夢のかたち
作:ふうらいまつ



//●『ある』を選んだ場合************************************************************


過去の記憶に思いを巡らす。
レゥとリースを比較したり、リースに無茶な注文をしてみたり。
アニキの言うように、オレはリースのレプリス的なところを毛嫌いして、傷つけるようなことをしていたかもしれない。

恭平「おまえはリースに何を求めている? レゥと同じものを求めているんじゃないのか?」

//背景の明るさを落とす。恭介、思考中。
アニキの言葉が重くのしかかる。
レゥと同じように人間らしく振る舞うこと。それがリース本人のためになる……そんな勝手な思い込み。
アニキの言う通り、レゥはレゥであり、リースはリースだ。
リースを自分の望む形にしようとすること自体が、傲慢なことだったのかもしれない。
オレは結局、リースをレプリスとしてしか見ていなかったということか……

//背景:食堂------------------------------------------------------------------------
//恭介、思案中につき、背景の明るさを落とす
さっきからずっと、思考が堂々巡りしている。
レゥの体調のこと。リースのマスター資格剥奪のこと。
考えては自己嫌悪し、また考えては自己嫌悪。
オレは一体何をしているんだろう……
//背景の明るさを通常に戻す

亮「どうしたんだ、恭介。何も食べずに考えこんだりして」
恭介「……亮か」
亮「お。もしかして恋煩いか? とうとう恭介くんも悩めるお年頃になったか」
恭介「……なあ、亮。レゥとリースのことをどう思う?」
亮「どうって……レゥちゃんは相変わらずカワイイし、リースちゃんは良い意味でお嬢様風味なところが、ポイント高いと思うぞ」
亮「……って、まさか恭介、あの二人に惚れて悩んでるのか?」
恭介「そんなんじゃないよ。二人は今のままで幸せなのかなと思ってさ」
亮「……ははーん、読めてきたぞ。おまえ、リースちゃんたちがアメリカに帰るとか聞かされて、寂しいんだろう?」
恭介「……なんだよ、それ」
亮「さっき、おまえのアニキとリースちゃんが話してるのを聞いたんだよ。もうじき帰るそうじゃないか」
恭介「……そうか。もう、そんな時期なんだな」
亮「ここのところ騒がしかったから、寂しくなるのは間違い無いけどな。まあ、元の生活に戻るだけさ」
恭介「……ごちそうさま」

簡単に食事を終えて席を立つ。

亮「恭介。あまり考えすぎるなよ……なるようになる」
恭介「……ああ、わかってる」


//背景:自室(夜)---------------------------------------------------------------
アニキはまだ部屋に戻っていないようだ。
海外に帰る前にリースと話をしておきたいけど、オレはもうリースのマスターではない。
リースは極力オレの相手をしないよう命令されているはずだし、今、部屋に行っても、どうすることもできないだろう。
横になって、天井を見上げる。
レゥのこと。リースのこと。
レゥを放っておいたこと。リースを傷つけたこと。
オレは彼女達に、どう接していけばよいのだろう。
思考がぐるぐると同じ所を回っている。
答えはみつからない。
それでも思考は回り続ける。
ぐるぐる……ぐるぐると……
意識がまどろんでいく……
//ブラックアウト。夢・第4夜へ進む

//-------------------------夢・第4夜----------------------------------
//文章:全画面表示
//背景:黒

――何も無い空間
――空っぽの世界

わたしは今夜もここに来ている。
ここには何も無いのに。
夢を見る必要など無いのに。

わたしは人間とは違う。
集積された記憶のメンテナンスは、常に行っている。
今はエネルギー効率のため、休止しているに過ぎない。

夢は自分の願望を投影し、精神の安定を計るためのもの。
わたしが何も望んでいないから、ここには何も無い。

高い能力は、すでに与えられている。
必要な知識も、すぐに手に入る。
欲しいものは何もない。

わたしはマスターのために存在している。
マスターに喜んで貰えると、わたしも嬉しい。
マスターが悲しんでいると、わたしも悲しい。
わたしにとっては、それが全て。
働くことも苦にならない。

では何故、こんな夢を見ているのだろう。
本当は分かっているのかもしれない。
答えなど最初から必要ないのかもしれない。

//改ページ。次の文を画面中央に表示。
わたしは―――あなたに――――
//文章の全画面表示を終了


//背景:自室(深夜、雨)-------------------------------------------------------------
恭介「リース!!」
一気に体を起こす。
間違いない、あれはリースの夢だ。
常識では考えられないことだけど、今ならはっきりと理解できる。

今すぐに、リースと会わなければならない。
部屋から飛び出して、リースの部屋へと向かう。

//背景:寮の廊下(深夜)

ドンドンドン――周囲にかまわず、部屋の扉を叩く。

恭介「リース! リース!」

たえ「んー、恭介? 何なのよ、騒々しい」
恭介「たえさん、リースは?」
たえ「はぁ? リースちゃんがいくら可愛いからって、こんな夜更けに来ることないでしょうが」
恭介「いいから早く!」
たえ「……ん、リースちゃんなら、そこに寝て…………あれ?」
恭介「部屋に居ないんですね。窓は?」
たえ「開けっぱなし……雨が降ってるから、閉めたはずなのに」
恭介「少し出かけてきます」
たえ「ちょっと恭介! どこにいくのよ! 説明しなさいよ!」

背後の声を無視して、そのまま走り出す。


//背景:寮の前(夜、雨)を挟んで
//背景:森の小道(夜、雨)へ切り替え

どしゃぶりの雨の中、息を切らしながら、ひたすら走る。
体温で雨が蒸発していく。

恭介「……居ない」

オレがもっと早く気付いていれば良かったんだ。
何故だかわからないけど、オレはリースと同じ夢をみていた。それは間違い無い。
もっと早くリースの異常に気付いていれば、こんなことにはならなかったはずだ。

//背景:適当な場所に切り替え(夜、雨)

恭介「……ここにも居ない」

さらに雨が激しくなる。
息があがって、体が前のめりになる。
視界が不自然に歪んでいる。

恭介「ちくしょう、どこに行ったんだ」

オレとリースでは運動能力に差がありすぎる。
闇雲に追いかけたのでは、絶対に追いつけない。

恭介「どこだ。どこに居るんだ。どこに行けばいい」

さっきの夢みたいに、もう一度リースの意識に触れることができたら……

//背景を一瞬切り替える。効果音あり
一瞬、脳裏を何かがよぎる。
いくつものイメージが奔流となって、頭の中を駆け巡る。
//背景を次々と切りかえる。(ゲームセンターと川原は出したい)
やがて映像は収束し、ある一点を指し示す。
//背景:瞬間的に夜の公園

……間違いない。
リースはあの場所に向かっている。


//背景:公園(夜、雨)-------------------------------------------------------
//文章全画面表示
誰も居ない公園。
ぬれた木の幹に体をあずける。
背中が冷たくて心地よい。
激しい雨が地面を叩く。
雨がやむ気配はない。
吹き上がるしぶきの中、じっと遠くをみつめる。
彼女が来るべき方向を。

そして、彼女は――――来た。

//全画面表示を終了
//以下しばらく、リースは無表情に徹する。
雨にうたれながら、リースがゆっくりと近づいてくる。

リース「……恭介さん。やっぱり来ていたのですね」
恭介「……ああ。必ずここに来ると思ったから」

息も切らさず表情ひとつ変えないのは、彼女がレプリスだからか。
そのまま何も言わず、ふたりで公園を歩いていく。

リース「雨って、気持ちいいですね」

初めて雨に触れたように、彼女はつぶやく。
ちらりと彼女の顔を覗き見るが、そこから感情は読み取れない。

リース「……恭介さんは、私の夢をみたのでしょう?」

彼女の夢――
――何もない空間で、あるはずのないものを探し求める――そんな夢。
オレの何気ない言葉や態度が、彼女を苦しめていたのだろう。
自分の愚かさがつくづく嫌になる。

リース「では、何もかも知っているのですね……」
リース「……恭介さん」

リースがオレの目を真っ直ぐにとらえる。

リース「人間らしくないレプリスは、嫌いですか?」

//選択肢(二択)
//●今のままでいい
//●それでも変わるべき



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