優夏SS    4月2日   
優夏と散歩    誰が子供?   ルナビーチ集合   プールサイドで大騒動   溺れたのは・・・    素直な心   

//4月2日

ここは何処だろう?・・・オレの目の前には一面の暗闇が広がっていた・・・。
オレはただコツコツコツと歩いている。どこへ向かっているのかは分からない・・・。
ただ、じっとしているのが怖かったのだ。その暗闇が、あまりにも冷たく感じたからだ・・・。
―チリ〜ン― どこからともなく鈴の音が聞こえてくる・・・。
!!!オレの足下に冷たい塊がぶつかった・・・そこには少女の亡骸が横たわっていた・・・。
美しくて細い腕、その手のひらの上には銀色の鈴が握られていた。

誠「これは・・・この光景は昨日見た夢と同じじゃないか!」

オレは頭をかきむしりその場に座り込んでしまった。
そしてふとその亡骸のほうへ目を向けると
昨日は見えなかった少女の亡骸の顔がうっすらと見えてきた。
その顔は・・・その顔は・・・優夏の青く冷たい顔だった・・・。

誠「優夏・・・本当にお前なのか!?」

オレは思わず叫んでいた。そして亡骸の顔に身を寄せるとオレは涙を流していた・・・。
どうしてだろう・・・?まだ優夏とは出会ってからほんの少ししか経っていないのに
オレは声を張り上げて滝のような涙を流して泣いていた・・・。
まるで優夏がオレにとって、最も大切な存在だと思えてくるように・・・。
どれくらいの時間が経ったのだろう?10分か?それとも1時間か?
この暗闇の中では時の流れは感じることができない・・・。
オレはただ優夏の亡骸を抱きしめ永遠に泣いているだけだったのだ・・・。

―ガバッ― オレは思いっきり起き上がった。
オレの顔にはグッショリと冷汗が流れていて体も濡れていた・・・。

誠「一体この夢は何だよ!」

オレはフトンに拳を叩きつけた。
昨日に引き続き今日も絶望的なとっても嫌な夢を見た。
オレは興奮している自分に気付き、とりあえず深呼吸をして落ち着こうと思った。

誠「スー・・・ハー・・・スー・・・ハー・・・」

深呼吸を繰り返すうちにオレの冷汗はスーッとひいてきた。
とりあえず状況を整理しよう。オレは再び寝転んで天井を見ながら考え始めた。
今日見た夢はおそらく昨日の夢の続きだろう・・・。
そうしたら4月6日に死ぬのは優夏なのか?
仮に死ぬのが優夏だったとしよう。
そうしたらオレがあんなに泣いていたのはどうしてだ?
たしかに優夏は人当たりもよくて性格も明るいいい奴だけど
失ってあそこまで泣くほどオレは優夏のことを想っているのか・・・?
考えれば考えるほどオレは寝返りをうっていた・・・。

誠「考えていても始まらないよな・・・」

オレはそう言うと起き上がって部屋を後にした。
そしてリビングに向かうとそこには優夏がいた。

優夏「おはよう!誠」

誠「お、おはよう優夏・・・」

優夏は元気な挨拶をしてきた。
しかし、オレは朝に見た夢の事もあり優夏を見るとなんだか違和感がでてきた・・・。

優夏「あれ、どうしたの誠?声が上ずっているよ」

誠「いや、何でもない・・・」

優夏「そう、それならいいけど。それより早く支度してね」

誠「え?」

オレは思わず時計に目をやった。そこには4月2日 THU 7:12 と記されていた。

誠「こんなに朝早くから一体何の支度だ?」

優夏「昨日、ルナビーチに今日の朝8:00集合って言ったでしょ!もう忘れたの?」

誠「ああ、思い出した。今日はプールに行く予定だったな」

優夏「まったくもう・・・しっかりしてよね!」
誠「はいはい・・・」

オレはそれとなく話を流すと身支度を整えてリビングへと戻った。
窓から差し込んでくる太陽の光が心地よい・・・オレはボーッと天井を眺めていた。

優夏「誠。時間もあるし少し外に出て歩かない?」

優夏は突然オレにそう話し掛けてきた。
オレはどうしようか?などと考えていたが眠気覚ましにもなるし外に出ることにした。

誠「ああ。そうするか」

オレと優夏はロッジを後にした。                            
ロッジの外には林道が広がっている。
鳥の鳴き声や木漏れ日の光がなんともいえず心地よい・・・。
優夏は鼻歌を歌いながら歩いていた・・・確かにそういう気分になるよな。
オレはそんなこと考えながら優夏の後ろを歩いていた。
優夏「ねえ、誠?あの木の枝に触れる?」

優夏は目の前にある木のいちばん低い位置にある枝を指差してオレに話し掛けてきた。
その高さはおよそ3メートルくらいだろうか?助走無しじゃ無理だよな・・・。

誠「助走はつけていいのか?」

優夏「うん。いいわよ」

優夏のその言葉を聞くとオレは走り込んで思いっきり飛び上がった。
―ガサッ― 手応えあり・・・木の枝は見事に揺れていた。
オレは内心ほっとしながら着地をしたその瞬間!!!
―ズルッ― 朝露に濡れた草に足を滑らせ見事にこけてしまった・・・。

優夏「キャハハハハ・・・誠、おっかしい〜」

誠「うるさいな!笑っていないで手を貸してくれよ!!」

オレの足は木の根の間にはさまって抜けなかった。
正確にはあまりの恥ずかしさに足に力が入らなかっただけなのかもしれないが・・・。

優夏「ゴメンゴメン・・・」

優夏は笑いながらオレに手を差し伸べる。
オレはその手を取ると木の根の間から足を抜いて立ち上がった。

優夏「惜しかったね〜誠。あの跳躍を見たときはかっこいいな〜って思っていたのに」

誠「はいはい・・・どうとでも言ってくれ」

優夏「あ〜、よくないぞ〜!その投げやりな言い方。せっかく誉めているのに」

誠「え?」

オレは優夏の言葉に思わず驚いてしまった。

誠「どこを?」

オレは優夏に問いかけてみた。

優夏「知りたい?」

誠「ああ」

優夏はニヤニヤしながらオレの顔を見ている・・・。
オレはその顔を見るとなんだか不安になってきた。
何が不安かって?優夏が何かを企んでいるのではないかと思えてくるからだ・・・。

優夏「えっとぉ・・・それはぁ・・・」
優夏はよりいっそう顔がにやけている・・・。
どうせ 秘密 などと言ってはぐらかす気だろう・・・オレはそう考えていると・・・。

優夏「ヒ・ミ・ツ♪」

ほらな。オレの予想していたとおりの展開だ。
オレは必死に、じらさないで教えろよ! という言葉をこらえていた。

優夏「あれ〜・・・怒らないの?」

誠「別に?」

オレは必死に顔に笑みを浮かべ何事も無いように振舞った。

優夏「え!?だってぇ・・・」

優夏はおろおろしながら次の言葉を探していた。
フフフ・・・勝った!オレはこみ上げてくる笑いを抑えていた。
どうせ優夏はオレがムキになってくるとでも思っていたのだろう。
さあ、どう出る優夏?オレは優夏の反応を待っていた・・・。

優夏「誠にとってものすごく嬉しくなるような言葉なのになぁ〜」

優夏はオレに流し目を向けてそう話し掛けてきた。
オレにとってものすごく嬉しくなるような言葉 オレはその言葉に心が動いた。
いやダメだ!せっかくここまできて負けるわけにはいかない!
別にムキになるかならないかというたいした争いではないのだがこの勝負は譲れなかった。
大丈夫!今のところはオレのほうが優勢なはずだ。
オレはそう思いながら次の言葉を優夏に言った。

誠「そうか。だけどおまえに言われてもそれほど嬉しくはないかなぁ〜?」

オレはそう言うと優夏のほうを横目で見る。
ここできっと優夏は そんなこと無いわよ! などといってムキになるに違いない。
オレの心の中では勝者の舞たるものを踊っていた。

優夏「そ、それは残念ね。でも、きっと誠はこれから私以外の女の子には
絶対に言われないような言葉だと思うけどなぁ〜・・・」

優夏は目をヒクヒクさせながら必死に何かをこらえているかのように言った。
オレは優夏のその様子を見るとまたしても笑いがこみ上げてくる。
しかし、優夏以外の女の子に言われない言葉 その言葉にオレはまたしても心を動かす。
確かにオレは自分で言うのもなんだが女の子からあまり嬉しい言葉を言われたことが無い。
もし、このチャンスを逃したら一生そういう言葉をかけられないかもしれない・・・。
オレがそう考え込んでいると・・・。

優夏「せっかく誠を少しでも喜ばせてあげようと思ったのに・・・。
   でも、聞いてくれようとしないから・・・寂しいな・・・」

優夏は目をうるわせながらオレのほうを見て言っていた。
そして顔を下に向け小さな肩を小刻みに震わせていた・・・。
おい、ちょっと待てよ!こういう時に泣くのは反則だろう・・・。
オレは思わず混乱してしまった。

誠「分かったよ。聞いてあげるから泣くのはやめてくれよ。な?」

優夏「どうしようかな・・・?」

優夏はこの状態でもじらしていた。ついにしびれを切らしたオレは・・・

誠「じらさずにさっさと言ってくれよ!!!」

オレは思わず叫んでいた。
ハッ!オレは思わず口に手を当てた・・・。
なぜならオレの目の前にはさっきまで泣いていた優夏のにやけた顔があったからだ・・・。

優夏「やっと、しびれを切らしたわね〜♪」

誠「あ〜、ちくしょう!!!」

オレは地団太を思いっきり踏んだ。

優夏「誠もまだまだ子供だね〜」

優夏はやれやれのポーズをとりながらオレに向かって言った。

誠「うるさい!だいたい泣き真似なんていう手を使うお前こそ子供だろうが!!」

優夏「ちょっと、それどういう意味よ!!だまされる誠が悪いのよ!」

誠「あのな、普通目の前で女の子に泣かれて平気な男はいないぞ!」

オレと優夏は歩きながら口喧嘩をしていた。                            
どれくらい時間が経ったのだろう?林道の中腹まで差し掛かったとき・・・

沙紀「そこまで!!!」

その声を聞いてオレと優夏はピタッと止まってしまった。

沙紀「ちょっとあんた達ねぇ!朝っぱらからこんな道の真ん中で
何をギャーギャー騒いでいるのよ!いい歳になって恥ずかしいと思わないの!」

優夏「だって誠が!!!」

誠「おまえこそ!!!」

オレと優夏は沙紀を目の前にしながらも口喧嘩を続けていた。

沙紀「私がいいって言うまで喋らないで!!!」

オレと優夏はまたしても沙紀にピシッと止められた。

沙紀「大体のいきさつは見ていて分かったわ。まずは誠くん!」

誠「はい・・・」

オレは沙紀にピシッと指を指され思わず緊張していた。

沙紀「あなたねぇ〜・・・女の子の言うことくらい水に流せないの?
   いちいち真に受けていたら身が持たなくなるわよ。
   もちろん真剣に考えなければいけない時もあるわよ。
   そこの区別も自分でつけられないようじゃ
   優夏の言う通り誠くんは少し子供よ。もう少し大人になったほうがいいわ」

誠「はい、分かりました。以後気をつけます」

沙紀「素直でよろしい」

沙紀は満足そうな笑みを浮かべていた。
事実、確かに大人気なかったなとは思っていたからだ・・・。
何をオレはあんなにムキになっていたのだろう?
オレは自問自答を繰り返していた・・・。

沙紀「次に優夏!」
優夏「何よ〜・・・」

沙紀「優夏は誠くん以上の子供よ!だいたいその歳で泣き真似を使うなんて問題外よ!」

優夏「別にいいじゃない〜。女の武器は涙だってよく聞くでしょ?」

沙紀「それとこれとは別なのよ!」

優夏「どこが別なのよ〜。涙を流すことに変わりは無いじゃない」
沙紀「あんたねぇ・・・そうやって屁理屈ばかり言わないで黙って話を聞きなさい!」

優夏「そうやって偉そうにしてばかり。沙紀だってヒステリー気味の子供じゃない!」

沙紀「何ですってぇ・・・!!!私のどこがヒステリー気味の子供なのよ!!!」

おいおい・・・なんだかマズイ展開になっていないか?
オレはそう思いながら二人を見ている。
このままじゃ喧嘩になりかねない。

誠「おいおい2人とも。少し落ち着けよ。な?」

優夏「誠は黙っていて!!!」
沙紀「誠くんは黙っていて!!!」

オレは思わず退いてしまった。オレは出る幕を失った・・・。
オレの様子を見た二人はまた元に戻ったように言い合いを始めた。

優夏「そうやってすぐに怒るところよ!!!」

沙紀「あんたねぇ〜・・・さっきから人が大人しくしていれば!!!」

そう言うと沙紀は優夏の肩をつかんで腕を振り上げた。
マズイ!オレはそう思って二人の間に入っていった次の瞬間!!!
―パンッ― オレの左右の頬には真っ赤な紅葉が出来上がっていた・・・。
なんと、あの状況で優夏もビンタを仕掛けてきたのだ。
つまりオレは優夏と沙紀の2人分のビンタを受けてしまったのだ。
不思議なことに痛みはあまり感じられなかった。
おそらく左右の衝撃が相殺されたからであろう・・・。
この状況だったらオレが止めに入らなくても互いの手を叩き合っただけで済んだかな?
オレはそんなことを考えながらその場に立っていた。

優夏「ちょっと誠!大丈夫?」

沙紀「誠くん!大丈夫?」

優夏と沙紀がオレの左右の頬に手を当てる・・・。
オレはたまらない恥ずかしさに後ろ走りをしてその場を離れた。
誠「ああ、大丈夫だからそんなに心配しないでくれ」

優夏「本当に大丈夫なの、誠?」

沙紀「両頬がものすごく腫れているわよ・・・?」

誠「ああ、大丈夫だ。それよりもこの件については3人とももう少し大人になろう
  ということで終わりにしないか?」

優夏「そうだね。ごめんね誠、沙紀」

沙紀「そうよね。誠くん、優夏・・・ごめんなさい」

オレはその言葉を聞くと気分が晴れやかになった。
それからオレたちは林道を上りロッジへと帰っていった。
予定では林道を下った後、海沿いの道も歩こうと思っていたのだが
さっきの一件で思いのほか時間を費やしてしまったからだ・・・。

誠「なあ、沙紀?」

沙紀「何かしら、誠くん」

オレの左側を歩いている沙紀がオレのほうを向いて返事をしてきた。

誠「さっきの件についてだけど・・・おまえ、どのあたりから見ていた?」

沙紀「誠くんがこけたところから。その後は誠くんたちの後をついていったわ」

ガーン・・・オレはたまらなく恥ずかしくなってきた。
オレがこけたところを沙紀にも見られていたからだ・・・。
オレは恥ずかしさのあまり顔を思わず沙紀からそらした。
しかし右側には優夏の顔があってオレはまたしても顔をそらして正面を見た。
そのオレの行動に優夏と沙紀は小さな声で笑っていた・・・。

優夏「誠。そんなこともう気にしなくていいよ」

沙紀「そうよ誠くん。おかしかったけどそんなに気にするほどのことじゃないわよ」

優夏と沙紀はオレに慰めの言葉をかけてくれる。
嬉しいが慰められれば慰められるほどオレには恥ずかしさがこみ上げてくる。

誠「なあ、このことは3人だけの秘密にしてくれないか?」

沙紀「クスッ、誠くんやっぱり子供ね」

沙紀は笑いながらオレを見た。
オレは思わずうつむいてしまった。

沙紀「分かったわ。誠くんがそこまで言うのなら口に出さないわ」

優夏「私も約束するよ、誠♪」

誠「ありがとう」

オレたちは笑いながらロッジへと帰っていった。                           
リビングに入ると億彦と遙が身支度を整えて待機していた。
相変わらず億彦は遙に話し掛けている。
無論、遙は黙っていたままだが・・・。

優夏「おはよう。億彦くん、遙」

億彦「おはよう優夏ちゃん、沙紀ちゃん」

オレには挨拶なしか・・・。
まあ、ある程度は予想していたことだが・・・。

優夏「それじゃ、そろそろルナビーチに行きましょう」

優夏のその一言に億彦と遙は立ち上がりロッジを後にした。
林道を下り、海沿いの道を歩いていく・・・。
先頭には優夏と沙紀が何の話題かは知らないが盛り上がっていた。
その後ろに億彦と遙がいた。オレは一番後ろにいて海を見ながら歩いていた。
やがてルナビーチに到着した。

いづみ「みんな、おはよう」

優夏「おはようございます。準備はできましたか?」

いづみ「う〜ん、それがね・・・」

いづみさんは少しうつむいていた。

いづみ「くるみ・・・頭が痛いらしいのよ」

その言葉と同時にくるみがルナビーチの入口から出てきた。

優夏「本当なの?くるみちゃん」

くるみ「うん・・・今朝から頭が痛いの・・・」

くるみの表情は確かにうつろだった。相当痛いのだろう・・・。

沙紀「その様子じゃプールは無理ね」

くるみ「うん・・・ごめんなさい」

沙紀「別に謝らなくていいけど」

いづみ「そういうわけだからプールにはみんなで行ってきて。
    私はくるみのそばにいるから・・・」

くるみ「いいよ、お姉ちゃんも行っていいよ。くるみはひとりでも大丈夫だから」

いづみ「でも・・・」

いづみさんは少し混乱している様子だった。

いづみ「本当に行ってもいいの?」

くるみ「うん・・・」

いづみ「そう、分かったわ。それじゃ私も行くわね」

いづみさんはそう言うと中に入ってバックを取り出してきた。

いづみ「それじゃ、行きましょうか」

オレたちはその言葉を聞くとルナビーチを後にした。
その後ろではくるみが大きく手を振っていた・・・。

それからしばらくした後、オレたちはプールへと到着した。                
オレは無性に泳ぎたい気分になってプールに飛び込むとすごい勢いで泳ぎ始めた。
そして反対側の壁に手を着けるとオレは水面から顔を上げた。

優夏「誠」

オレの真上のプールサイトには優夏がいた。

優夏「はい」

優夏はそう言ってオレに手を差し伸べてくれた。

誠「サンキュー」

オレはその手を取ろうとしたときふと考えてしまった。
優夏の手を取ってオレを引き上げようとするとき
優夏がこの手を離すのではないかということを・・・。
オレは万が一のことを考え優夏の手を取った後
もう片方の手をプールサイトの上に置いた。
案の定、優夏は握っていたオレの手を離した。
しかしオレはプールサイトの上に置いていたもう片方の手で体を支えた後
優夏の手を再び握りそのまま水中へと引き降ろした。

―バシャーン!― 水しぶきをあげて優夏はプールへと落ちていった。

優夏「ちょっど、まぼぉど〜」

こんな変な声はおそらく優夏の鼻に水が入ったからであろう。

誠「自業自得だ。おまえだって、オレをプールに落とそうとしていただろう」

優夏「なんでぞれがわがっばのよぉ!」

もはやオレには優夏がなにを言っているのか分からない。
優夏は流れていた鼻水をきれいに処理するとプールからあがってきた。
やがてオレのところへやってくると、ツンとオレから顔を背けた。

誠「もしかして・・・怒ったか?」

優夏「怒っていない!」
優夏は怒っている顔で怒っていないと言っていた。
オレは 怒っているじゃないか と言おうと思ったが逆効果だと思い

誠「何か飲み物でもおごろうか?」

優夏「え、ビール?」

優夏はオレに笑顔を向けた。
どうやら本当に怒っていなかったようだな。オレはそう思っていた。

誠「こんな昼間からビールか?」

優夏「別にいいじゃない〜♪」

誠「そうだな」

オレはそう言うと売店のほうへ向かっていった。

優夏「あそこのデッキチェアで待っているからね〜」

優夏は後ろからオレにそう言うとデッキチェアに向かって行った。
そしてビールを買ってくると優夏に渡した。

優夏「ありがとう」

優夏はお礼を言うとすぐにビールを飲み干した。

優夏「プハー!やっぱりこれよね〜」

優夏は満足そうに言っていた。

優夏「あれ、誠はビールじゃないの?」

誠「ああ。オレは昼間から酒を飲まない主義でね」

優夏「うわ〜、似合わないセリフ・・・」

誠「やかましい!」

オレはそう言うと手にしていたジンジャーエールを口にした。

億彦「シャラ〜ン!」

億彦がいきなりポーズを付けてやってきた。
オレは思わず口にしたジンジャーエールを吹き出しそうになった。

億彦「お話中失礼」
億彦はそう言うとちょうど西側を指差して

億彦「そろそろ昼食にしようと思ってね。あそこにちゃんと準備しておいたから」

億彦は髪をかきあげながらそう言うと

億彦「チャオ」

そう言って立ち去っていった・・・。 準備はいいがもっと普通に登場できないのか・・・などと考えつつ
オレと優夏は億彦の指差したところへ向かって行った。
そこにはサンドイッチなどたくさんのおかず類が置いてあった。

いづみ「あら。早かったのね」

後ろからいづみさんが声をかけてきた。

誠「いづみさん、いつの間にこれだけの食事を・・・」

いづみ「プールについた後やっぱりくるみが心配で一度ルナビーチに戻ったの。
    そのついでに昼食を作ってきちゃったの。遠慮なく、食べてちょうだいね」

優夏「は〜い」

優夏はそう言うとイスに腰かけ食べ始めた。

いづみ「誠くんもどうぞ」

誠「はい、いただきます」

オレはそう言って食べ始めた。そしてしばらくすると・・・

沙紀「あら、もう食べていたの?」

沙紀が両手にたくさんのコップを抱えてやって来た。

誠「沙紀、それは・・・?」

沙紀「みんなに私からのおごりで飲み物を買ってきたのよ」

優夏「ビールはあるの?」

沙紀「ちゃんとビールもあるわよ!」

優夏「よかったぁ〜。じゃあ、私はビールをもらうね。ありがとう沙紀」

そう言うと優夏はビールの入ったコップを取ってそれを飲み始めた。

沙紀「誠くんもどうぞ」

沙紀はそう言ってビールの入ったコップをオレに差し出した。

誠「悪いけど、ビールじゃなくてジュースをもらえないか?」

沙紀「ええ、いいけど・・・意外ね」

誠「何が?」 沙紀「私、てっきり誠くんもビールを飲むかと思っていたの」

優夏「オレは昼間から酒は飲まない主義だって言っているのよ」

沙紀「へ〜・・・ますます意外ねぇ」

誠「そんなことはどうでもいいだろう・・・」

オレは自分で言ったことを後悔していた。
それほどまでに意外か?などと思っていると

沙紀「はい誠くん。ジュースはジンジャーエールしかないけど」

誠「ああ、おごってもらうものに文句は言わないし、
ジンジャーエールは好きだから別に構わないぞ。ありがとうな沙紀」
オレはそう言うとジンジャーエールを再び口にした。
沙紀は嬉しそうな顔をしてオレたちを見ていた。
やがて億彦と遙も到着しいづみさんも戻ってきて全員がそろった。
それぞれ沙紀のおごった飲み物にお礼を言った後 昼食を食べながらオレたちは盛り上がっていた。

誠「ごちそうさま」

いづみ「あれ、もういいの誠くん?」

誠「はい。とてもおいしかったですよ、いづみさん」

いづみ「そう言ってくれると嬉しいわ♪」

いづみさんは嬉しそうに笑っていた。
オレはこの場を立ち去るとデッキチェアに寝そべって空を見ていた。
雲ひとつない青空・・・平和だよなぁ・・・オレはそんなことを考えていた。
ふと、優夏のほうに目を向ける。
あんなに笑っている優夏が本当に4月6日に死ぬのだろうか?
オレにはそのことが信じられなかった。いや、起きてほしくないのだ。
オレは目を閉じて考えていた・・・どうしたら防ぐことができるだろう?
しかし考えれば考えるほどオレは眠くなってくる・・・。

沙紀「誠くん」

オレはその言葉を聞くとガバッと起き上がった。その様子を見た沙紀は・・・

沙紀「ごめんなさい。起こしてしまったかしら?」

誠「いや、そんなことはないぞ」

沙紀「よかった・・・。ねえ、誠くん。
優夏と私が競泳するから審判をしてくれないかしら?」

誠「競泳・・・?」

沙紀「私と優夏が中学時代の話をしていてね競泳の決着がついてないという
   話題になったのよ。そこで決着をつけようとここで泳ぐことになったけど・・・。
   審判がいないと分からないから」

誠「ああ、別に構わないぞ」

オレはそう言うと沙紀の後をついていった。
プールには優夏が待っていた。
優夏「沙紀。今日こそ中学時代の決着をつけるわよ」

沙紀「のぞむところよ優夏。あの日の屈辱を今こそ果たしてあげるわ」

あの日の屈辱?オレにはわけが分からなかったがとにかくゴール地点へと歩いていった。
誠「お〜い、準備はできたか〜?!」

オレがそう言うと優夏と沙紀はともに両手を挙げた。
どうやら準備ができているようだ。
オレはスタートの合図の手を上げた。
そしてその手を振り下ろした瞬間!
―バシャーン!― 優夏と沙紀はものすごい勢いで泳ぎ始めた。
結構速いな・・・オレはそんなことを考えていると徐々に2人が近づいてくる。
残り5メートル!沙紀のほうが若干速いか?そしてそのまま沙紀がゴールして
一秒も経たないうちに優夏もゴールした。

誠「沙紀の勝ちだ」

オレは2人の頭上から声をかけた。

沙紀「当然の結果よね」

優夏「も〜う、悔しい〜!!!」

優夏はプールの水をバシャバシャ叩いていた。
そしてオレは2人に手を差し伸べると一気に引き上げた。

優夏「沙紀。これで勝ったとは思わないでよ。中学時代から総計して10勝9敗だからね!」

沙紀「ええ、もちろん分かっているわよ。後1勝くらい簡単に取り返すわよ」

優夏はそう言ってどこかへと行ってしまった。
オレは沙紀とプールサイドを歩いていると・・・

沙紀「さっきは審判をありがとう、誠くん」

誠「別にお礼を言われるようなたいしたことじゃないけどな・・・」

沙紀「誠くん。お礼の言葉は素直に受け取るものよ」

誠「はい・・・」

オレがそう言うと沙紀はクスクスと笑っていた。

誠「ところで沙紀?あの日の屈辱って一体何のことだ?」

沙紀「中学一年のときにね、私を初めて水泳で負かしたのが優夏だったのよ・・・。
   それ以来、私は優夏に勝つために必死になって優夏に初めて勝ったのは
   中学一年の夏休みだったの。そしてその総計が私の8勝10敗だったの」

誠「だから今日お前が勝って総計が9勝10敗になったのか」

沙紀「そう。でも、この調子なら優夏を追い抜くことは可能よね」

誠「そうだな。優夏が今のままだったらの話だけど。あいつ執念深そうだから
  きっとまた速くなるぞ?」

沙紀「そうなってもらわないと張り合いがないものよ誠くん」

誠「そうだな」
沙紀「それじゃ誠くん。私、もう行くわね?」

誠「ああ」

沙紀はそう言って再びプールの中へ飛び込んでいった。

誠「さて、これからどうするかな?」

オレはそう呟くと再びプールサイドを歩き始める。
オレの目の前にはデッキチェアが目に入った。

誠「すこし休むか・・・」

オレはデッキチェアに横になって瞳を閉じた。                      
春の日差しと海から来る潮風が心地よい・・・いつの間にかオレは眠ってしまった。
それからどれくらいの時間が経っただろう?
急に周りが騒がしくなってオレの意識は徐々に目覚めてきた。
目の前から走ってくるのは・・・億彦か?オレはぼんやりと見ていた。

億彦「石原〜!!!優夏ちゃんが!優夏ちゃんが大変だ!!!」

億彦はオレの両肩をつかみながらオレを揺さぶっていた。

誠「優夏がどうかしたのか!」

オレは億彦のただならぬ様子に緊張感を覚え、次の言葉を待っていた。
まさか・・・溺れたのか?オレはそんなことを考えていると・・・。

億彦「優夏ちゃんが酔いつぶれた」

プツン・・・緊張の糸が切れてしまった。

誠「そんなこと、別に大変なことじゃないじゃないか!」

億彦「いいや大変なことだね!」

億彦は断言したようにオレに言った。

億彦「とにかく一緒に来てくれ!」

億彦はそう言った瞬間、オレの手を取り引っ張っていった。
やがて億彦に連れられた場所に来るとオレは呆然と立ち尽くしていた・・・。
優夏の姿があまりにも・・・だらしなかったからだ。

億彦「優夏ちゃん。君が希望したとおり石原を連れてきたよ」

億彦はそう言うとオレを優夏の前に押し出した。

億彦「それじゃ、後は頼むよ石原」

そう言うと億彦は遙の手を取り向こうのほうへと走り去ってしまった。
あいつ・・・優夏に絡まれるのが嫌でオレを連れてきたな、オレは溜息をついた。

優夏「こぅらぁ〜誠ぉ!!!」

いきなりの優夏の呼び声にオレは思わずドキドキとしてきた。
あの億彦が手を焼いてしまうくらいだからそうとう優夏の酒癖はひどいものなのだろう。

誠「なんだい、優夏?」

オレは優しい言葉で優夏に返事をした。

優夏「こぅこに座れ〜〜〜!」

オレは優夏に言われたとおり優夏の正面に座った。
オレが座ると優夏は自分の持っていたコップにビールを注ぎなおし
オレの目の前に差し出した。

優夏「これをぉ飲みなさぁい!」

優夏はドン!とテーブルを叩きつけながらオレにそう言った。

誠「あのな、優夏。オレは昼間から酒は飲まない主義で・・・」

優夏「何ですってぇ〜!わぁたしぃのすぁけがのめぬぁいのくぁ!!」

優夏は突然立ち上がるとそのままプールのほうへ向かって行った。
そうとう酒癖が悪いな・・・オレはそう考えていた。
ん?優夏はプールのほうへ向かっていったよな・・・?
と、いうことは泳ぐつもりなのだろうか?
まったく・・・酔っているのに気楽だよな・・・。オレはそう考えていた。
そして手にしたジンジャーエールを口にしたその瞬間、一筋の閃光がオレの中を走った!

―ドボーン!― 優夏がプールのなかに飛び込んだ。
いや・・・あれは飛び込んだというよりも落下したように見えたが・・・。
オレはなんだか不安になってプールのほうへと歩み寄る・・・。
そこには優夏が浮いていた・・・。

誠「優夏!!」

オレはそう叫ぶとプールに飛び込んで優夏を助けた。
そして、そのまま引き上げても優夏は何の反応も示さなかった・・・。

ハッ!オレは持っていたジンジャーエールをテーブルの上に置くと、ふと考えた。
いまのは何だったのだろう?夢か・・・?
いや、夢にしては現実と一致しすぎている・・・現実と一致!!!
オレはそう思った瞬間、優夏を探した。優夏はもう少しでプールに到着する。

誠「待て、優夏!プールには行くな!!」

オレはそう言った瞬間、イスから立ち上がり優夏のほうへと駆け出していった。
しかし優夏はオレが夢で見たとおりプールへと飛び込んでしまった。
オレは無我夢中で走りプールへと飛び込んでいった。
それまで泳いでいた優夏は案の定、プールの上に浮かんでいた。
オレは優夏を引き上げるとすぐに優夏の頬を叩いてみた。

誠「優夏!」

―パシッパシッ― しかし、優夏は何の反応も示さない・・・。

誠「おい優夏!しっかりしろ!!」

―パンッパンッ― オレはさっきよりも強く叩いてみた。
それでも優夏は無反応のままだった・・・。
いづみ「優夏ちゃん・・・溺れちゃったのかしら?」

沙紀「でも、誠くんはすぐに優夏を助けたから溺れたことはないと思いますけど・・・」

いづみ「そうよねぇ・・・」

などとオレの後をついてきた沙紀といづみさんは言っていた。
オレはその言葉を尻目に必死に優夏の意識を取り戻そうとしていた。
すると・・・優夏のまぶたがかすかに動いたのが見えた。
しかし、その大きな瞳が見開かれることはなかった・・・。
そして、その細くてしなやかな首が傾くと、優夏はまったく動かなくなった・・・。

誠「おい、優夏!しっかりしろ優夏!!」

オレは優夏を激しく揺らす。その身体はとても冷たかった・・・。

沙紀「ちょっと優夏!本当にしっかりしなさいよ!!」

今度は沙紀も加わって優夏の意識を取り戻そうとしている。
しかし、優夏は反応を示す兆しが一向に現れない・・・。

沙紀「誠くん!私が心臓マッサージをするから人工呼吸をお願い!!」

誠「ああ」

オレはこのまま何もしないでいるよりかはそうしたほうがいいと思い
沙紀の指示に従って優夏の気道を確保した。

誠「ん?」

オレは優夏の首筋を触った時、トクトクと脈を打っているのに気付いた。
まさか・・・!!!

誠「沙紀、ちょっと待ってくれ!」

沙紀「え!」

オレは優夏の口に耳を当てる・・・。

優夏「スー・・・スー・・・・スー・・・」

オレは優夏の寝息を聞いた瞬間、ガクッと力が抜けてしまい
そのまま後ろに倒れそうになった。

いづみ「誠くん!」

いづみさんがオレを支えてくれた。

沙紀「どうしたの、誠くん?!」

誠「沙紀・・・心臓マッサージも人工呼吸も必要ないよ・・・。  
  手の施しようがないからな・・・」

沙紀「え?!まさか、優夏、本当に・・・」

いづみ「そうなの、誠くん?!」

沙紀といづみさんはオレにそう言うと優夏のほうを向いていた。

誠「ああ・・・本当に・・・眠っているだけだから手の施しようがない・・・」
沙紀「え?!」

いづみ「眠っているだけ・・・?」

オレは静かにうなずくと沙紀といづみさんはそれぞれ優夏の口に耳を当ててみた・・・。

いづみ「本当に眠っているだけのようね」

沙紀「まったく!人騒がせもいいところだわ!!」
沙紀といづみさんも力が抜けたようにその場に座り込んだ。
本当に人騒がせな奴だ・・・オレはそう思いながらも心のどこかでは嬉しかった。
優夏を守ることができたからだ・・・オレはその思いで胸が一杯だった。

やがてオレたちはプールから帰ることになりそれぞれ更衣をすませ、プールを後にした。  
優夏は相変わらず眠ったままでオレは優夏を背負って歩いている・・・。
ふつうだったら女の子を背負うというのは嬉しいのかもしれないが、今の優夏は酒臭い・・・。
おまけに距離が増えるにつれてオレは身体のあちこちが痛くなってきた。
しかし背中に当たるふたつの柔らかい膨らみは嬉しいものだった。
オレは背中に熱を覚えながらも必死に優夏を背負って歩いていた・・・。
やがてルナビーチが見えてくると、いづみさんはオレ達に別れを告げ、帰っていった。
先頭には億彦と遙が相変わらず億彦の一方通行の話をしていた。
沙紀はオレと優夏の近くにいてたまにおれのほうを見ながら歩いていた。

沙紀「誠くん。今日はお疲れ様」

誠「別にお疲れ様って言われるほどのことでもないけどな・・・」

オレは苦し紛れにそう言った。本当はいろんな意味で疲れているのだが・・・。
オレは自分自身の言った言葉に少し後悔していた。

沙紀「誠くん、どうして素直に応えられないの?」

誠「え・・・?」」

沙紀「誠くん、今も優夏を背負ってここまで歩いて疲れているでしょう?」

誠「それは・・・」

オレはなんと答えていいのか分からなかった。
どうしてオレは素直に疲れたと言えなかったのだろうか?
オレは必死に自問自答を繰り返している・・・。

沙紀「ごめんなさい。少し意地悪だったかしら?」

誠「え?」

沙紀の思いもよらない言葉にオレは混乱してしまった。
沙紀「たぶん誠くんの性格的なものなのよね。それはそれでいいと思うけど
   素直に応えるのも大切なことよ?」

誠「ああ、そうだな」

オレは本当にそのとおりだと思いながら返事をした。

沙紀「誠くん。今日はお疲れ様」

誠「ああ、本当に疲れたよ」

オレはフーッと溜息をつきながら応えた。

沙紀「フフッ・・・素直でよろしい」

沙紀は笑いながらオレの横を歩いていた。
素直に応えることも大切・・・か。オレは沙紀に言われた言葉を考えながら歩いていた。

沙紀「それでは皆さん、ごきげんよう」

いつの間にかロッジと沙紀の別荘への分かれ道に到着していた。

億彦「さようなら沙紀ちゃん」

遙「さようなら・・・」

誠「じゃあな、沙紀」

オレたちはそれぞれ沙紀に挨拶を告げると再び歩き出した。
やがてロッジ前の林道にさしかかるとオレも後少しだなどと思いつつ
足取りが軽やかになった。しかし・・・上り坂はきついよな・・・。
オレはそんなことを考えながら歩いていた。やがてロッジに到着すると

誠「フ〜ッ・・・」
オレは優夏をリビングのソファーに寝かせると別のソファーに深々と座った。
しばらくそうしていると・・・

遙「誠。優夏のフトンを敷いたから寝かせてあげて・・・」

遙がオレにそう言った。

誠「ああ、そうするよ」

オレのその言葉を聞くと遙は自分の部屋に戻ろうとした。
オレは慌てて遙を呼び止めた。

誠「遙!」
返事こそしないが遙はオレのほうに向き直った。
誠「ありがとう」

遙はコクンとうなずくと部屋に入っていった。
オレは優夏を抱えると優夏の部屋へと向かって行った。
優夏の部屋の扉は開けられていた。

誠「結構、気が利くな・・・」

オレはそう呟きつつ優夏の部屋に入ると優夏をフトンの上に寝かせた。
まったく・・・人騒がせな奴だよな。
オレはそう思いながら部屋を後にして自分の部屋へと戻った。
オレはベッドに寝転がると疲れのせいか、そのまますぐに眠ってしまった・・・     


4月3日へつづく






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