
「神様・・・ココはどうなるんですか?」
少し寂しそうにリョウを見つめながらソラは話します。
「転生の門を潜らせます。そして、もう一度生まれ変わるのです。天使のココではなく、新しいココとして・・・」
「だったら、少しだけ待ってくれ」
リョウは右手を星空に向かって掲げました。
「天駆ける星よ、我汝らに命ずる、我が手に・・・」
「リョ、リョウ!やめなさい!」
「聖なる光を落せ!・・・スタネス!」
夜空から四つ、光がリョウの手に落ちました。
「ぐ、ぐおおおお」
リョウは苦しそうに左手で右手を掴みました。リョウはすごい大怪我をしていました。
「なんて無茶を!傷つきし汝を見て、慈悲深き聖なるの光、汝を癒す・・・キュア!」
「サ、サンキュー神様・・・」
「なんて無茶を!下手したらあなたまで死んでいたんですよ!」
「そ、そんなに怒らないでくださいよ」
そう言って、リョウはソラに右手を差し出しました。ソラの魔法によって塞がった傷口に、四つの光がありました。
「これは・・・星?」
はい。と言ったリョウはココの右手を開き、しっかりと四つの星を握らせました。
「俺が怪我してまで取った星だ。大事にしてくれよ?」
そして、ココのおでこを軽く撫でた後、おでこに軽く口付けをするリョウ。
「もう・・・いいですか?」
リョウはしっかりと頷きました。
「それでは、さようなら。あ、ココと出会ってくれたことを本当に感謝します。この娘、あなたに会える日を本当に楽しそうにしていたんですよ」
ソラに一言に心を痛めるリョウ。

自分を覚えてくれていた彼女・・・
彼女を忘れていた自分・・・

死を笑って受け入れた彼女・・・
彼女の死を受け入れられなかった自分・・・

どうしてこんなに違うのか?
どうして彼女はそんなに強いのか?

「それでは・・・」
深々とお辞儀をして、ソラは二つの白い羽でゆっくりと飛び立ちました。
その姿を見たリョウは思いっきり息を吸って叫びました。
「ココー!俺も、俺も、お前が大好きだー!」
その時、ココの瞳に雪が触れました。
「ココ、あなた・・・泣いているの?」
ココの瞳に触れた雪は溶け、彼女の頬を濡らしました。
本当に・・・泣いているように見えました。
少し嬉しそうで悲しそうな顔で・・・ココは泣いていました。

「ココ・・・聞こえたよな?」
ゆっくりと雪降る夜を駆けるソリ。
それに乗る一人のサンタクロース・・・
彼の頬を水が濡らしました。
それは、雪が彼に触れて溶けた水なのか・・・
それとも、彼自身の涙なのか・・・
その答えは・・・誰にもわかりませんでした。

しんしんと降り続ける雪は、悲しい天使の涙なのかもしれません・・・


エピローグ>>


あとがき

チーン!!(鼻をかむ音)
あ、あぁ・・・ごめんなさい。
というわけで、今さらって感じのクリスマスSSです。
はい、泣いてましたが何か?

今回もいくつか魔法が出てきました。
魔法を唱える時の言葉がむずかしくてむずかしくて・・・
あ、スタネスの『我が手に』は特別です。
本当はあれは、『静かなる空に』なんですよ。
魔法の才能なあるリョウだけが特別にできたと言うことで(汗

ではでは〜♪


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