※「アニキィ!!!」の続編扱いですので,ご注意を。


アニイ。
                             HELLCHILD作

その1


あれから数日が過ぎ―――――――――
「ねぇねぇ少ちゃん,新しいコメッチョ思いついたよー!」
「は・・・・・・・・・・・はあ。」
ココと優秋が研究所に遊びに来ていた。トールも研究の手伝いをしている。
・・・・・・・・なぜかココの隣でトールがひどく情けない顔をしていた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
(ど,どうしたんだ?こいつ・・・・・・・・・。)
「じゃあ行くよ!あっきゅ,そこに立って。」
「え?う,うん。」
「なっきゅも隣にね。」
「え,ええ・・・・・・・・・。」
「そいで,少ちゃんも隣に立って!」
「俺も?」
「うん!じゃあ行くよ!」
一体どんな方法で寒くしてくれると言うのだろうか。ある意味で楽しみだ。
「なっきゅーー!!」
優春を思いっきり指差す。
「あっきゅーー!!」
次は優秋に。

「ふぁ・・・・・・・・ふぁっきゅ・・・・・・・・・・・・」

泣きそうな顔をしながら,トールが桑古木に向かって中指を突き立てていた。
「キャハハハハハハハハハハハハハ!!!」
ココが大爆笑しているのに対し,トールは悲哀と苦悶の表情を浮かべていた。
「あ,そうだ!マヨちゃんと遊ぶ約束してたんだった。じゃあねーーー!!」
元気に手を振りながら,ココは去っていった。
そして,姿が見えなくなった後・・・・・・・・・
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!!!!!
だからいやなんだああああああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
壁に頭を連続で打ち付けていた。
こんな感じで,数日を過ごしてきた。
トールは現在,事情があって日本にとどまっているようだ。
その理由ははっきりしない。聞いても適当にはぐらかされてしまうのだ。
だが居て迷惑ということはない。むしろ力仕事が減って,桑古木は助かる。

空視点に移行する。
今日は空が研究所にやってくる日だ。
通常は非常勤と言うことになっているが,今日は特別に優春が空を呼び寄せた。
「おはようございます,田中先生。」
「ああ,空?ちょっと今日,珍しい人が来てるわよ。」
「珍しい人・・・・・・・?」
作業中のトールと桑古木がいるところに通された。
「あっ!・・・・・・八神さん?」
「お,空!!久しぶりだなぁ。」
どうやら空とも知り合いのようだ。
「身体の方はどうだ?結構いい感じだろ?」
「ええ。これも八神さんのお陰です。」
その間に優春が割って入った。
「はいはい。それじゃあ,空。八神さん。診察の方,頼みましたよ。」
「ん?おお。わかった。」
診察?空に体に異常は見られないぞ?てかこの研究所に診察室なんて・・・・・


桑古木視点に戻る。
トイレと偽って作業をいったん切り上げてきた。
一体何をしようと言うのだ?優春の一件はあったが,今度は何かいわくありげだ。
「なるほど,ここが診察室代わりか・・・・・・・いかにも怪しいな。」
そこは仮眠室だった。簡易ベッドと一緒に,多数の白衣がハンガーに掛けてある。
他の研究員達も使用している場所だ。
念のため,優春にどこでやるのかを聞いておいた。

「・・・・・・・・特に身体に異常はなかったようにも思えるが。」
「ま,万全を期して。ってトコロでしょうね。」
「? ちょっと待てよ。アイツ診察道具の類は一切持ってないぞ?」
「必要ないのよ,あの人。」
「必要ない?」
「ええ。ま,詳しくは言えない話なんだけどね。」
トップシークレットのようだ。優春はクスリと笑う。
こりゃあ聞いてもダメだな。そう思った桑古木は,
「ワリ,トイレ。」
「え!?あ、アンタまさかまた・・・・・・・・・」
今回は優春にも追い付かれなかった。

カツコツコツカツコツカコツカツコツ・・・・・
(来やがった!や,ヤバイ,隠れる場所は・・・・・・・・。)

プシュン。

「よし,ここなら大丈夫そうだな。」
「はい。」
「まあ特に異常は無さそうだが,念のためにな。」
「ええ,わかってます。」
・・・・・・・・・ハンガーに掛かった白衣のふりをする桑古木だった。
人差し指一本で全体重を支えている。
鬼塚英吉か,オマエ。(by 湘南純愛組)

「じゃあ,始めるぞ。一旦全部脱いでくれや。」
「はい。」
(え!?!?!ま,まさか脱・・・・・・・・・)
そこまで考えて,桑古木は思考停止状態になった。
ボタンを全て外し,シュルリと音を立てて服が全て床に落ちた。しかも下着がないから驚きだ。
「おし,後ろ向いて。」
「はい。」
桑古木の真横のほうを向いた。グラマラスな身体が見えて鼻血が噴き出しそうになったが,根性で堪えた。
(す,すすす,す少なくともそそ空にもたたた多少のしししゅしゅう羞恥心は・・・・・・・。)
かなり思考が乱れている。いや,乱れまくっている。
しかし本当に驚いたのはその後だ。今度はしっかりと自分の目で確かめた。
トールは両手を空の頬に当て,そこから肩,背中へと移行していく。
空の方は無表情で目を閉じたままだ。
「特に異常は見られないようだが・・・・・・・内蔵の方はどうだ?」
「よろしくお願いします。」
何の抵抗もしない空。武が好きなのにこんな奴にいいようにされていいのか?
(こ,このヤロォ・・・・・・・幼女にやる遊びを,あろう事か空でぇぇぇ・・・・・・・・・)
沸々と怒りがこみ上げてくる。優春の時はまだ誤解で済んだが,今度はそうはいかない。

ガッシャーン!!

ハンガーを全てなぎ倒し,トールの前に立ちはだかった。
「んのヤロオオオオオオオオッッッ!!!!!!今度こそ言い訳できね」
「キャーーーーーーーーッ!!!桑古木さんのバカーーーーーーーーーーっ!!!!」
トールが手を下すまでもなく,秒殺される桑古木。アーメン。

数分後。
空は怒って帰ってしまい,ボコボコの桑古木とトールが残されることとなった。
「あんなのが診察なのかよ・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・ああ。信じられないかもしれねえけどな。」
「てか,信じろって方が無理だ。手で触れるだけで健康診断なんて出来るもんかよ?」
俯いて,トールは答えた。
「・・・・・・・・・それが俺の『能力』の一つだ。」
「え・・・・・・・」
「お前も看てやろうか?」
「な・・・・ちょ,ちょい」
大きくて無骨な手が,桑古木の心臓辺りに触れた。ゆっくりと目を閉じるトール。
「・・・・・・・・・・お前,一日にタバコ12本は吸ってんな?しかも濃い目の。」
「え!」
確かに,今日もさっき10本目を吸ったばかりだ。
「あと,あんまり仕事帰りに安酒を飲み過ぎんなよ。キュレイ種といえど,身体に悪いぜ。まあ上司がアレだからストレスも溜まるんだろうがな。」
「・・・・・・・・・・・・・何でそんなことまで分かる?」
「だから,これが俺の『能力』なんだよ。」
「・・・・・・・・・何で空の診察なんて,する必要があるんだ?」
何気なく口にしてみた疑問。だが・・・・・・・・・・
「そりゃあ当たり前だろ。彼女の身体は俺達の大切な所有物だからな。細心のチェックを怠らないようにしてんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
所有物?こいつ,イヤ,こいつ『ら』?
「ちょ,ちょっと待てよ!!空の身体は優が造ったんじゃ・・・・・・・・!!」
「確かに話を持ちかけたのは彼女だし,作業にも参加していたが,事実上空の体を作ったのは俺達だ。」
「・・・・・・・・・・・・どういうことだ?」
優春から聞いた話ではこうだ。
LeMUから持ち出したテラバイトディスクには『茜ヶ崎空』のカタチを保つためのデータ,いわばDNAデータのようなものが記録されており,それを人間の遺伝子情報に翻訳して作り上げたのが彼女の身体だ。
彼女の体を作り上げたのは優春であると聞かされていた。
だが,目前の男はそれを否定した。
「あ!やっぱここにいた。もう,空ったら怒って帰っちゃったじゃない。」
突然優春がやってきた。
「ははは。しかしよく俺を相手に完璧に気配を消せたもんだ。殺し屋になれるぜ。」
「え!?!?!・・・・・・・・・・・・本当ですか,それ。」
「ああ,マジ。忍術使いじゃねぇのか?アイツの前世。」
「す,すごい・・・・・・・・・やるじゃないの。桑古木。」
「? 何でそんなに凄いんだよ。」
「あ,イヤ,その・・・・・・・・・・・ははは。」
(・・・・・・・・・・笑ってごまかす,か。
やはりこいつ,怪しい。どうも臭い。何者なんだ?こいつは・・・・・・・・。)
だんだんと不信感が募ってきた。
(こいつの情報を集めておく必要があるな。ライプリヒ上層部の人間だろうか・・・・・
よし,彼女に調べてもらおう。)


数日後,喫茶店にて。
「ふーむ・・・・・・・条件は悪くないでござるな・・・・・・・。」
「だろ?だから頼む。」
「・・・・・・・・よし!飲んであげる。ただし,絶っっっっっっっっっ対にお兄ちゃんをおびき寄せるのよ。」
「まかしとけ。」
放課後を見計らって,声を掛けた。
トールがライプリヒ上層部の人間だと睨んだ彼は,沙羅にライプリヒのサーバーに侵入してもらい,トールの情報を入手しようと考えた。
その代わり桑古木はホクトを沙羅の居るホテルの部屋まで誘導し(優秋からだと言えばついてくるだろう),二人っきりにさせておくという仕事を請け負った。


それから一週間後。
「う〜い,もう一件行くわよぉ〜・・・・・・おら何やってんだ桑古木いぃぃ!!てめえそれでも男かぁぁ〜・・・・・」
「・・・・・・・・・・もうよそうぜ。アイツ完璧にダウンしてんぞ。」
「あ〜八神さん,まだイケるクチだぁ〜。よーし!二人っきりでもう一件行くわよぉ〜ヒック。」
「・・・・・・・・・・・・・(完全にダウン)」
論文が完成したお祝いということで,研究員一同飲み会に付き合わされたのだ。
他の奴らは全員帰り,優と桑古木とトールだけが残った。そして,桑古木はもうグデングデンである。

トール視点に移る。
「・・・・・・・・もういいだろ。流石に。」
「うっぷ・・・・・・・・・はい・・・・・・・・」
二人っきりになってから,これで三件目をまわったことになる。
「うっ・・・・・・・・・!!」
「あーあ。大丈夫か?ホレホレ。」
優春の背中に手を当ててやるトール。
「うぅ・・・・・・・ありがとうございます・・・・・・」
「んじゃあ,俺は帰るからよ。またいつか会いに行くわ。」
「!―――――――――――いやっ!!」

・・・・・・・・・突然抱きついてきた。
「お,おい・・・・・・どうした?」
「・・・・・もう研究終わっちゃったから・・・・・八神さんが来る用事なくなっちゃう。」
「何言ってんだよ。また来るって。」
「・・・・・・・・・・・・寂しいです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え」
「今頃つぐみは倉成といちゃいちゃしてるのに・・・・・私だけ寂しいです。」
「・・・・・・・・・・それは空も同じだと思うがな・・・・・・・・・・・」
ついでに沙羅もな。
「とにかく今夜,一緒にいてください・・・・・・・・・・傍にいてください。」
「―――――――――――え。」
「一人じゃやだ・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・わかったよ。」


深夜1:52。
ベッドに優春一人を残して,先に服を着て帰る。いつも通りだ。
昔からこんな関係が続いている。親子のような恋人のような。
先に自分だけチェックアウトしようと思って外に出たら・・・・・・・
「よぉ,待ちくたびれたぜ。」
「――――――――――――――――!?」
桑古木の姿があった。どうやら沙羅の居るホテルがここだったらしい。
「ロビーであんたと優の姿を見つけてな。全くの偶然だった。
あんたのことは色々調べさせてもらった。だが分からないこともたくさんあるのも事実だ。出来ればあんたの口から直接聞きたいんだがな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・いいだろう。」


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あとがき

すいません。投稿するのが予定より大幅に遅れてしまいました。
えーと,真実はその2で明らかになるのでお楽しみに。
どんな秘密が隠されているのか・・・・・・・期待せずに待てっ!!
しかし鬼爆のネタ,わかる人いるかなあ?

BGM:『MONSTER』BUCK−TICK


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